EE 喉頭蓋エントラップメントは面白いというか、かわった障害だ。
喉頭蓋下の粘膜が喉頭蓋を包んでしまう。
袋状になっているように見えるし、切れば簡単に治りそうに思えるが、気をつけないといけない点もある。
古典的にはEEカッターと呼ばれるフックで、喉頭蓋に被さっている粘膜を切り開くことで治す。
簡単に治る症例もあるので、安易に考えられがちだ。
しかし、再発することもある。
Dr.Ducharmeによれば中央を切開すると再発率5%。
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喉頭蓋と披裂軟骨をむすぶヒダが横から喉頭蓋に被さったままになったりするので、
Laserで切るなら左の図のような切り方もできる。
この切り方だと再発率は3%弱。
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喉頭切開すれば喉頭蓋に被さっている粘膜をV字型に切除することもできる。
V字と言うより喉頭蓋に乗っかっている粘膜をできるだけ切除してしまう。という考えかもしれない。
しかし、注意しなければいけないことがある。
実はEEの外科治療の一番の問題は再発ではない。
EEを外科的に治療した後に持続的なDDSPが起きてしまうことがあることと、
喉頭蓋が萎縮している症例があること、
そして、軟口蓋を切ってしまうことなど、治しようのない問題が起こる可能性がある。
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22頭の持続的DDSPを治療した。
8頭はTieforward手術で効果があった。
10頭はTieforwardと口蓋帆切除で効果があった。
1頭はTieforwardでも改善されず引退した。
1頭はTieforwardで改善されず、1頭は口蓋帆切除で効果がなかった。
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持続的DDSPは難しい問題だ。
おそらく切除した喉頭蓋下粘膜が瘢痕収縮したり癒着して喉頭蓋を下へ貼り付けてしまうのだろう。
だから、私は中央を切開する以上の外科侵襲はできるだけ避けたいと思っている。
Dr.Ducharmeも、EEがその馬に問題を引き起こしているかよく判断して、処置しなければいけない。と強調されていた。
サラブレッド競走馬では、必ず喉の違和感が出て処置しないわけにはいかないと思うけれど・・・・・
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上の写真のようにEE状態になっている喉頭蓋の先端が尖っていないのは、粘膜に包まれて折れ曲がっているか、先端がすでに萎縮していることを示している。
EEをあまり「ああ、切れば治る」と簡単に考えないほうが良い。
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2010年に東京で講演されたDr.Greetは、laser手術は喉頭蓋に火傷をさせる危険があるので、EEカッターで切開するのが第一選択だ。と述べ、それもカヴァー付きのEEカッターを勧めておられた。
今回、Dr.DucharmeがそのShielded EE cutterを見せてくれた。
私はどうも、そのフックのカーブが気に入らない。
確かにカヴァーが付いているので安全なように思うが、馬は暴れるときは突然激しく動く、カヴァーが刃先に被さる前にどこかへひっかかっる危険がやはりあるのではないか。
そして、そのShielded EE Cutter のカーブはずいぶん大きくて、カヴァーがないといかにも危なそうなのだ。
Dr.Ducharmeに「このカーブがお好きですか?」と尋ねたら、
「私はlaserでやるので、このShielded EE Cutterはあまり使わない」との返事だった。
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さて、実際にEEを治さなければいけない馬外科医が考えていることを理解していただけたでしょうか?