2歳馬の喉の検査をしたのだが、安静時の内視鏡検査では異常がなかった。
披裂軟骨は左右対称で、開き方も良く、喉頭蓋もしっかり反り返っていた。
症状も、DDSPを疑うけれど、典型的なブルブルゲロゲロではないようだった。
それで、高速運動中の喉頭内視鏡検査をやってもらうことにした。
トレッドミルに乗せるのではなく。
那須でデモンストレーションを見せてもらったことがあるが、実際に2歳馬が大人しくつけさせるかどうか心配だった。
が、ほとんど嫌がりもしなかった。
通常の馬具と変わらないので、毎日乗っている馬なら心配いらないようだ。
スコープを鼻から入れるときだけ鼻捻子をして、セットしたら、調教コースへ(右)。
以前紹介した、運動中に喉頭を内視できるスコープは騎手が背負うタイプの物だった。
騎手が背負っていると、万が一落馬したときに、機械が壊れるだけでなく、人も馬も怪我をするかもしれない。
今回の機械はすべて馬に装着されているので、そういう心配はない。
手元にあるのは、リモコン。
スコープの先を上下左右に動かしたり、水や送気を操作できる。
現在の画像も観ることができるが、距離が離れると送信されてこないので、実際の診断は馬に積んだパソコンに録画された画像を後で観て行う。
まったく麻痺はない。
正常な馬の披裂軟骨は運動中こんなに開く(左)。
喉頭蓋が軟口蓋の下に潜り込んでしまう。
こうなると充分に吸気できず、
呼気のときは軟口蓋がさらに上へ吹き上げられて、異音がする。
そして、さらに、
声帯も虚脱している。
DDSPと複合されたこれらの異常が、この馬の高速運動時の「のど鳴り」と、呼吸の苦しさなのだろう。
単純なDDSPだけではないので、DDSPの典型的な症状や経過でもなく、音もゲロゲロ音だけではなかったのだろう。
診断はついた。
後は馬外科医の腕と経験で、必要と思われる処置をする。
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育成馬や競走馬ののど鳴りは大きな問題だ。
しかし、何度か書いてきたように安静時の喉頭内視鏡検査だけでは高速運動中に何が起こっているのか診断することはできない。
トレッドミル上で馬を高速運動させて、その間に喉頭を内視する方法が行われてきたが、トレッドミルで馬を高速運動させるには馴致が必要で、さらには肢が腫れたり、あるいは致命的な骨折事故が起きる可能性もある。
それに比べると、この馬に装着して運動中に喉頭内視画像を録画できる機械は、安全に運動中の検査ができる。
トレッドミルは屋内の置き場所が必要だし、検査するには良く慣れた3名以上の人が必要だ。
それに比べれば安価だし、人手も要らない。
競走馬・育成馬の喉を正確に診断するための必需品になるだろう。
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今日は好い天気で、さわやかだった。