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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

馬を吊り起こすロープ

2007-03-24 | 麻酔学

Dscn6257_1 改築前の診療棟を使っていた頃から、麻酔の覚醒・起立時には頭と尻尾をロープで引っ張って起立介助している。

麻酔覚醒時の事故は明らかに減ったと思っている。

P3230215 馬を引っ張るのに使っているロープは実はザイル(クライミングロープ)ではない。

ロッククライミング用のロープは、クライマーが落ちた時にびよ~んと伸びて衝撃を吸収するようになっている。

そして、あまり荷重をかけたクライミングロープは伸びてしまっているので使わないように。ということになっている。

それでは嬉しくないので、うちで使っているのは、ケービングと呼ばれる洞窟探検用のロープ。

洞窟探検では、ロープを垂らしてそれにぶら下がって洞窟へ下りて行き、そのロープを昇り返して戻ってくる。

だからケービング用のロープはクライミングロープのように伸びない。らしい。

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 P3230218

使っている金属のリングもロッククライミング用のカラビナ。P3230217

アルミ製で軽いが、2トン以上の荷重に耐えるようになっている。

ロープもカラビナもたいして高い物ではない。

お求めは北海道の山の店秀岳荘http://www.shugakuso.co.jp/でどうぞ。

代引きで通信販売もしてくれる。

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 今日は暖かかった。

飛節の関節鏡手術。

他には分娩後の子宮血管破裂の剖検馬が2頭。その他に死亡馬が2頭。


馬を吊るす道具

2007-03-23 | 麻酔学

P3230212 私のところで馬を吊るして運ぶために使っている足輪。P3220212

USAのSHANK社製。

両肢にかけて真ん中をリングで吊るすタイプが主に売られているのだが、前回書いたように私はこっちのタイプを探して買った。

肢にはめ易いし、どこかが切れても馬が落ちる確率が低いだろうし、一つが外れても大丈夫。

注意書きとして、使うたびに点検して異常があったら使うな。と書いてある。というか書いてあった。もう、擦り切れて読めない。

しかし、点検しても数百キロの荷重がかかった時に切れるかどうかは判別できないので、あまり古くならないうちに交換しなければならないだろう。

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P3230213 これは以前使っていた足輪。

車のシートベルトとスポンジとガムテープで作った。

使用感は良好だった。

その前に使っていた馬具屋で作ってもらった足輪は数年で切れてしまった。

牛や馬を吊り下げる機会がある人は廃車置場でシートベルトをもらってきて作ってみてはどうだろうか?

(そんな機会がある人が日本にどれくらいいるか知らないが・・・・・・笑)

P3230214 一つ注意。

シートベルトのようなテープは、ロープと同じ結び方をしてはいけない。

滑ってほどけてしまう。

ほどけてはいけないテープにはテープ専用の結び方がある。

知りたい人は登山家に訊ねるか、ロッククライミングの本でも読んでくれ。


すばやく膨らます・しぼませる空気枕の上で

2006-11-14 | 麻酔学

 アメリカ獣医師会雑誌、これは獣医学分野で十二分に評価の高い学術誌として認められ、合衆国のみならず世界中に多数の読者を持っているのだが、その雑誌に、Kansas州立大学からの馬の麻酔についての論文が載っている。JAVMA 229(5) 2006

Comparison of recoveries from anesthesia of horses placed on a rapidly inflating-deflating air pillow or the floor of a padded stall.

素早く膨らます・しぼませる空気枕か、パッドを張った部屋の床の上においた馬の麻酔からの覚醒の比較。

 409頭の1歳以上の馬の麻酔の覚醒をランダムに、以前から使われているパッドを張った覚醒室と、素早く膨らませたり、しぼませたりすることができる空気マットの上で行って、最初に動き出すまで、最初に体を起こそうとするまで、最初に立とうとするまで、立ち上がるまでの時間を記録した。

空気マットの上に寝かすと、体を起こしたり、立とうとするまでより長い時間寝ていた。マットをしぼませると、馬はあきらかにより少ない回数の立とうとする試みで立ち上がり、立ち上がり方はより良好だった。

空気マットもパッドを張った床も麻酔の覚醒に同様に安全だった。

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Pb070022 Pb090047 この16×14フィート(4.27×4.8m)のマットと膨らませるためのファンは、$3,500だそうだ。

このマット(pillow;枕って書いてあるけど)は、カーニバルのアトラクションとか、消防のレスキューに使われるのと同じ物。

馬は膨らませたマットの上で沈み込んで、体を起こしPb070024 にくい。そして、馬が安全に立てると判断したら、マットを素早くしぼませる。馬は体を起こすことができ、しっかりした床の上で立つことができる。

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左写真。

マットはダクトのついたファンで膨らませる(上)。

このようなジッパーが二つ付いている。開けると素早くしぼませることができる(下)。

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われわれの背骨である臨床獣医学は、机上で観念論をこねくりまわすものでも、数式だけで計算できるものでもない。

患者のそばに、ベッドサイドにいない者に、実践しない者にはその価値がわからない。

著者の一人Dr.Hodgsonの言葉。

”Recovery quality is a very important aspect of equine anesthesia.”

「覚醒の質は、馬の麻酔の非常に重要な局面である。」


おもちゃのボールで馬の麻酔覚醒を

2006-11-04 | 麻酔学

高齢馬、全身状態が悪い馬、重症の骨折馬などでは、全身麻酔からの覚醒時の起立に危険があることを、いままで何度か書いてきた。

少しでも安全に起立させるために、床の柔らかさを工夫し、麻酔に注意を払い、頭と尻尾にロープをつけて起立を介助し、必要だと思われたときには吊起帯を使っている。

ひとつの理想的な方法は、Barbaro が入院しているNew Bolton Center のようにプールに浮かべて覚醒させる方法なのだろうが、これには数千万かかる施設が必要だ。

子供を連れて行ったスーパーマーケットのゲームセンターの遊具に、柔らかいプラスチック製のボールを厚く敷き詰めて、その中で転がりまわって遊ぶものがあった。

馬を覚醒させる部屋も、そういう柔らかいボールを敷き詰めたらどうだろうかと考えたことがある。

しかし、馬がびっくりしないかとか、どのくらいの柔らかさのボールが適当で、どのくらいの量が必要で、血液、糞、尿で汚れたボールを洗うのはどうすれば良いか、片付けるのにどのくらい手間がかかるか、そして費用は? などと考えただけで、実現は難しいだろうとあきらめた。

            Pb030026               -

が、なんとやっているところがあった。

Equine Veterinary Education 2006, 8(5), p356 に写真がでている。

著者はオハイオ州立大の A.Ishihara 先生(日系人だろうか?)。

馬に体重をかけさせないように、プールに浮かべておくと、約75%の負重を減らすことができるが、骨量の減少、呼吸障害などの問題が起きるとされている。

しかし、この柔らかいプラスチックボールを使えば、それらの問題を避けることができる。そうだ。

もとは人医療でリハビリ用に考え出されたらしい。

一度経験してみたい。子供と一緒に・・・・・・


ケタミンの麻薬指定

2006-10-20 | 麻酔学

Pa190061 写真は札幌からの帰り、高速道路のサーヴィスエリアからみた夕陽。

札幌であったケタミンの麻薬指定に係わる説明会に行ってきた。

馬の麻酔薬として広く使われている塩酸ケタミンが、来年1月から麻薬扱いになるので、取り扱いに注意が必要になる。

麻薬保管庫(金庫のようなもの)に保管しなければならず、

麻薬施用者の免許を取らなければならず、

複数の麻薬施用者がいる病院・診療所では麻薬管理者を置かねばならず、

使用にあたっては受け払い簿をつけなければならず、

麻薬を使用した診療簿はその部分に朱書きの下線を引いて、

丸に麻の字のスタンプを押して保管しなければならない。

でないと、麻薬取締法違反になる。らしい。

 普通の薬屋さんは取り扱うことができなくなり、麻薬卸業者の許可を受けた業者しか扱えなくなり、郵便書留か、専用の配送車で手渡しで配達されることになる。

当然、それらのコストは薬代にかけられるので、薬の値段は高くなる。だろう。

ケタミンと同じように使える薬はなく、かわりに使えそうな薬は少なくとも今のケタミンよりはるかに高い。

 往診に回っている獣医師たちも、ケタミンを診療車に積んで置くということはできなくなり、必要なときは診療所へ戻って麻薬保管庫から持ち出すことになる。

というわけで、今までのように牧場ですぐ麻酔をかけるというわけにはいかなくなるだろう。

手術室のあるところへ「連れて行ってください」ということになるのか・・・・・

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 ケタミンは人の麻酔にも使われているが、嫌な夢を見るとされていて、良い気持ちにはならないらしい。

麻薬としては重宝されるような薬ではないはずだ。

古くからある薬だが、いままでは麻薬扱いされずにきたのに。

困ったもんだ。