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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

若い獣医さん達に言ったこと・言いたかったこと

2011-10-14 | 講習会

Dsc_0810_2 4時間しゃべり続けたのだが、熱心に馬の診療について話したので、雑談的内容は抜きにした・・・つもり。

懇親会では、回りの人とはいろいろな話ができたが、とても全員と話すことはできなかった。

若い獣医さん達には、聞いてみたいことや、話したいこともあったのだが。

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これは以前にも書いたことがあるが、

「3年目は何もかもうまく行く。7年目で何もかも嫌になる。」

たぶん、これは最初のどんどん上達できる頃の充実感とその後の伸び悩みを言い当てた言葉なのだろう。

臨床獣医師になって5-7年後にやってくるマンネリ化の時期をどう乗り越えるか、そのために最初からどう取り組んでいくかが大事なように思う。Dsc_0817

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「どんな獣医師になるかは最初の3年のうちに決まる。」

これも私が若い頃、先輩獣医師に言われた言葉だ。

確かに、5年10年経ってから一念発起して勉強を始めたり、やり方を一変させる獣医師というのまず居ないのかもしれない。

たぶん、その人の性格や生活習慣であり、あるいは最初の3年というよりすでに変えようのないものなのかもしれない。

しかし、臨床獣医師というのは一生勉強しなければならない職業だ。

「最初の3年」と思って、見よう見まねだけでなく、先輩に教わったことだけでなく、自分で勉強するスタイルを身につけてもらいたい。Dsc_0819

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自分の理想を持って、努力をしていれば、根拠のあるプライドが手に入る。

獣医さん達がそういう人の集まりなら、私たちはもっと仕事がしやすくなり、人に喜んでもらえる仕事ができるようになるはずだ。

家畜共済制度が曲がり角を過ぎて、坂を下り始めているのではないかと感じるこの頃、これからを支え、そしてこれかもNOSAI獣医師であろうとしている若い獣医さん達に、誇りを持って仕事をしてもらい、誇りを持てるような仕事をしてもらいたいと思った。Dsc_0825_3

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また夜明け前に起きて、美しい景色を見ながら帰ってきた。

朝は頚の上部の手術。

今日、午前も下顎の手術。

午後も下顎の手術。

最近、妙に顎や頚の手術が多い・・・・・   


特定動物・馬

2011-10-13 | 講習会

Dsc_0788 夜明け前に出発し、紅葉の峠を越えた。

全国あちこちから集まった新人獣医さんを相手に馬の臨床について話してきた。

「特定動物」として馬のほかにはめん羊、鹿が取り上げられている。

集まった獣医さんたちも自分の地域で馬を診る機会がある人はごく少数。

しかし、獣医学は数百年の歴史のうち、つい5-60年前までは実は馬の医学だった。

馬が最も重要な家畜だったからだ。

それが、馬の減少とともに牛・豚・羊の比率が増え、近年では犬や猫やつづいてエキゾチックアニマルの方が主流になってしまった。

その歴史と、いまだに最も高価な家畜であることから見ても、鹿と一緒にするのはどうだかなと思う。Dsc_0792

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第一日目の講習が終わって、懇親会に誘ってもらったので、急遽泊まることにした。

今年から臨床獣医師として働き出したばかりの獣医さん達は明るく元気がよく、希望に満ちていた。

若いというのは良いことだ。

まだまだわからないことや慣れないことも多く、先輩や上司にあれこれ言われることも多いのだろうが、自分がどんどん上達していることを感じられる毎日なのだろう。

診療への意欲も話の端々に感じることができた。

しかし、共済制度の問題点や獣医学との矛盾をすでに感じているようだった。

このような若い人たちができるだけ純粋に、動物と畜主のために自分の技量で役に立ちたつというシンプルな進み方ができるようであってもらいたいと願う。

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2011冬公獣協研修

2011-02-05 | 講習会

P2010887_2P2010884 恒例の公営競馬獣医師協会の研修。

朝、5時に家を出る。

-6℃。

前日からの雪が積もっていたが、道はそれほど悪くない。P2010893

ただ、空港辺りで雪がまた降り出した。

飛行機は機体と滑走路の除雪でかなり遅れて飛んだ。

厳寒期の北海道から行くので、路の状況と飛行機が飛ぶかどうかはいつも気になる。

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 途中からになってしまったが、臨床獣医師のためのコミュニケーション講座を聴かせていただく。

興味深い内容だった。

私は、治療の結果を出すことだけに集中し、コミュニケーションをおろそかにしているのだろうとあらためて気が付いた。

『「あなたの犬は癌です。手術しますか?」と間をおかず聞いてはいけません。』

 もっともだと思う。しかし・・・

「あなたの大切なこの馬は腸捻転です。」

 畜主が落ち着くまで、関係者と相談する間、待っていては刻々と予後は悪くなる。

私に求められているのは慰めでも癒しでもなく、馬が治ったという結果だと思ってきた。

自分の性格を仕事の性質のせいにするつもりはないが;涙。

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 初日は、耳下腺が腫れた馬の診察。

メラノーマが耳下腺部から喉嚢内に出っ張っているのを診断。

レーザーを用いた声嚢声帯切除のデモ。

その後、死んでしまった実習馬で開腹手術の練習。

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 2日目は下肢についての講義をしてから、下肢の関節穿刺の練習、解剖構造の把握。

午後は、蹄の症例についての講義をしてから、蹄葉炎のポニー2頭の深屈腱切断術。

P2020895_2 ローテーションを起こした慢性の蹄葉炎の馬の治療・管理は難しい。

いろいろな方法があるが、ひとつの方法だけで画期的に改善する方法はないし、どんな方法を組み合わせても完治させることはまずできない。

ただ、蹄骨のローテーションを止め、ローテーションしてしまった蹄骨の角度を変えるのは深屈腱を切ることだ。

蹄葉炎馬での深屈腱切断は「サルベージサージェリー」だと書いてある成書がある。

サルベージ=沈没船の引上げ。

沈んだ船を引上げたところでその船はもう使えないという意味だろうか・・・・・

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  この研修の価値は実際に観て、やってみることだと思う。

蕪蹄になって寝ている時間が長く、歩くのが辛い2頭の慢性蹄葉炎馬は、深屈腱の切断で蹄骨の下面で負重しやすくなった。

削蹄もしてもらって、ずいぶん歩きやすく、見やすくなった。

完治とは行かず、まだまだ手をかけなければならないが、

こういう方法もあって、手術自体は難しいものではないことを知っていただき、

寿命が延びる蹄葉炎馬が増えればいいなと思っている。

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 その他、蹄関節、球節の掌側(種子骨、第一指骨翼)の関節鏡手術の練習、ハーフリムキャストの装着もしてもらった。

いくらかでも「下肢を究める」ことになっただろうか?

(つづく)


岩手NOSAI指定獣医師講習会

2010-12-18 | 講習会

Pc130762 岩手NOSAIの「自社ビル」は、盛岡城近くの一等地にあった。

近々、新築し移転するそうだ。

ここで臨床検査もしておられるそうなので、検査室を見せてもらいたいと思ったが、時間がないのと、講演前でどたばたしていてかなわなかった。

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講演の内容は、馬の臨床についてだったのだが、馬を日常的に診療される獣医師はほとんどいないとのことで、

牛の臨床にも役立つ馬診療技術を紹介した。つもり。

・ 馬の整形外科の技術で牛の骨折を考えると・・・・・高価な黒毛和牛では内固定手術の需要もあるのではないか。

・ 馬は持続点滴を取り入れ、量、時間、内容ともに本当に病馬が必要とする輸液をしようとしている。

では、牛は? いつまでも、臨床現場ではできないからと量も時間も不足した「補液」で良いのか?

・ 馬は腸管手術を行っているが、牛でも消化管切除・吻合技術が必要な症例があるのではないか? ではその手技は?

・ 馬の新生児学は獣医学の中で特異的に進んでいる。最近は子牛の診療も注目されているが、新生子馬の治療施設で行われているような保温、酸素吸入、etc.は子牛の救命率を上昇させないだろうか?

・ 馬は局所麻酔、静脈麻酔、吸入麻酔を行っているが、牛はキシラジンだけで良いのだろうか?

などの内容を2時間半、話させていただいた。

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Pc130778_2帰りの飛行機は、行きよりさらに小型。

大きければ安心というわけではないだろうが・・・・・笑。

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Pc180745_2 降らない降らないと言っていたら、

例によってクリスマス前のドカ雪。

湿った重い雪だった。

岩手も雪が降ったそうだ。


Dr.Richardson講演会のお知らせ

2010-11-22 | 講習会

当歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。Pb220622_2

当歳馬のOCDの手術は急がない方が良いが、もうやった方が良い状態もある。

ついでに臍ヘルニア(でべそ)の手術。

続いて1歳馬の外傷。関節まで貫通していた。

午後は、2歳馬の慢性跛行。Pb220623

その後、3歳の乳母用種のクラブフット。

繁殖用として飼うにもクラブフットは治しておいた方が良い。

ひどいクラブフットの馬は、深屈腱を切っても蹄尖が浮いたりはしない。

興味深いところだ。

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Pb160630_2-

称徳館には世界から集めた馬のおもちゃも展示されていた。

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Barbaro061220 来週、木曜日12月2日午後6時から静内ウェリントンホテルで、Dr.Richardsonによる馬の骨折治療についての講演会が行われます。

Dr.Richardsonはペンシルバニア大学の大動物施設ニューボルトンセンターの教授で、

馬の整形外科の世界的な第一人者です。

「今、馬の骨折はどこまで治せるのか?」と題して、

Barbarostall 獣医師のみならず、牧場関係者、馬主の皆さんを対象に話していただきたい、と依頼してあります。

あのケンタッキーダービー馬Barbaroは残念ながら助かりませんでしたが、馬の骨折治療はかつてよりはるかに進んでおり、馬がひどい骨折をしても治せる可能性があることを見せてくれました。

当日、受付でも大丈夫です。

多くの方に来ていただいて、Dr.Richardsonの話を聴いていただきたいと思います。Barbaroxray

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