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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

馬麻酔学セミナー

2010-08-09 | 講習会

Equineanesthesia 8月28日(土)酪農学園大学動物病院で、

馬麻酔のセミナーが開かれるそうだ。

講師は、かの Equine Anesthesia の共著者 Dr. Hubbell.

講演内容は、

13:00-15:00 

Anesthesia of the horse : monitoring, recovery, and complications

15:15-17:00

Improving and extending xylazine-ketamine anesthesia in horses

となっている。

なんと参加費は無料。

申し込みも不要とのこと。

場所は、酪農大学付属動物病院 2階 大会議室。

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昨年は、札幌の麻酔外科学会で、共著者のDr.Muir の講演を聴くことができた。

やはりその分野の第一人者の話は説得力があった。

それに引き続いて今度はDr.Hubbellの話が聴けるというのはすごいことだ。

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それもこれも山下先生のおかげ。

Dr.Yamasitaも共著者のお一人だ。

馬の臨床の本に日本人の著者が居ることもすごいことだし、嬉しいことだ。

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今日は、2歳馬のTieback&Ventriculocordectomy。

当歳馬の肢軸異常の再検査。

2歳馬の尾椎のx線撮影。

レポジトリーが2頭。

夕方、繁殖雌馬の疝痛が入院。

Dsc_0229_2


Dr.Scott Morrison 実習 蹄壁剥離&感染

2010-02-06 | 講習会

Dr.Scott Morrison実習の3頭目は新供用種馬の「蟻洞」だった。P2030239

x線撮影から始める。

柱状ケラトーマの可能性も捨てきれない。とのこと。

すでに蹄冠部には自潰したらしい痕がある。

P2030241 蹄は熱感、痛みがあり、球節の上まで腫れている。

x線画像でも、わずかにガス像が見える。

感染と汚染に対する処置をして、保護のために装蹄したい。とのことだったが、

すでに種付けシーズンなので、装蹄はしないことになった。

ロッカーをつけた削蹄をして、保護のためにラッピングする。

粘着包帯とダクトテープを使いたい。とのことだったが、ダクトテープはないので、ガムテープで代用した。

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  まとめとして、クラブフットのグレードについて小講義。

P2030242早期に発見して対応していくことが大切。

しかし、牧場の意識の問題もあるし、装蹄師さんは餌や運動管理まで含めた管理へのアドバイスを求められているわけではないということもあるだろう。

            -P2030243

質問コーナーで出たのは、「跣蹄回し」と呼ぶには徹底して蹄壁の角を落としてしまうことについて。

「あれじゃ、白線で負重しちゃうんじゃないの?」

「野生馬の蹄の研究から、本来蹄は蹄底の白線に近い硬い部分でも負重するものであることがわかっている。

蹄鉄をはずしてすぐの蹄底が柔らかい馬は気をつけなければいけないが、蹄壁に近い部分にcallus(硬い部分)ができてくれば問題ない。

そのことで開きすぎた蹄を小さくじさせることができる。」

去年もScottと話して感じたのだが、ナチュラルフーフケアと呼ばれる、装蹄せず本来の蹄の機能を発揮させるという方法をずいぶん取り入れている。

馬の蹄は、蹄壁や蹄負面だけが負重をすべきものではない。

蹄鉄や蹄壁だけ見ていると本来の馬の蹄の機能を理解しそこなう、と私は思う。

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クラブフットでも、ロングツーアンダーランヒールでも、蹄の感染症でも、蹄葉炎でも、

x線撮影や、手術が必要かどうかの判断や、鎮静剤・麻酔、抗生物質、鎮痛剤が必要になるなら、それは装蹄師さんだけではできない。

獣医師と装蹄師が協力して取り組んでいかないと、「治す」ことが必要な蹄は管理できない。

だから、蹄のことを獣医師が装蹄師まかせにしている現状を変えなければいけない。と言ってるのに、どうもわかってはもらえないようだ。

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今日は寒かった。

除雪したアスファルトの上もさすがに融けなかった。

雪が融けないと跛行診断するのに困る。

疝痛の超音波検査でも、腹部の毛を刈るのが気が引ける。

毛を刈られては馬も寒くて堪らないだろう。


Dr.Scott Morrison実習 アンダーランヒール

2010-02-05 | 講習会

P2030216 実習2頭目は現役競走馬のアンダーランヒール。蹄踵の角度が寝て いるだけではなく、蹄踵部の蹄壁が巻き込んでいるのを蹄踵のコラプスとかクラッシュと呼んでいる。

やはりx線撮影から始める。

蹄底側からもよく観察する。P2030219

P2030217 蹄尖が伸び、蹄踵が寝て、おまけにつぶれていることで、蹄の荷重の中心が前へ出てしまっている。

それを、蹄支も蹄尖も削蹄することで、「バック」させる。P2030225

P2030220 蹄壁も上から削り落とす。

蹄底が薄くもなっているので、削蹄だけではできることは少ない。

それで、ロッカーをつけた蹄「鉄」を装蹄する。

アルミの蹄鉄より蹄を保護する作用が強い。

P2030229 この馬はまだ1ヶ月以上は休養するので、競走用の装蹄でなくても良い。P2030230

スタビライザーと呼ばれるプラスチックの板を蹄と鉄の間に挟む。

スタビライザーも荷重を受け、それは蹄叉にP2030227 も伝えられる。

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P2030233 後肢もロングツー・アンダーランヒールなので、削蹄してもらった。P2030234

蹄球が床に着きそうな見事なアンダーランヒール。

蹄踵を削り、蹄尖をまず剪鉗で切って、血がにじむまで削っていた。

後肢も蹄壁を前から削り落としていた。P2030235

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P2030237 右後肢も同じ。

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ジョギングシューズでもハイヒールでも、踵の方が高くなっているが、あれをつま先の方が高くされたら、歩いたり走ったりしにくいし、足を傷めるだろう。

ロングツーアンダーランヒールは望ましくない。

クラブフットの若馬の蹄角度を無理やり寝かせると腕節が反ってしまう。

同じ理屈で、ロングツーアンダーランヒールは腕節の骨折の要因になるのだろうと思う。

球節から降ろした荷重の線から最大荷重を受ける蹄踵や反回ポイントが遠くなるほど、浅屈腱には大きな力がかかり、球節は大きく沈下する。

だから、ロングツーアンダーランヒールは浅屈腱炎や球節の剥離骨折の要因になるはずだ。

休養中に、それを直してやれるかどうかは、競馬場に戻ってからの成績や故障の再発に影響するだろうと思う。

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P2050250 朝は除雪で始まったが、日中にまた降った。

除雪しておけば融けて乾く。

氷になってしまうと簡単には融けなくなってしまう。

この冬一番の寒波のようだ。

今日は、飛節のOCDの関節鏡手術。

Tieback後の再内視鏡検査。

後肢の外傷による浅屈腱断裂の検査。

夕方、1歳馬の疝痛。


Dr.Scott Morrison 講習会&実習 クラブフット

2010-02-04 | 講習会

P2030188 JBBA日本軽種馬協会が日本装蹄師会に委託した事業の一部としての、Dr.Scott Morrisonによる生産地の装蹄師対象の研修会。

2日午後は講演で、3日は実習。

1頭目の馬はクラブフット。

P2030203 血管造影をしてから、装蹄療法開始。

その前に、Scottに「この馬は手術が必要だ」と言ったら、

「そう思う」という答えだった(笑)。

クラブフットの馬は蹄壁に剥離や感染や血行障害を抱えていたり、

蹄骨の変形や損傷を起していたりするので注意が必要。P2030193

蹄尖部の蹄壁の剥離を丁寧にほじくり、消毒用の粉(ホルマリンと硫酸銅?)を詰めていた。

P2030197 エクイロックスⅡにグラスファイバーと蹄の色に合わせるための染料を混ぜたものを、さらにコブラソックスという線維に塗りたくって、蹄に重ねるように張る。P2030199

ラップで何重にも巻いたら、延し棒で蹄のエクステンションとして整形する。

そのとき、肢は前へ踏ませる。そのことで、エクステンションが反りあがってしまわない。

P2030210 固まるのを待って、フレックスラバーシューを接着する。

フレックスラバーシューは中に金属の芯が入っていて弾力がある。P2030211

それをワイヤーで閉じさせておいて接着装蹄し、しっかりしたらワイヤーを切る。

すると、狭窄蹄を開かせる作用もある。

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5-6週間この装蹄療法で様子を観て、蹄鉄をはずしてみたときの状態が大きく改善されていなければ、深屈腱の支持靭帯切断を勧める。とのこと。

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この装蹄療法をしたときの料金は?と訊ねたら、

1肢なら350$ということだった。

これだけの技術で、これだけの時間と手間をかけて、これだけの消耗品を使ってなら安いとも思うが、

そんなに払ってもらえるんだ。という感想もあったようだ。

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今日は立春。P2040246

しかし、この冬一番の冷え込みだったようだ。

日が長くなっているのは感じるんだけど・・寒い!

夜はスケートリンクの水撒き。


後期育成馬の運動器障害の講習会

2009-10-18 | 講習会

Pa180012 今日は、BTCの先生を講師に運動器疾患の講習会。

いつも緻密な診断と経過観察をしておられて感心していたので、

若手獣医師対象に、調教を開始して競馬場へ送られるまでの後期育成馬の運動器疾患について講演していただいた。

調教を始めると、放牧だけをしていた時期とは異なる障害が起きてくる。

競走馬の事故と重なる部分もあるが、しかし発生率や内容は異なっている。

仕上がった馬が集まる競馬場やトレセンとは、また異なる発症要因があるのだ。

調教されている育成馬を専門に診ておられる両先生の話はたいへん興味深く、役に立つものだった。

あまり育成馬を診る機会がない獣医師には、概論として勉強になったことだろう。

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 この10年生産は縮小してきた。しかし、この地域の馬産業そのものが極端に縮小しなかったのは育成馬・休養馬が増えてきたからだ。

生産地はいまや生産だけを行っているのでなく、育成・休養地でもある。

しかし、繁殖や放牧だけをしている当歳馬・1歳馬を診療しているのと、

調教している育成馬を診るのでは異なった知識や技術が必要とされる。

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  発症から詳細に診断を行い緻密に経過を追っておられることにも、あらためて感心させられた。

発症時にはx線検査しても骨折線が認められない骨折。

放置すれば、骨折線が伸びて開いて、1-2週間後には骨折線がx線検査で写るようになる。

しかし、症状から骨折の可能性を判断してきちんと対処すれば、ほとんど骨折線が伸びることも開くこともなく、わずかな骨反応だけで小さな亀裂骨折があったことが後で判明する。

そういう症例があったら、腕の良い、熱心な先生に診てもらったことを本当に感謝すべきだろう。