地元獣医師会主催の研修会。
骨折馬の応急処置としてのキャスト。
吊起帯のデモがテーマ。
講演会はあっても、直接診療に役立つ内容が多いかと言われると難しいし、
われわれの仕事は話を聞いたからと言ってすぐ上手にできないことも多い。
見たことがある。やったことがある。というのは、聞いたことしかないよりずっと進歩だと思う。
しかし、実習を計画するのはたいへんだ。
場所も、準備も、費用も。
人が集まらないのも困るし、集まりすぎても実習にならなくなる。
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今日の内容は、ロバートジョーンズバンデージ「風」の巻き方(右上)。
実際には肢の3倍まで太くするとか、コットンを5kgとか、伸縮性包帯を10巻とかは診療所にさえ在庫がなかったりする。
それでも何重にも綿包帯と伸縮性包帯で繰り返し巻くことが、かなり肢のサポートになることを見て知ってもらえれば役にたつと思う。
「煙突ギプス」よりずっと効果がある。
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キムジースプリントもデモしていただいた。
第一指骨や中手骨遠位の骨折、球節懸垂機構の破綻、などの事故がある育成調教施設や競馬場では備えておく価値があると思う。
約3万円するが、ハーフリムキャストも消耗品代だけで4-5000円かかるので、キムジースプリントを買っても6頭以上使えば元手を回収できるはず。
「効果なしキャスト」よりずっと効果的。
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一番重点をおきたかったのは応急処置としてのハーフリムキャスト。
中手骨と第一指骨が直線状になるようにすること。
蹄尖・蹄底をしっかり覆うこと。
下巻きを厚くしすぎないこと。
割れないように巻くこと。
ヒールブロックを付けること。
実習馬が肢が痛くない馬なので、負重したがって巻きにくかったが、要領はしっかり見て、やっていただけたかと思う。
ハーフリムキャスト5頭実施。
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フーフキャストもやってみていただいた。
(写真は実際の症例)
一番の適応は蹄骨骨折だと思う。
蹄が蒸れるのをどうするかとか、はずし方とか、蹄冠や蹄球に当たらないように上手に巻くにはとか、いろいろ課題があるかもしれないが、観て、やっておけば一つ目の壁はなくなるのではないだろうか。
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最後に一番大掛かりな吊起帯であるアンダーソンスリングのデモ。
装着と、鎮静した馬を吊るし挙げるところまで見せていただいた。
このスリングを着けておいてしっかり鎮静して立位で手術するとか、
ひどい骨折や蹄葉炎の馬をこのスリングを使って管理するとか、
どこかへ落ちた馬を救い出すとか、
いろいろな場面が想定できるのではないだろうか。
これだけ完全に馬を吊るし上げたり、
長期に装着しても大きな負担にならない方法は、今のところこの方法しかない。
「馬をヘリコプターで運ぶこともできます」
「ヘリコプターがありません」
ごもっとも。
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研修中、開腹手術の急患。