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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

面白くてちょっと為になる話し

2012-11-27 | 講習会

Pb263361 昨夜は岡田繁幸さんの講演会。

一般の方もどうぞ、と新聞広告まで入れたお知らせの効果か、

マイネル軍団総帥の話は聞き逃せないという馬関係者が多いからか、

急遽、会場を広げ、椅子を大量に追加するほどの人出だった。

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だから私は嫌われる。と何度かおっしゃっていたが、自由な発想で、システムを変えよう。と訴えかける内容は面白かった。

900頭馬を収容できる世界一美しいセリ会場を新冠の丘に創ろう。とか、

JRAの賞金や厩舎制度を変えよう。とか、

やっぱり夜間放牧しなきゃだめだ。とか、

いじめられっ子は思い切ってナイフ振り回してでも・・・・とか、

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私は自分が日頃思っていることに近いことを岡田さんが述べることに驚いた点もいくつかあった。

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Weathermap00 夜中からすごい強風が吹いた。

北海道では、台風よりオホーツク海へ抜けて発達する低気圧で荒れることの方が多い。

今日のは何年かに1度の荒れ方だった。

私の周りでもシャッターがはずれた車庫、屋根が飛んだ車庫、そして我が家の車庫も危なかった。

                                      


装蹄師さんのための筋学

2012-11-19 | 講習会

きのうは、繁殖雌馬の開腹手術をこなしてから、装蹄師さん達の勉強会に参加させてもらった。

Pb183306 A先生、4年ぶりに生産地へ登場!!

相変わらず、とても難しい話を話術で楽しくわかりやすく説明してもらって、とても刺激になった午後だった。

A先生の話を聞けるなら、と集まった人たちも多かったように思う。

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Pb183307 実際に解剖体を用いての筋肉の位置と、構造と、役割の話も複雑かつ「百聞は一見にしかず」的であった。

解剖体で確認することは私たちは機会を持てるのだが、その筋肉が馬の運動中にどういう働きをしているかを、筋電図を使って調べた研究成果を基に説明してもらう機会はこんなときでないとありえない。

それは、私のような馬医者が経験してきた、筋肉や骨や関節や神経の異常による症例で考えたことと、一致する部分と、あい反する部分があった。

それについて考え込むことは、私たちとはかなり違う歩き方、走り方、立ち方、をしている馬を理解する上でこれから先、役立ってくれる・・・・と思う。

装蹄師さん達は、もっと蹄と前肢、前肢帯、後肢の筋肉がどう構造的に機能的につながるのかわかりやすく説明してもらいたかったのではないかと思った。

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私たち馬医者は、ばっさり筋肉が切れてしまった外傷を見て、どの筋肉が切れているか表現したい。腱や靭帯に到っては、どの腱や靭帯が切れたかで予後にかかわることが多い。

骨には腱や靭帯が付着するための出っ張りがいたる所にあり、跛行の原因ではないかと疑われることが多い。その出っ張りがどの筋肉の付着部か知っておく必要がある。

馬外科医は、筋肉の分布を知っておかないと切り分けて、その奥へ到ることができない。

馬外科の基本スキルとして、肢の筋肉、腱、靭帯、の解剖を研修しておくのは意味があるだろう。

これも、公営競馬獣医師協会の研修でやるべし。

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Pb193310 オラ、氷って初めて見たゾ。

ガラスみたいなのに食べれるんダ。

ひゃっけーぞー

Pb193313

ゴロゴロ、スリスリしてみたけど、泥の匂いしか付かなかったナ。

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Pb193322 今日は、競走馬の腕節の剥離骨折の関節鏡手術。

午後も、競走馬の腕節の剥離骨折の関節鏡手術。

夕方、腰萎の当歳馬の廃用淘汰。


Keratoma 角壁腫

2012-09-13 | 講習会

P9132864 今夜は、装蹄師さんたちの勉強会。

装蹄師さん達はひとりで仕事をしている人が多いし、

写真を撮ったり、記録をつけたりする習慣がないので、なかなか研究報告や症例発表をするのは難しいのだろうと思う。

しかし、こういう勉強会をするのはたいへん良いことだ。

まぜてもらって、私も症例報告してきた。

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私が報告したのはKeratoma 角壁腫。

P9032817 蹄の内部に異常な角質からなる塊ができてしまう。

すこしずつ大きくなるようで、蹄骨を圧迫するようになると痛みがでる。

感染を併発することも多い。

治療は外科的に摘出するしかない。たぶん。

P9032822 球状と柱状にタイプ分けされるのだが、

私は球状しか診たことがない。

柱状は摘出も、その後の管理ももっと難しそうだ。

球状のKeratomaは以前は全身麻酔して摘出していたが、

今は前肢なら立位で摘出できると思っている。

後肢は・・・・・その馬ごとに考えさせてもらいます;笑。

X線撮影しないと診断できないと思う。

しかし、感染したりもするので、逆に、「ああ、砂のぼりだったんだ」で済まされてしまったりして、診断されなかったり、診断が遅れている症例があるのではないかと思う。

ヘンだと思ったらX線撮影してみることだ。

P9032829 そして、蹄底から摘出すると、蹄底になかなか埋まらない穴ができるので、ホスピタルプレート付きの装蹄をするのが望ましい。

これは装蹄師さんにやってもらうしかない。

やはり、獣医師と装蹄師の協力が必要だと思う。

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今日は、第二中手骨と第三中手骨の骨瘤の摘出というか掻爬手術。

屈腱腱鞘の細菌感染の洗浄と抗生物質注入。

午後は腰萎のX線撮影が3頭。

入院馬が2頭。

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P9032835

今日も暑くなった。

朝夕はすこし涼しくなっているのだけど。

馬もバテているようで、腱鞘炎などが散発している。


生産地シンポジウム 昼夜放牧

2012-07-12 | 講習会

恒例の生産地シンポジウム。

昔からこのシンポジウムが終わると繁殖シーズンも終わり。と思っていた。

近年は、種付けの方が早く終わり、牧草も6月中には終わるようになったけど。

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今年のテーマは昼夜放牧。P7122512

昼夜放牧で放牧時間を長くして馬の運動量を増やすことが強い馬作りのために良いのはもう疑うところはない。

あとは注意点がどこにあるか、

そして冬でも昼夜放牧は可能か、

が焦点だったようだ。

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生産頭数は減っているので、放牧地の密度の点では昼夜放牧をしやすくなっているのではないだろうか。

あとは牧柵の整備などの初期投資だろうか。

個体管理や、いかに食い込ますかなどのHow toも必要だろう。

大手の牧場に太刀打ちするためには、中小の牧場も取り組まなければならない課題だ。

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昼夜放牧についての演者はほとんどが獣医さんだった。

「臨床」のテーマではないが、科学的に客観性を持ってデータを取りながら進めて行くには獣医師の眼や知識が成果をあげるのだろう。

職場はちがっても、大きな連携ができているようで頼もしく感じた。

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P7122513昼はlaser治療器のランチョンセミナー。

出力15ワットの機械。

外科手術ではない使い方もやってみるか・・・・


骨折馬のキャスト・吊起帯の研修会

2011-12-08 | 講習会

地元獣医師会主催の研修会。

骨折馬の応急処置としてのキャスト。

吊起帯のデモがテーマ。

講演会はあっても、直接診療に役立つ内容が多いかと言われると難しいし、

われわれの仕事は話を聞いたからと言ってすぐ上手にできないことも多い。

見たことがある。やったことがある。というのは、聞いたことしかないよりずっと進歩だと思う。

しかし、実習を計画するのはたいへんだ。

場所も、準備も、費用も。

人が集まらないのも困るし、集まりすぎても実習にならなくなる。

                       -Pc081687

今日の内容は、ロバートジョーンズバンデージ「風」の巻き方(右上)。

実際には肢の3倍まで太くするとか、コットンを5kgとか、伸縮性包帯を10巻とかは診療所にさえ在庫がなかったりする。

それでも何重にも綿包帯と伸縮性包帯で繰り返し巻くことが、かなり肢のサポートになることを見て知ってもらえれば役にたつと思う。

「煙突ギプス」よりずっと効果がある。

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Pc081689キムジースプリントもデモしていただいた。

第一指骨や中手骨遠位の骨折、球節懸垂機構の破綻、などの事故がある育成調教施設や競馬場では備えておく価値があると思う。

約3万円するが、ハーフリムキャストも消耗品代だけで4-5000円かかるので、キムジースプリントを買っても6頭以上使えば元手を回収できるはず。

「効果なしキャスト」よりずっと効果的。

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Pc081690 一番重点をおきたかったのは応急処置としてのハーフリムキャスト。

中手骨と第一指骨が直線状になるようにすること。

蹄尖・蹄底をしっかり覆うこと。

下巻きを厚くしすぎないこと。

割れないように巻くこと。

ヒールブロックを付けること。

実習馬が肢が痛くない馬なので、負重したがって巻きにくかったが、要領はしっかり見て、やっていただけたかと思う。

ハーフリムキャスト5頭実施。

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P2140896 フーフキャストもやってみていただいた。

(写真は実際の症例)

一番の適応は蹄骨骨折だと思う。

蹄が蒸れるのをどうするかとか、はずし方とか、蹄冠や蹄球に当たらないように上手に巻くにはとか、いろいろ課題があるかもしれないが、観て、やっておけば一つ目の壁はなくなるのではないだろうか。

                       -Pc081692

最後に一番大掛かりな吊起帯であるアンダーソンスリングのデモ。

装着と、鎮静した馬を吊るし挙げるところまで見せていただいた。

Pc081694このスリングを着けておいてしっかり鎮静して立位で手術するとか、

ひどい骨折や蹄葉炎の馬をこのスリングを使って管理するとか、

どこかへ落ちた馬を救い出すとか、

いろいろな場面が想定できるのではないだろうか。

Pc081698 これだけ完全に馬を吊るし上げたり、

長期に装着しても大きな負担にならない方法は、今のところこの方法しかない。

「馬をヘリコプターで運ぶこともできます」

「ヘリコプターがありません」

ごもっとも。

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研修中、開腹手術の急患。