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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

上川獣医師会新技術講習会

2017-11-10 | 講習会

上川獣医師会に呼んでいただいて、講師の子牛の骨折プレート固定について講演とデモンストレーションをやってきた。

2015年の札幌での麻酔外科学会以来、子牛骨折のプレート固定はすっかり持ちネタになった;笑

去年、宮崎大学へ呼んでいただいて実習した

今年は、上川、オホーツク、十勝へ行く。

牛の臨床へ私が残していける何かひとつのこと、だと思っている。

北海道のNOSAIに身をおいてきた者としても、各地の牛の獣医さんと交流して、その地域の事情やあれこれを聞けるのはとても楽しい。

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プレート固定は特殊な手術なので、基本知識を知っておくことはとても大切。

ほとんどの皆さんがプレート固定の経験もなく、症例について本や文献で読んだこともないので、実際の症例について知ることも大切。

そして、何よりどんな風にやるのか実際を観て、できれば手技を体験してみれば、どういうものなのか実感できるはず。

と思ってやった3時間半だった。

声枯れたゼ;笑

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「できそうな気がしました」

「ぜひやってみたいです」

という感想が聞けた。

上川は若い獣医さんも多く、講習会も活気があった。そのあとの懇親会も;笑

講習会の最初に断っておいた。

「何かひとつ覚えて帰ってもらえればという内容ではありません。

この地区で1頭でも、「骨折した牛がプレート固定で治った」、という声が聞こえてこなければ、今日わたしが話すことには何の意味もありません。」

一粒の種は蒔いた。

育つ土壌だったか、水やりをしてもらえるか、日当りはどうか、楽しみに待ちたい。

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講習前のわずかな時間。

あいにくの季節に、あいにくの天候だったけど散歩した。

巨木が見られて楽しかった。

美術館の展示もなかなかだった。

 

 

 

 


AED救急蘇生講習会・馬の循環器病の診断・治療 2

2017-11-03 | 講習会

講習会、昼は北海道獣医師会の菅野先生が鹿児島大での講習会の参加報告と、ご自身の重輓馬の診療の経験を話してくださった。

出身地のNOSAIで長く産業動物獣医師として働かれ、参事まで務められ、それでもまだ臨床に愛情をもっておられるのが伝わってきた。

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午後は、部屋を移して、SHCの鈴木吏先生の馬の循環器病の診断・治療の講演。

馬の心臓の位置から、

聴診方法、心雑音から、

超音波画像診断、

心電図、

そしていろいろな症例紹介まで、

とても勉強になった。

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多くの馬臨床家は、「心奇形なんて当たったことがない」とか、

「心臓に異常があったり、止まってしまったら、もう治療対象じゃない」、と思っているかもしれない。

しかし、心臓の異常は実はわれわれが思っているよりはるかに多い。

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鎮静剤を注射する前に、聴診して不整脈や病的な心雑音がないかチェックしているだろうか?

年間、数百頭を聴診していると、年に数頭は異常に気づく。

もし、聴診で異常を判断できなかったとしても、

聴診もせずに、循環器系に大きな影響を与える薬を投与し、馬が死んだり死にかけてから「聴診もしてませんでした」というのと、

「聴診したけど気づけませんでした」というのは、違うことだ。

私は、鎮静剤を投与する前には必ず心音を聴診して、不整脈や病的な心雑音がないかチェックすべきだと思う。

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保険の加入審査でも心音の聴診は重要だ。

家畜共済でも、民間の競走馬保険でも、「心奇形でした」となると保険金は支払われない。

しかし、掛け金は返してもらえない。

そもそも加入させるべきではなかった、ということなのだろう。

加入時の健康診断で見逃したら、それは診断した獣医師の責任なのかもしれない。

そういう事例は何度も経験してきた。

心して聴診すべきだろう。

さて、第1音、第2音、さらに第3音に第4音。それぞれの意味を聴き取りながら聴診できるだろうか?

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私たちが、もっと注意深く心音を聴診すれば、馬の心疾患はもっと見つかるだろうと思う。

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今日は、1歳馬の細菌性関節炎の関節鏡手術。

当歳馬の腰痿のX線撮影。

午後は、1歳馬の鼻出血の喉嚢内視鏡検査。真菌症ではなかった。

月初めの事務処理。たまったカルテのコード記入。

今日は暖かかった。

 

 


AED救急蘇生講習会・馬の循環器病の診断・治療

2017-11-03 | 講習会

地元獣医師会の講習会。

午前中は消防組合の消防士さんを講師に迎えて、AEDの使い方と救急蘇生の実習をやってもらった。

 

よく誤解されているのだが、AEDは止まった心臓を再び動かせる機械ではない

「今、仔馬が死んだんだけどよ、あれよ、あのガシャンってやつやって生き返らせてくれよ」、と電話がかかってきたことがある。

AEDは除細動器であって、適応になるのは心室細動と無脈性心室頻脈だけ。

そのヘンの誤解は、数多い医療ドラマの責任もあると思う。

AEDは適応かどうかの判断も自動でやってくれて、音声で知らせてくれる。

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心室細動は、胸に衝撃が当たっただけでも起こることがある(心臓震盪)。

そのとき、周囲の人が胸骨圧迫を迅速に始めて、AEDを使えるかどうかに命がかかっている。

馬に蹴られて心室細動を起こすこともあるはず。

そのとき獣医さんがそばに居たので助かった、さすが、となれば喜ばしい。

反面、いつも聴診器持ち歩いているのに、おろおろするばかりだった、となっては残念だ。そして、取り返しが付かない。

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が、往診先にはそうそうAEDは近くにない。

救急車を急いで呼んで、到着までは胸骨圧迫を続けることになる。

これは・・・・やったことがないとうまくできない。たいへんさもわからない。

田舎では救急車が来るまで10分どころではないだろう。

体験した人ならわかる。

やったことがなければ有効に胸骨圧迫するのは難しいし、

胸骨圧迫を一人で10分も続けるのは無理。やってる方が倒れてしまう;笑

交代しながらやるしかないだろうね。

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心臓がいかに大事なポンプか体験していただいたところで昼食。

そのあとは・・・・(つづく)

 

 


信州行 牛の骨折内固定講習

2017-09-29 | 講習会

長野県へ牛の骨折プレート固定の講習に行って来た。

26日千歳から松本空港へ。

FDAって?知らなかったがフジドリームエアラインだそうだ。

この日の宿泊はNOSAI長野の本部がある長野市。

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翌朝は、白むのを待って善光寺参り。

東日本で一番大きなお寺だそうだ。

まったくの暗闇を進む”お戒壇めぐり”はすごかったぞ。

長野市は長野県のかなり北寄りにある。

それで、講習会の会場は、県のあちこちからのアクセスが良い安曇野で開かれるのだそうだ。

この日は、まず県の研究発表会。

6題の発表があり、どれも興味深い内容だった。

そして、講習。

この日は講義だけ。

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翌日は雨。

山が見えることを楽しみにしていたが、結局信州から日本アルプスを観ることはかなわなかった。

この日は、骨折のプレート固定の症例を紹介して、

解剖体で脛骨骨折のプレート固定のデモを見ていただいた。

プレートスクリューを入れるのは数名の方には体験していただいた。

しっかりプレート固定できれば術後はキャストをする必要もない。

成長板をまたぐ固定をしていなければ、プレートを除去する必要もない。

子牛は成長が遅れることもなく、肢が曲がることもなく、二次的な事故や病気のリスクも少ない。

そのことを実感していただけたと思う。

私にとってもたいへん勉強になった出張だった。

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松本駅に送ってもらって、

”あずさ”16号で・・・・新宿へ、そして神田へ、で浜松町へ、羽田から帰ってきた。

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北海道は冷え込んでいて驚いた。

今日は、

咳をする繁殖雌馬の検査。

2歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

1歳馬の食道梗塞?と疝痛?の急患。

 


SHCカンファレンス2017

2017-08-29 | 講習会

先週、金曜は社台ホースクリニック・カンファレンスだった。

症例から学ぼう、という主旨の症例検討会。

もう今年で10年になるそうだ。

素晴らしい機会を与えてもらってきたことに感謝する。

この10年間の発表演題の一覧をもらった。

私は、8回参加し、10回症例発表していた。

たぶん、SHCの先生以外では一番多いだろう。

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今年も2題症例報告した。

1題は、側頭骨舌骨関節症の新たな8症例の経験について。

この病気は、多くの獣医師が思っているより多いのではないか?

なんかへんな馬だと思っていても、獣医師に相談されないままの馬も居るのかもしれない。

獣医師が診せられても、この病気のことを知っていて、この病気を疑わないと、「なんでしょうね」で済まされる症例があるのかもしれない。

Tag先生は、「Hig先生が呼び寄せたんじゃないか」とおっしゃる;笑

たしかに、今まで経験した11症例のうち3例は本州から治療に来た乗馬2頭と競走馬1頭だった。

でも、それ以外は生産地で普通に飼養されていた馬だ。

私、超能力者ぢゃありませんから;笑

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もう1題は、8日齢のサラブレッド雄仔馬の中足骨骨折のLCP固定。

私は、このSHCカンファレンスで、サラブレッドの骨折内固定について何例も報告してきた。

うまく治った例も、うまくいかなかった例も。

そして、今、

販売して競走馬にしなければならないマーケットブリーダーの雄仔馬でも内固定手術の対象になるのではないか。

もちろん確実に治るとか、うまく治るという保証はない。

しかし、骨折治療がうまくいけば競走馬になることもあきらめたものではない。

 昨年のAAEPでの講演で、ペンシルヴァニア大学Richardson教授は述べている。

it (euthanasia) should not be done if you are even slightly uncertain about the "fixable" nature of the injury.

その骨折が治療できるのではないかと少しでも思うなら、すぐに安楽殺すべきではない。

 また、こうも述べている。

In today's information-rich world, it is both possible and undesirable to have an owner find out after a horse has been euthanaized that there have been other horses with the same injury successfully treated.

今日の情報にあふれた社会では、馬が安楽殺された後になってオーナーが、同じ骨折をした馬たちが治療してうまく治っていることを知る可能性もあり、まずいことになりかねない。

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きのう月曜は、

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後、Tieback&Cordectomyの再検査。

ついで、競走馬の腕節chip fracture の関節鏡手術。

夕方から、1歳馬の足根骨盤状骨折のスクリュー固定・・・と思ったが、足根骨崩壊があり、骨関節症が進行していたので手術は取りやめた。

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もう赤くなっている葉がある。

今年は、7月前半が一番暑かった。

あれが夏だったんだな・・・・・