恩師一條先生は、どういうわけか「白」い病気の研究をされていた。
牛の「白」血病に、牛馬の「白」癬菌症に、牛馬の「白」筋症に。
子馬の肺炎と下痢が大きな問題であることは以前に書いたが、肺炎の病原体の代表は「R」hodococcusであり、下痢の病原体は「R」ota virus である。
これはずっと以前に子馬の下痢症で細菌検査とロタウィルスの検査を頼まれた子馬の日齢の分布をグラフで示したもの。
黄色い棒はロタ陰性の下痢子馬で、赤い棒はロタ陽性の下痢子馬。
ロタ陰性の下痢は、30日齢以内に多いことがわかる。
ロタ陽性の下痢は30日齢から75日齢あたりが多い。
生まれて1ヶ月以内の子馬が下痢をすることが多いが、その頃は移行抗体でロタウィルスから守られていて、抗体が低くなる2ヶ月目、3ヶ月目にロタウィルスによる下痢にかかり易い。と解釈した。
左は下痢子馬の血清中のロタ抗体価の分布をロタ陰性(黄色)とロタ陽性(赤)で示している。
ロタ陰性下痢の子馬の抗体価はほぼ正規分布。
40倍以下の子馬はさすがに多いが、それ以外は因果関係がないので正規分布するのだろう。
一方、ロタ陽性の下痢子馬はロタ抗体価が低い子馬に多い。
ほとんどがロタ抗体80倍以下であり、抗体価が640倍以上ある子馬でロタ陽性の下痢をした子馬はいない。
血清中のIgG抗体が、腸粘膜に感染するロタウィルスを排除するのは難しい。
ロタウィルスに対する抵抗性は、腸粘膜をコーティングするIgAの方が働きが大きいと考えられている。
しかし、ロタウィルスによる下痢にかかる日齢や、ロタウィルスによる下痢を起こした子馬のロタ抗体価は、やはり抗体が子馬をロタウィルスから守っていることを示している。
子馬の下痢の約半数はロタウィルによる下痢だと考えられている。
今は、妊娠中の母馬にうつロタワクチンにより初乳中のロタ抗体を上昇させることもできる。
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McGuire先生らが1970年代に提唱したIgGの重要性、その後の反論と再評価。
そしてこれからは各病原体と抗体価の役割について考えていかなければいけないだろう。
子馬の肺炎と下痢。その代表的な病原体であるRhodococcus と Rota virus 。
それぞれの病原体と抗体との関係は、微妙に、あるいは大きく異なっている。
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左の図。
芋のようなものが細菌。
青いのが病原体と闘う白血球。
そしてY字が抗体。
抗体は、病原体にくっついて破壊し、白血球による貪食を助ける。
抗体が豊富にあるのとないのでは、細胞性免疫にも差がおきてくる。
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以前に、子馬のIgGのレベルごとに5種類のウィルスの抗体価を計ってもらった。
当然ながら、総IgG量の多い子馬は、各ウィルスに対する抗体価も高く、IgG量が少ない子馬は各ウィルスに対する抗体価も低かった。
IgGが低ければ、病気にかかり易い、病気に対する抵抗力が弱い。と考えるのは当たり前のことなのだ。
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長々と書いてきた、子馬にとっての初乳由来のIgGの重要性。
ここらで、一段落としたい。