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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

miscellaneous いろいろさまざま、そして夜

2022-04-09 | 日常

ひどい腹の膨らみ。

こいつは結腸捻転だった。

腹の膨らみ方で結腸捻転か、小腸閉塞か見当がつくことが多い。

馬が痛がって転がっているときによく観察してみたらどうだろう。

           ー

二つの大学で講義を頼まれているので準備している。

呼吸器、消化器、運動器、泌尿器(ヴォリュームからいくと泌尿生殖器だろうね)という臓器別に話すのは初めて。

そして、学生さんたちに馬の臨床に興味を持ってもらわないと、生産地の獣医療は崩壊する。

           ー

研修機関から研修に来たG先生大活躍。

臨床ってやりがいがあるし、臨床っておもしろい、それを伝えられる研修場所はやっぱり必要だろう。

          ー

THO。

もう何頭目だか数えられなくなった。

耳の麻痺、平衡感覚障害、顔面麻痺、眼瞼麻痺、それによる乾燥性角膜炎、舌の麻痺。

この顔にピンときたら、早めに手術した方が良い。

            ー

前日から元気がなくて、尿量が減って、「小さい穴から漏れるような膀胱破裂なんですかね・・・」

なんていってたら、

でっかい穴の膀胱破裂だった。

牝だったし、腹腔の尿も排泄できたのだろう。

            ー

1ヶ月齢の肩甲骨の頚部骨折。

牛の骨折プレート固定のアプローチを解説する文章の依頼も来た。

牛の肩甲骨骨折は診たことがないからいいか・・・・

          ーーー

そして、当番の夜。

繁殖牝馬の疝痛。

結腸左背側変位だった。

ひどく引っかかっていて外すのに苦労した。

と思ったら、左側結腸の腸間膜が正常より広かった。

そのせいで、腹側結腸を引っ張ってもはまりこんだ背側結腸が出てこなかったのだろう。

           ー

終わる頃、別な繁殖牝馬の疝痛の依頼。

分娩後。

「子宮動脈破裂なんじゃないの?」

子宮動脈破裂なら運ばない方が良い。

来院したら、子宮動脈破裂だった。

入院厩舎で一晩様子を観て、帰ってもらった。

          

 

 

 

 


迎春2022 仕事はじめは子牛の膀胱破裂

2022-01-06 | 日常

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

元旦には初詣をはしごすることができました。

おみくじの文言にも素直になれるのが新年なのかもしれません。

                 -

私は5日が仕事はじめ。

何ごともなく、と思っていたら、夜になって新生黒毛子牛の膀胱破裂が来院。

5日齢。

腹囲膨満のわりには飲欲もあり、それなりに元気。

4日間3リットルずつ飲んでいたので、10リットルほど腹腔に溜まっている。

かなり抜いてから手術台で半仰臥。

膀胱は大きく破裂していた。

子牛はカテーテルが入れられない(入れにくい、だけ?)。

尿カテーテル留置は必須ではないのかもしれない。

                /////////////////

今年も、筋トレに出かけることができました。

1日目はそれなりに滑れたが、徐々に雪が降り始め・・・・

翌日は、ホワイトアウトの中、ハザードランプを点けながら、命がけで帰ってくるのが精一杯。

たどり着いた苫小牧の街中はスケートリンクの様。

無事に帰って来られたのはご利益かもしれません;笑

 

 


手術室の色

2021-12-23 | 日常

18年前に、今の診療棟を建築したときに、手術室の壁と床の色はクリーム色か、わずかに青みがかったグレーホワイトか、どちらかを選ばなければならなかった。

私は、白を選んだ。

明るくて、清潔感があり、それなりに良かった。

床は傷つき、コンクリートの割れ目に沿って剥がれてきて、汚れも落ちなくなったので塗装しなおしてもらった。

今度は、塗装剤は、グレー、クリーム色、レッド、明るいグリーン、濃いグリーンから選べた。

当然、明るいグリーンを選んだ。

以前に比べると暗さを感じるが、以前が明るすぎたのだ。

  

診療室と同じ色になってしまったが、統一感があると言えなくもない。

馬は立って歩かないのでクッション性は必要ない。

硬いので傷つきにくい。

つるつるだと滑るのでザラザラをつけてある。

今のところ水をはじき、汚れも付着し難い。古くなるとどうかわからない。

                -

手術室で患者さんを覆う布や、術者が着るガウン、そして手術室の床や壁は薄いブルーかグリーンが良いとされている。

術者は血だらけの赤い術野を見続けなければならないが、そこから目を移したときに、赤の補色である青やグリーンの影が見えてしまう。

目の残像現象なのだ。

それを見えないようにするには、手術室の広い面積は青やグリーンであることが望ましい、のだそうだ。

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これから朝の散歩いきます

あちこちで3回ゴロスリしました

雪の白、さいこ~

               


手術室床のリフォームで

2021-12-19 | 日常

手術室にあった器材を外へ運び出して・・・・

何をするのかというと、床のリフォーム。

だいぶヒビ割れて、剥がれてきていた。

汚れも落ち難い。

どうするのかと見ていると、研磨用のグラインダーで削っていく。

吸引装置が付いていて、ホコリは出ない。

浮いているところは剥がれてしまうのだそうだ。

コンクリートの割れ目は深く削る。

一日目は一層目の塗装で終了。

二日目は私は居なかったのだが、二層目と三層目を塗装。

今度の塗料は多少伸縮性があるのだそうだ。

以前より滑りやすくはしないで、と注文してある。

濡れているときに何人か転んだ人がいるので。

全体。

1日もおけば乾いて使える予定だったが、完全には乾かなかった。

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それで、予定の手術は覚醒室で。

尺骨骨折を固定していたプレートの抜去手術。

もしリフォーム中に疝痛の開腹手術でも緊急であったら覚醒室で対応するつもりだった。

続いて肩跛行の当歳馬の検査。レントゲン室で。

午後は飛節OCDの関節鏡手術。

びちゃびちゃにならずに済んだ。

続いて寛跛行の当歳馬の検査。レントゲン室で。

                -

今日1日で手術室の床は乾いたようだ。

明日からは手術室が使える、はず。

 

 

 

 

 


人が動物と生きること

2021-12-18 | 日常

サウジアラビアで、ラクダのレースやコンテストを含んだイヴェントが行われていて、

ドーピングやルール違反の処置をして出場するラクダも居て、失格になるラクダも少なからずいるのだそうだ。

それがTVのワイドショーで取り上げられ、コメンテーターが、

「ボクもボトックス注射を受けているけど、それは自分の意志でやっているので、

自発的にボトックス注射を受けるわけではないラクダにやるのは良くない」

というようなことをコメントしていた。

もう一人のコメンテーターも、

「自然じゃないことを動物にするのは良くない」

ということをコメントしていた。

私はひどい違和感を感じた。

TVにコメンテーターとして呼ばれるような知識人??ですら、人が動物を飼うこと、人が動物と暮らしていくことについて、

こんなお粗末な観念しかもっていないのだな、とあきれた。

           ー

人は太古から動物を飼うことに挑戦し、野生動物をてなづけ、品種を改良し、飼い方を工夫し、動物を利用して生きてきた。

肉を食べるために飼われてきた牛、豚、ニワトリ、羊、ほかには馬も犬も。

乳を搾るために飼われてきた牛、山羊。

毛を刈るために飼われてきた羊。

狩りを手伝わせたり、狼から守ってもらったり、畜産を助けてもらったりするために飼われてきた犬。

馬は、移動手段であり、農耕の動力にもなり、戦争のための兵器でもあった。

ネコは、農耕の収穫物をネズミから守るために飼い始められたのだろう。

そして、イヌ、ネコをはじめ多くの動物が愛玩用としても飼われてきた。

くだんのラクダは砂漠の船、そして中東では貴重な財産だ。

いずれにしても、いずれの飼い方にしても、動物の意志ではない。

それが、畜産であり、人が動物を飼うことである。

           ー

だからと言って、虐待だということにはならないし、

もちろん、どんな飼い方をしても良いということではないし、

動物に何をしても良いということではない。

それでも、人が動物を飼うことは素晴らしいことで(人にとってだけかもしれないが)、

人の世に動物がおらず、地球上に人と野生動物しかいなかったら、この世は今ほど豊かではなく、寂しいと私は思う。

           ー

ラクダにボトックス注射やアナボリックステロイドを射っても良いというつもりはない。

それは、ラクダのコンテストの中でのルールの話だ。

ラクダを飼うのは中東の畜産であり、ラクダはペットではないだろう。

ラクダの自由意志の話ではない。