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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

咽頭壁へのワイヤー刺入

2023-06-02 | その他外科

午前中、咽頭壁に迷入しているワイヤーの除去手術。

細くて硬いワイヤーだ。しかし、先週のX線検査では1本だったが、今日は折れていた。

下顎の後ろから切って、肉芽腫とわずかな膿の中から摘出できた。N.M.C.

私は、以前喉頭近くに刺さったワイヤーを抜く手術に6時間かかったことがある。

その馬は、術後半年経っても膿が治まらず、そのまま競馬した。

             ー

馬も針金などは食べてしまうことがある。

植物の硬い茎などを嫌がっていては生きていけない草食動物だからだろう。

(イヌも相当おかしなものを飲み込むけどね。

肉食動物も、骨を嫌がっていては生きていけない。)

厩舎や馬房での針金、ワイヤー類の取り扱いは注意した方が良い。

このワイヤーがどこから来たかはわからない。

放牧地に落ちているかも知れない針金までは管理しきれないだろう。

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6月になる夜、奇跡的に夜に呼ばれることはなかった。

早朝から論文書き。

もう仕上げて、大学での講義の準備もしないと。

夜中働かなければ日中も体調は良い。

早朝、朝食を食べながら、大谷君のホームランも観れた;嬉

そう、睡眠と休養が大事なことも、あらためて大谷君から学ぶことだ。

 

 


繁殖雌馬の膀胱破裂

2023-05-07 | その他外科

妊娠末期の馬が沈鬱、発汗を示し、翌日には発熱したのだそうだ。

そして膀胱破裂が診断された。

で、夜に分娩もしました、という電話を私が受けた。

では、来院してもらって、膣底を切開して膀胱を膣内へ逸脱させ、破裂孔を縫合閉鎖する手術をしましょう。

この手技は、

・分娩前にやると、分娩時に膣底縫合部が耐えられずに腸管脱出するリスクがある。

・妊娠末期は膣全体が妊娠子宮に腹腔側へ引っ張られていて、膀胱の破裂部位によっては難しいかもしれない。

子宮捻転していないか注意が必要。

しかし、すでに分娩しているならその問題はない。

            ー

持参してもらった血液と腹水を検査して、腹腔尿症であることと、全身状態を把握する。

枠場へ入れて、尾椎硬膜外麻酔して膀胱を修復して、その間に腹底にトロッカーカテーテルを留置して・・・・

と処置を進めたいが、馬が寝ようとしてしまう。

鎮静剤が効きすぎた。

分娩と輸送と膀胱破裂で参っているのだろう。

しばらく待ってもなかなか醒めてこない。

拮抗剤を投与した。

なんとか枠場で立っていられるようになって・・・

予定通りの手技ができた。

膣内へ逸脱させた膀胱尖にstay suture をかけて、「たらこくちびる」のような破裂孔をこれから縫うところ。

この破裂孔は膀胱の腹側左寄りで、大きく、なかなか難しかった。

今は、大型の膣開創器や長柄の把針器を使うので、昔のように悪戦苦闘しなくなった。

この馬は入院しないでも大丈夫だろう。

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この枝垂れ桜はまったく花が咲かなくなっていた。

夏は枝が混み合って緑の葉が生い茂りサクラに見えないほどだった。

花を付けないなら切り倒してしまおうかと思いながら、

枝を剪定して、肥料を与えて、花をいっぱいつけるようになった。

枝垂れ桜は巨木になるらしい。

私はそれまで生きてないけど;笑

 

 

 

 


鹿害

2022-12-01 | その他外科

この秋も、エゾシカの角にやられたのであろう外傷症例が何頭か来院した。

胸を突かれて胸膜炎を起こした馬は数週間の治療後、安楽殺された。

(シカの角は特別汚いのか??)

別な、大腿部を刺された馬も来院した。

(受傷して数日後だったが、傷は化膿していた)

その飼主さんはハンターでもあるのだが、近隣の牧場への配慮もあるので自分の牧場でもなかなか撃てないそうだ。

U町だけでも2000~3000頭は駆除しているとのこと。

それでも減らないのだから、手をゆるめたら激増するのだろう。

高い柵で囲ってシカが入れないようにした草地では、牧草の収量が3割増えたそうだ。

1/4以上の牧草はシカに食べられていた、ということなのだろう。

           ー

この地域の黒毛の飼養頭数は2万頭ほどだ。

シカを毎年1万頭駆除しているなら、黒毛和牛よりシカの生産頭数の方が多い;笑

ただし、食肉として有効に利用されてはいない(13%)。

           ー

北海道全体では、13万頭が駆除されている(2020年)。

すごい数だ。

北海道の肉牛飼養頭数52万頭

           ー

ただし、エゾシカも絶滅が心配された時期もあった。

異常気象による寒波と大雪で一冬で壊滅的打撃をうけたこともあったようだ。

1879年

一度、大きく減少すると簡単には激増しないのだろう。

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家への帰り道、ここはシカの通り道になっている。

林に入ってじっとこちらを見ている。

一斉に、お尻の白い毛を見せて跳ねていった。

シカとぶつかる交通事故の被害も車両保険の掛金率が上がるほどのようだ。

気をつけましょう。

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シカの像は太宰府にもあった。

むかしから身近な野生動物だったんだろう。

 

 

 


クラブフット  忙しい秋の日曜日

2021-10-18 | その他外科

朝、前日の朝も疝痛で来た繁殖雌馬が再来院。

前日も結腸変位を疑ったのだが、疝痛がないので経過を観ることにした。

再来院したら、また疝痛を見せない。

「・・・・・もう開腹しますか・・・・開腹せずに治まる可能性もあるけど・・・」

今度は電解質液を飲ませて経過を観ることにした。

                -

その急患で、予定していた側頭骨舌骨関節症の手術は延期。

                -

その後に予定していたのは、当歳馬のclub foot 。

配合飼料を変えたら、受胎は良いし、馬のできも良いけど、当歳馬が何頭かclub foot になり、

他の馬は良くなったけど、この馬はどんどん悪化した、とのこと。

もう深屈腱そのものを切らなければいけないレベルなのだが、それでは競走馬になれない。

深屈腱の支持靭帯を切って、かなり大きな蹄尖エクステンションを付けた。

術後は痛み止めを使ってでも運動させた方が良い。

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午後、予定していた当歳馬の臍ヘルニア。

他の2-3頭はゴムで処置してもらったが、一番大きいのはゴムでは無理、と言われたそうだ。

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その後、種子骨骨折で引退した4歳競走馬の去勢。

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そして、朝の疝痛が再発したとの連絡。

今度はすぐに開腹。

やはり結腸変位だった。

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開腹手術の間に、予定していたひどい体重減少の繁殖雌馬の検査。

まだ、若いのだが・・・B.C.S.1.5。

この1ヶ月半で急激に痩せた。

食欲はあり食べるのだが痩せる。不快感はあるが疝痛はない。

腸管に著しく肥厚した部分がある。

蠕動はあるのだが、滞留している部位もある。

Infiltrative Bowel Disease だろうか・・・

皮膚病もある。

好酸球性腸炎ならbiopsy が診断方法なのだが治療方法はない。

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ピンクの実がなるのが好きで植えた。

今年はたくさん実をつけた。

ピンクになるのが他所より遅いのはなぜ?

 

 


外傷 2例

2021-10-12 | その他外科

2歳馬、珍しいところを怪我した。

半腱様筋の上を、縦に40cmほど何かで刺したらしい。

トロッカーカテーテルを入れておいて、下の部分を切皮して開創した。

管を入れて洗浄しているところ。

このあと長いペンローズドレインを通して留置した。

                 -

何か刺したんだ。

何が刺さったのか見つけておきたいところだ。再発防止のために。

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夜間放牧されている当歳馬。

牧柵を壊して5頭で脱走していた。

こいつが先頭で牧柵にぶつかったのだろう。シカが出たか?

胸下だけでなく、腹部にも大きな傷がある。

牧柵を飛び越えそこねたのだ。

全身麻酔して縫合するか考えたが、起立のときに開いてしまうかもしれない。

あっちで関節鏡手術が終わった馬が寝ていて、こっちで別な馬が腫瘍の切除に来ている。

結局、立位で縫うことにして、途中で援軍が加わり、交代もした。

馬の前や横にしゃがみこみ、患部を見上げながら縫合することになる。

3人がかかりで2時間。

おとなしい馬だったので縫えた。

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臀部も体幹も、意外に傷の癒合は良くない。

思う以上に寝起きや歩行で引張られ、傷に重力もかかるのだろう。

自分の胸や背中の皮膚を動かしてみるといい。

上には動くけど下には動かないでショ?

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ドウダンツツジの赤。

本当はこれほど鮮やかではない。

デジカメは赤が強すぎる。

人の顔色や、朝陽や夕陽や、花が綺麗に写るようになっているのだろう。

本当はこのブログの現場も、写真ほど血だらけではありません;笑。