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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

ウマ科学会学術集会2009

2009-12-03 | 学会

ウマ科学会学術集会は30日午後から始まったのだが、調査研究発表会と重なっているのでPc01004730日はほとんど聞けなかった。

1日の午前中は、Dr.Brooksの馬眼科学の講演。

これはたいへん興味深かった。

紹介される臨床成績も、角膜が破れて虹彩が飛び出した馬でも、

かなりの率で失明を防げるとか、たいへん興味深かった。

羊膜を利用した角膜の傷の修復もぜひやってみたい。

私たちなら無菌的に羊膜を採材する機会もあるだろう。

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Pc010053 午後は弥生講堂へ移って、獣医臨床関係の口演。

私も育成馬の胃潰瘍についての調査成績を報告した。

その内容についてはいずれあらためて紹介したい。

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Pc010056 3時半から7時近くまでは、アナライザーシステムを利用しての症例検討会。

症例についてパネラーが出した設問に、会場の聴衆が渡されていたスイッチを押すと、その結果が集計されてプロジェクターで示される。

クイズだと考えることもできるし、症例についての意見交換ととらえることもできるだろう。

ただの講演なら3時間半聴くのは辛いが、このシステムのおかげでたいへん勉強になる楽しい時間だった。

例えば・・フレグモーネに対してステロイドを使うのが是か否かというのは、すぐには結論が出ないたいへん興味深い課題だった。

競走馬の蹄葉炎についてのデータの紹介も、学術報告以上に興味を持って聴くことができた。

とくに発症要因がない競走馬が蹄葉炎を発症していて、初期から適切に処置すればかなりが競走復帰している。

ACSが効果を上げているとのこと。素晴らしい。

When to cut ? (いつ切るべきか?)と題が付けられた消化管のセッションについては・・・

また別の機会に(笑)。

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アナライザーシステムは、レンタル料は結構かかるようだったが、本当は大学などは備えていれば、ふだんの講義やテストに大いに役立つ機材なのではないだろうか。

症例検討会が終わるのが7時の予定だったので、その夜も泊まらなければならなかった。

次の朝、早い飛行機で帰るためにホテルで目覚ましで起きて・・・

一瞬「アレッ!?」と思ったのがどうしてだか、症例検討会に参加した人にはわかるはず(笑)。

Pc020057


JRA調査研究発表会2009

2009-12-03 | 学会

Pb300035 東大弥生講堂は椅子が硬くて長く座っていると辛い。

座布団があっていくらか楽だったが・・学会が終わると回収していたけど、あれはどこかからの借り物を付けていただいていたのだろうか?

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JRA調査研究発表会では、私にとって一番興味深いのはやはり臨床の発表。

直接診療に役立つ情報ももらったし、いっぱい刺激ももらった。

Pb300036 もう一度、いろいろなことをいろいろな角度から勉強しなおさなければと思った。

例えば・・・抗生物質の使い方。

私は次に効く抗生物質は何か、どんどん新しい抗生剤を探すつもりは毛頭ないが、

知っているつもりの各抗生物質についても、薬剤動態や抗菌スペクトルについて確認しておく必要を感じた。

                        -Pb300043

フロリダ大学獣医眼科学教授のDr.BrooksからはUSAの獣医学教育についての解説があった。

獣医大学はUSAでも人気学部で競争は、入るためにも、卒業するためにも、そして、その後のインターンやレジデンシーでもたいへん厳しい。

かつ、学生は一人当たり120,000ドルのローン(負債)を抱えているそうだ。

USAでも産業動物や行政へ進む学生の不足が問題になっているが、そのために産業会が学生に奨学金を出している。

日本でも産業動物へ進む獣医科学生が不足している、これからもっと不足すると言われているが、私はどうかなと思う。

待遇をきちんとそれなりのものにすれば、志望者は充分増えるはずだ。

2年前のウマ科学会で、馬の業界に若い人が入ってこなくなっていることが唱えられていたが、待遇の問題を避けては通れない。

今、それなりの生活ができて、伸びていける可能性があって、将来の夢が持てれば、その業界には人が入ってくるはずだ。

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Pb300045_2  夜はJRAとウマ科学会との合同懇親会。

2次会は・・行ってきました、青木会。

馬関係異業種バトルロイヤル。

楽しゅうございました。


Capital city

2009-12-02 | 学会

昼前の飛行機だったので、昼食抜きで羽田についた。ホテルで落ち着いてジャパンカップを観るために、結局、昼を食べそびれたが・・・・ウォッカ!

静内生まれの女の子が・・東京競馬場で世界を相手にやってくれました。

オメデトウ!!!

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Pb290025 酪農学園大卒業生も頑張ってるな~。

「札幌農学校」もおみやげになっているし(笑)

ウマ科学会一般口演で、帯広畜産大学での、他大学の学生に向けた馬臨床獣医学実習の様子を見せていただいた。

たいへん素晴らしいことだと思う。

日本の牛も馬も半数以上は北海道に居る。

私たちにはやらなければいけないことがあるし、

やれることがあるはずだ。

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Pb290028 東大正門前。

明日からJRA調査研究発表会と、ウマ科学会学術集会。

日が暮れた通りを歩いて、親戚のおばさんに出会ったような気分になった(笑)。

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産業動物獣医学会(北海道)

2009-09-04 | 学会

Ca360213 札幌で行われた北海道産業動物獣医学会に行ってきた。

81題の演題中、馬の演題も18題あった。

サルモネラ、馬パラチフス、寄生虫、外科、x線検査、栄養、繁殖、etc.

今年から発表時間が1分短縮されて7分になり、

質疑応答の時間は1分延長されて3分になった。

これは良かったのではないだろうか。

発表はコンパクトにまとめられ、

質疑はいつもより活発だったように思えた。

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多くの人にも会えて、話をすることができた。

メールや電話で済むとは言え、やはり直接会って話ができることは大きい。

一堂に会する意義はそこにあるのだと思う。

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若い先生たちの優れた発表も多かった。

雰囲気もずいぶん変わったようにも感じた。

パソコンの普及で、昔に比べればデータの集積も解析も、

発表の準備も、画像や動画さえも格段に楽になった。

それが大いに生かされるようになってきたように思う。

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Ca360217 白血病のシンポジウムも盛況だった。

意見や質問も多かった。

何とかしなければならない。というのは多くの獣医師が感じているのだ。

政治を動かして対策のための予算を獲得すること。

マスコミにも消費者にも牛飼養者にも正しい知識を与えること。

具体的な効果のある対策を提言すること。

それらはすべて獣医師がやるべきことではないか。

調べるな、騒ぐなは怠慢であり、無責任だろう。

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Ca360215このあとは、大学での講義に、ウマ科学会での発表にと講演に、

眼科実習の準備に、

麻酔外科学会の準備と講演と座長と・・・・

その前に内部の実習があるんだった。

 大志を抱いて。

 SLOW DOWN (笑)

着実に進めましょう・・・


SHCカンファレンス2009

2009-08-22 | 学会

苫小牧で開かれた社台ホースクリニック症例検討会に、昨年に引き続いて参加させてもらっP8230855 た。

たいへん勉強になるし、刺激になるし、楽しい時間だった。

臨床家にとって症例から学ぶことこそもっとも大切なことだろう。

そして、1例1例を大切にしていくことは当たり前のようでいて、なかなか難しいことだ。

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ちょっと思ったこと・・・

Salmonellaの馬群への侵入はUSAの獣医大学病院など常時入院馬がいる病院でも問題になっている。

入院する馬は培養とPCRでsalmonellaをチェックされていて、保菌しているとわかると入院を拒否されたり、隔離病棟へ入れられたりもする。

PCRなどはかえって鋭敏すぎるので解釈が難しいくらいらしい。

日本ではPCRによるsalmonellaの保菌検査の実施は難しいのだろうか? 

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術後感染の予防にセフェム系の抗生物質を使うのは、私は必要ないと思うし、反対だ。

海外では、獣医師には効能をとっている動物薬以外のセフェム系抗生物質の使用を禁止している国もある。

病原菌の薬剤耐性が進み、人医療で問題になるのを防ぐためだ。

そうならないように(人医療での耐性を促進してしまわないように・それを恐れて動物への使用が画一的規制されないように)、馬の獣医師も考える必要があるのではないか。

安易に人体薬を使うべきではないし、まして予防的に投与するについては必要性を慎重に検討すべきだと思う。

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うちでも2000頭を超える関節鏡手術をしてきたが、関節鏡手術そのもので細菌性関節炎を引き起こしたことはない(と思っている)。

もし、幸運なだけではないとしたら、術野の毛を剃らないこと、吸収性モノフィラメントの糸で縫合すること、灌流液にマイシリンを入れていること、術前に抗生物質を投与すること、などが意味があるのかもしれない。

術後もほとんどすべての症例でマイシリンしか使っていないはずだ。

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細菌性関節炎であっても関節液から菌分離できないことは多い。

まだ抗生物質を投与していなくても、カルチャーボトルに採材しても、菌分離できることのほうが少ないくらいだろう。

viable but unculturable (生きているが培養できない) は、しばしばあることだ。

牛の乳房炎の検体でも20%以上は培養陰性だ。

しかし、原因菌は嫌気性菌でもなければ培養できない特殊な菌でもなく、ありふれた好気性菌なのだろう。

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1例1例をきちんと診断し、治療し、結果がどうあれ記録を残しておくことの大切さをあらためて認識した。

そう、それがEvidence(根拠)として使えるように。

P8230858

帰り道、ちょっと休憩。