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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

生産地シンポジウム

2009-07-16 | 学会

恒例の生産地シンポジウム。

第37回だそうだ。

しかし、この歴史あるシンポジウムもJRAの売り上げ減少の中で見直され、

意義が認められるのでなければ続けていけない。という水野理事の挨拶だった。

午前中は馬場の特性が馬に与える影響についてのシンポジウム。

アイルランドの馬産と日高育成牧場の生産研究の紹介。

あとは一般口演。

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那須から帰って忙しい。

日曜日enterectomy 腸切除。

月曜日 enterotomy 腸切開。

関節鏡手術数頭に、喉頭形成声嚢声帯切除手術、Tieforward手術、Bone flap手術。

例年このシンポジウムが終わると、やれやれ繁殖シーズンも終わり。という感じだったのだが、最近は繁殖シーズンの終了が早くなった代わり、シーズンが終わっても余裕ができない。

今日も重症馬2頭・・・・

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日本「小」動物外科専門医

2008-12-29 | 学会

獣医麻酔外科学会が主体となって、日本小動物外科専門医協会が創られ、認定や研修プログラムが始まっている。

今年の初めに来た文章では日本小動物外科専門医協会は()付きで Japanese College of Small Animal Surgeons となっていた。

ところが、今月来た文章では Japanese College of Veterinary Surgeons となっている。

アレっ?

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獣医外科専門医の認定や研修が必要なのはわかる。

しかし、小動物外科だけを先行させて外科専門医を認定してよいものか。

USAやヨーロッパでも、外科専門医は小動物についても大動物についても卓越した技術と知識を身につけているわけではない。

しかし、USAやヨーロッパでは、学部教育でも専門医教育でも他の動物種についても学ぶのだ。

だから、Veterinary と名乗ることを許されるのではないか。

小動物外科だけについて認定するなら、Small Animal Surgeon と名乗ってもらいたい。

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小動物外科専門医の設立認定医は、「大学の教員を中心に認定する」とあった。

これは何だ?

小動物の開業獣医師の先生方が先行して小動物外科専門医を標榜したいのならわかる。

しかし、獣医科大学の外科系教官が中心にいながら、大動物外科を捨ててしまって良いのか?

自分達が担うべき獣医外科学の一部分に対する責任を放棄しているのではないか?


企業展示

2008-12-08 | 学会

Aaep 企業展示も初めての試みだった。

右写真はAAEPの企業展示場。

学会の講演を聴いているより、いろいろな馬用医療機器の展示を観ているほうが楽しかったりもする。

英語の講演を聴き続けていると疲れ果てるので、開催期間中何度も展示場を訪れる。

いつも一番広い会場が企業展示に使われていて、飲み物やインターネットが使える場所もあったりして、休憩場所も兼ねてもいる。

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 今回、AAEPに比べればはるかに少ないが、たくさんの企業にブースを出していただいた。

真面目に発表を聴いたので(笑)、展示を見る時間は1日目の昼休みしかなかったが、興味あるものをいくつも観ることができ、いろいろ役に立つ話も聞けた。

最近また痛い「関節鏡肘」をショックウェーブで「施術」までしてもらった。効いた~(笑)。

Dornierは世界でもっとも普及しているショックウェーブ機器だそうだ。

直後から痛みがとれて、効果を実感した。

 プレートやスクリューにしても実物を見ないとカタログではピンと来ない。しかし、いちいち取り寄せて、見るだけで返品するわけにもいかない。

実物を手にとってみて、使えそうなプレートや器具を発見した。

今度、買って使ってみよう。

 本もamazonで買うのは手軽だが、本をめくってみることはできない。

物を見せてもらって、蔵書したいものを「ダンボール一杯」送ってもらうことにした。

 業者の何人かの方には「また来年も出させてください」と声をかけていただいた。

結構、企業としても手応えもあったのだろう。

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 そして、馬医者相手にずいぶん販売しているのに協賛していない企業の名もしっかり覚えておくゼ(笑)。

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 医療器械や医学書は、ネオンサインより展示とデモでしょう。


ウマ科学会臨床獣医学教育講演

2008-12-07 | 学会

火曜日午後からはウマ科学会学術集会。

今年から新しい試みで馬臨床獣医師による、馬臨床獣医師のための、馬臨床獣医学教育講演が行われた。

発案者である帯広畜産大学佐々木先生に講演者がお願いされていたことは・・・・

学生でも理解できる内容にして下さい。

・馬臨床獣医師の明日の診療に役立つ内容にして下さい。

・その分野の最新の知見を2-3紹介して下さい。

25分程度にまとめ、2-3の質問に答えてください。

う~ん、それは・・・・・無理っ!(笑)

しかし、この指示のおかげで、それなりに成果のある「教育」講演になったのではないだろうか。

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この午後は教育講演会場にずっと居た。

一般口演も聴きたかったのだが、馬臨床獣医師としては教育講演で勉強しないわけにはいかない。

アメリカ馬臨床獣医師会AAEPへ行くと、研究発表や症例報告だけではなく、実にいろいろな発表、報告、集会、教育講演、実習が行われている。

How toのセッションもあり、具体的な方法を学ぶことができる。

そのテーマに興味がある人が集まってディスカッションする部屋もある。

数時間に及ぶ教育講演もある。

ウェットラボ(汚れる実習)、ドライラボ(汚れない実習)もある。

募集した発表が集まらないので企画した発表が多いのではない。AAEPには実際には発表されている演題の4倍ほど応募があるが、選抜されているそうだ。

参加者の要望に応えようとして、いろいろな形態がとられているのだ。

何も最新の研究成果、珍しい症例の報告だけが臨床獣医師の勉強になるわけではない。

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 今回の教育講演会参加者に答えてもらったアンケートでは内容はおおむね好評だったようだ。

そして、いろいろな提案、要望もあったようだ。

来年以降、外人講師の招聘や聴講者も参加しての症例検討も計画されている。

馬臨床獣医師の集まりは、まだ始まったばかり。馬臨床獣医師の皆さん、来年も集まりましょう。

AAEPだって第1回の参加者はたった12人だったのだ。

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Ca360176   10年後、10回目を記念できるように。                                                             


JRA調査研究発表会2

2008-12-06 | 学会

シンポジウムの福島大学川本先生の講演は面白かった。

福島大学陸上部は、近年表彰台どころか決勝レース出走者を独占するほどの成果を残しているそうだ。

そうなると選手の才能ではなくトレイニング方法が優れているとコーチが自慢しても許されるだろう。

サラブレッドはどうだろう。

私もかつては、環境や育成方法や調教方法で、遺伝能力を超えられるのではないか考えていた。

しかし、やはり血にかなわないのがサラブレッドの世界かと思うようになっていた。

川本先生の話を聴いて、もう一度、後天的に能力を鍛えることの大切さを考えてみようと思った。

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Ca360187 研究発表でも多くの興味ある発表を聴けた。

・馬は長日周期、つまり春や夏のように日照時間が長いときに性周期が起こるようになっている。ライトコントロールは育成馬にも有効だったという発表。

一方で、性周期が起こるようになると、骨の成長板が早く閉鎖してしまうので、早ければ良いというものでもないらしい。

馬には秋冬は要らんのか? それとも、お休み期間があった方が良いのか?

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・栄養やスポーツ科学の発表を聴くと、ついつい私は自分に照らし合わせて考えてしまう。

食べてから走った方がいいのか、走ってから食べた方がいいのか・・・

登山やトライアスロン中にハンガーノック(グリコーゲンが枯渇した状態)も経験したことがある。

手術中の助手が低血糖と思われ、集中を欠いててこずったこともある。

馬が食べている草やエンバクでは、人の食事ほど血糖値は上昇・その後の下降をしないそうだ。

しかし、腹が減っているからといって、甘い缶コーヒーを飲んでから手術するのはやめた方が良いかも(笑)。

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・麻酔では、海外研修報告でも、教育講演でも「バランス麻酔」「オーダー麻酔」がキーワードになっていると感じた。

全身麻酔中でも鎮痛剤を併用することで麻酔ガス濃度を減らせる。個々の患畜、それぞれの手術によって、必要な麻酔、鎮痛剤を考える。

それらのことで、麻酔覚醒も良くなる。

ただ、うちの麻酔医の先生達の経験ではブトルファノールを全身麻酔中に使うと覚醒時にふらつくようだ。

海外の先生でも、「オピオイドは駄目だ」と言っていた人がいたそうだ。フェンタニルはふらつかないのだろうか。

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・第一指骨骨折のスクリュー固定後の分析も興味深かった。予後は良好と言っても、復帰までに時間がかかる馬もいる。

近年はx線写真の質も良くなり、骨梁線も完璧に見えているとも思えるが、実際にはx線写真で見えている以上に骨折線は伸びているのかもしれない。

私も、骨折線がとくに長いものでなければスクリュー固定後はキャストは早期に外しているが、負重しない形でキャスト固定し、はずす時期は慎重に判断した方が良いのかもしれない。

第一指骨近位は骨皮質が薄く、スクリューの圧迫力は長期間強力に働いているかどうかわからない。

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・私は自分で蕁麻疹を治療することはないが、ときどきしつこい蕁麻疹について相談を受ける。

今までの抗ヒスタミン剤だと効果は満足がいくものではないし、副腎皮質ホルモンを長期に使うわけにもいかない。

新しい抗ヒスタミン剤で効果が高いものが推奨されたのは朗報ではないだろうか。

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抄録は回覧しているので手元にない。

他にも印象に残った発表、勉強になった発表がいっぱいあった。

難しすぎて理解できない発表も(笑)。

ウマ科学会の抄録にはJRA調査研究発表会の分は含まれておらず、調査研究発表会と続けて行われるというのも知らなかったウマ科学会員の人たちもいたようだ。

来年は、協賛ではないが、日程は続けて東大で行われるそうだ。

しかし、品川きゅりあんにしても、東大にしても、会場の広さから参加できる人数には限界がある。

参加費をとってもらっても良いから、もう少し広い会場で開くことは難しいのだろうか。

せっかくこれだけ内容豊富でレベルの高い発表会なのだから、馬関係者なら誰でも参加できるようにしてもらえないかというのが、かねてからの願いだ。

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