シンポジウムの福島大学川本先生の講演は面白かった。
福島大学陸上部は、近年表彰台どころか決勝レース出走者を独占するほどの成果を残しているそうだ。
そうなると選手の才能ではなくトレイニング方法が優れているとコーチが自慢しても許されるだろう。
サラブレッドはどうだろう。
私もかつては、環境や育成方法や調教方法で、遺伝能力を超えられるのではないか考えていた。
しかし、やはり血にかなわないのがサラブレッドの世界かと思うようになっていた。
川本先生の話を聴いて、もう一度、後天的に能力を鍛えることの大切さを考えてみようと思った。
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研究発表でも多くの興味ある発表を聴けた。
・馬は長日周期、つまり春や夏のように日照時間が長いときに性周期が起こるようになっている。ライトコントロールは育成馬にも有効だったという発表。
一方で、性周期が起こるようになると、骨の成長板が早く閉鎖してしまうので、早ければ良いというものでもないらしい。
馬には秋冬は要らんのか? それとも、お休み期間があった方が良いのか?
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・栄養やスポーツ科学の発表を聴くと、ついつい私は自分に照らし合わせて考えてしまう。
食べてから走った方がいいのか、走ってから食べた方がいいのか・・・
登山やトライアスロン中にハンガーノック(グリコーゲンが枯渇した状態)も経験したことがある。
手術中の助手が低血糖と思われ、集中を欠いててこずったこともある。
馬が食べている草やエンバクでは、人の食事ほど血糖値は上昇・その後の下降をしないそうだ。
しかし、腹が減っているからといって、甘い缶コーヒーを飲んでから手術するのはやめた方が良いかも(笑)。
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・麻酔では、海外研修報告でも、教育講演でも「バランス麻酔」「オーダー麻酔」がキーワードになっていると感じた。
全身麻酔中でも鎮痛剤を併用することで麻酔ガス濃度を減らせる。個々の患畜、それぞれの手術によって、必要な麻酔、鎮痛剤を考える。
それらのことで、麻酔覚醒も良くなる。
ただ、うちの麻酔医の先生達の経験ではブトルファノールを全身麻酔中に使うと覚醒時にふらつくようだ。
海外の先生でも、「オピオイドは駄目だ」と言っていた人がいたそうだ。フェンタニルはふらつかないのだろうか。
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・第一指骨骨折のスクリュー固定後の分析も興味深かった。予後は良好と言っても、復帰までに時間がかかる馬もいる。
近年はx線写真の質も良くなり、骨梁線も完璧に見えているとも思えるが、実際にはx線写真で見えている以上に骨折線は伸びているのかもしれない。
私も、骨折線がとくに長いものでなければスクリュー固定後はキャストは早期に外しているが、負重しない形でキャスト固定し、はずす時期は慎重に判断した方が良いのかもしれない。
第一指骨近位は骨皮質が薄く、スクリューの圧迫力は長期間強力に働いているかどうかわからない。
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・私は自分で蕁麻疹を治療することはないが、ときどきしつこい蕁麻疹について相談を受ける。
今までの抗ヒスタミン剤だと効果は満足がいくものではないし、副腎皮質ホルモンを長期に使うわけにもいかない。
新しい抗ヒスタミン剤で効果が高いものが推奨されたのは朗報ではないだろうか。
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抄録は回覧しているので手元にない。
他にも印象に残った発表、勉強になった発表がいっぱいあった。
難しすぎて理解できない発表も(笑)。
ウマ科学会の抄録にはJRA調査研究発表会の分は含まれておらず、調査研究発表会と続けて行われるというのも知らなかったウマ科学会員の人たちもいたようだ。
来年は、協賛ではないが、日程は続けて東大で行われるそうだ。
しかし、品川きゅりあんにしても、東大にしても、会場の広さから参加できる人数には限界がある。
参加費をとってもらっても良いから、もう少し広い会場で開くことは難しいのだろうか。
せっかくこれだけ内容豊富でレベルの高い発表会なのだから、馬関係者なら誰でも参加できるようにしてもらえないかというのが、かねてからの願いだ。