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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

Rhodococcus equiによる子馬の疝痛

2022-04-25 | 新生児学・小児科

2月はじめ生まれの子馬(2.5ヶ月齢)が、2日前から発熱し、きのうからは疝痛を示している、と夕方の相談。

発熱に対応して、腸炎を起こすことがある抗生剤を投与し始めていたので、「腸炎?」と訊いたが、

「超音波で、腸炎を疑う所見はない」、とのこと。

そして、「右腹部で血腫様の塊が見える」。

内科的に対応すべき症例ではないか、ということで様子を観てもらうことになった。

           ー

結局、その後も疝痛は強くなり、深夜になって来院した。

開腹したら・・・

腹腔の右背側にある盲腸底に柔らかい塊がある。

それに続く固い部分も感じる。

盲腸底の内側、盲腸結腸の動脈の根元側が固い塊になっている。

そして、回腸も巻き込まれている。

(写真、左上から伸びているのが盲腸背側紐;その先に回盲部がある)

切除もできないし、切開もできない。

このままでは、回腸の不完全な閉塞、盲腸から結腸への不完全な閉塞、が解除されない。その方法もない。

あきらめることにした。

解剖したら、盲腸底の塊は水腫を起こした腸壁で、

結腸動脈、盲腸動脈の周囲が膿瘍を取り囲むように肉芽腫になっていた。

右肺後葉の内部にも径3cmの化膿部があった。

           ー

この子馬、1ヶ月あまりのときに肢軸異常のsingle screw手術をしていた。

その後、数日は抗生剤投与を受けているが、Rhodococcus equiには有効ではなかったのだろう。

30-45日齢の子馬の発熱を静観してはいけない。

Rhodococcus equiが蔓延することになる。

         /////////

シデコブシが咲いた。

雨が降らない4月だ。

 

 

 

 


子馬の食道弛緩症

2022-04-15 | 新生児学・小児科

生まれて1ヶ月の子馬が、生後から乳が鼻から出てくる、との相談だった。

軟口蓋裂を疑う必要があるので来院してもらって内視鏡検査。

しかし、軟口蓋は大丈夫。

食道に内視鏡を入れると、食道が弛緩し、乳が食道内に溜まっている。

頚部と胸部で食道を追うようにX線撮影してみた。

食道は内容がないと、X線画像には腔としては写らないのだが、ところどころ液が溜まっているのが写る。

・・・・右の大動脈弓の遺残か??

自分で症例で確かめたことはないが、右大動脈弓が遺残すると食道が締め付けられて通過障害が起こることがある、らしい・・・

           -

その後も症状は改善されない。肺炎症状も出てきた。

とのことで、あらためて食道の造影撮影をするために来院してもらった。

頚の付け根。

経鼻カテーテルの先が写っている。

胸部ではちょうど心嚢の背側を通るあたりから造影剤が途切れている。

             -

右大動脈弓の遺残では手術した症例が報告されている。

最新の報告。

Computed tomography assistede surgical correction of persistent right aortic arch in a neonate foal

Equine Veterinary Education, Feb, 2006, 40-44

Wisconsin-Madison大学からの報告。

2日齢のアラブの雄子馬が呼吸困難と、乳が鼻から逆流する、という症状で入院。

肺炎の治療を数日行った後、開胸手術して、肺動脈と右大動脈を結んでいたligamentum arteriosium を切除した。

症状は消失し、この子馬は順調に見えたが、

3ヶ月後、離乳の翌日に死亡しているのが発見された。

剖検したが、死因はわからなかった。

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馬では予後は良くないとされている。

飼い主さんも、われわれも逡巡した。

日を改めて手術してみるか、と考えたが、結局あきらめることになった。

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犬では25症例の回顧的調査で92%で、とても良好な長期経過が報告されている(Muldoon,MM, 1997)。ただし、13頭では巨大食道症が認められている。

馬では、5症例の右大動脈弓遺残が報告されている。

3症例で手術が行われていて、1例は3ヶ月以上生存し、10ヶ月後も良好だった。

1例は手術後すぐに化膿性肺炎で死亡した。

犬では、巨大食道症の管理方法がある

食道を食べ物が流れていきやすいように、人みたいに椅子に座らせて食事させる。そして、しばらく座らせておく。

馬は・・・・そうはいかないよね。

            ー

今回の子馬は剖検してみた。

しかし、心嚢を開いても心臓血管は正常で、右大動脈弓の遺残ではなかった。

誤嚥による右肺後葉下垂部を中心とした化膿性肺炎が始まっていた。

肺付属リンパ節も腫れあがっていた。

胸腔の縦隔にあるリンパ組織が大きくて食道を持ち上げているようだった。

別な要因による食道機能不全も、馬にはあるらしい。

Yoshi先生が文献を見つけてくれた。

Megaesophagus in the horse. A short review of the literature and 18 own cases

Veterinary Quarterly; 24:4, 199-202

オランダからの報告。

18症例のうちの1症例だけが右大動脈弓遺残だった。

予後は、poor。

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私は、1歳馬で食道弛緩症を診せられたことがある。

どうしようもないでしょう、と言うしかなかった。

それは間違ってはいなかったのだが、胸焼け、モヤモヤが残る。

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ときどき青草を食べていたのは、胸焼けだったんだろうかね。

 

 

 

 

 


臍ゴムには十分に注意を

2021-05-21 | 新生児学・小児科

でべそ、臍ヘルニアのゴムリング処置が行われる季節になっていると思う。

共済加入したらやりましょうか、で3月生まれでも5月から保険加入しているし、

子馬があんまり大きくなると保定もたいへんだし、

腹圧が高くなると臍の状態もたいへんだし、

放置しておくと嵌頓(入り込んで抜けなくなること)のリスクも高まる

                 -

2日前に臍ヘルニアにゴムリングをかけた当歳馬。

そのあとから疝痛症状を示した。

2日目に「これはおかしい」ということになり運ばれてきた。

ゴムリングで縛られた臍自体は小さくてシワがよっているので超音波プローブを当てられない。

その根元を超音波で見てみると・・・

何か、正常ではない構造物が見えた。

本来なら、細くなった臍静脈以外は何もないはずだ。

痛がっているので、ゴムリングは外さなければならない。

ゴムリングを外すなら、どうせ臍ヘルニアの手術はしなければならない。

まだ2日目なので、皮膚の壊死後の感染は進行していない。

全身麻酔して手術することにした。

ゴムリングを切断し、皮膚を舟型に切除して、ヘルニア嚢を切除して、

念のために腸管を探査していると・・・

あらら、挟まれていたのであろう部位がみつかった。

放置すると穿孔しかねないので、切除することにした。

V型に切除して、狭窄しないように横断方向に切開部を閉じた。

                 -

臍ヘルニアのゴムリング処置は生産地ではやらなければならない処置なのだろう。

しかし、十分に注意してやる必要があるし、

それでも、リスクは付きまとうのかもしれない。

そして、処置後に子馬が痛がったらやはり外さなければならない。

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二晩つづきの深夜労働明け、

野草になぐさめられる。

サクラソウ。

ホントはねぎ(ギョウジャニンニク)採りにいったんだけどね;笑

 

 

 

 


NMS治療の目標は自力起立でき親から飲乳できること

2021-04-16 | 新生児学・小児科

Neonate Malajustment Syndrome 新生仔不適応症候群。

カリフォルニア大学DavisのMadigan先生の教えで、異常な神経ホルモンを抑える治療や、Loop Rope 処置が効果をあげている。

以前は希望が見えないことが多かったが、最近では1日2日で改善傾向が見られることが多い。

しかし、先週入院した子馬は、自力起立が可能だし、一般状態が悪くないので、軽症かと思ったが、結局入院は1週間を超えた。

最初はおとなしかったお母さん馬も、乳はほとんど出なくなるし、だんだんイラついて来ていた。

子馬は、哺乳ビンでなんとか飲めるが、親からは飲めず、ボールからミルクを飲めるようになって退院した。

で、

帰ってから親にひどく蹴られてしまった。

                     -

肋骨が折れ、肺が傷つき、あきらめた。

おとなしいお母さん馬でも、乳を飲んでくれない子馬と一緒にいることはできないのかもしれない。

                     ---

第一趾骨骨折の馬は、手術後、なかなか立ち上がらなかった。

1時間半たってやっと立ち上がって帰って行った。

夜、繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来たら痛みで立てない。

結腸捻転だった。

けっこうひどかったが、早い決断が幸いした。

終わって、私は1時には寝た。

             ー

翌朝、6時から入院馬の治療。

NMSの子馬は、哺乳ビンから飲めるようになった。

あとは親から飲めるように練習するだけ。

親との仕切りを取り外し、親の乳房のところへ行かせ、なんとか乳首を吸わそうとするが、ダメだった。

あとは練習してもらうしかない。

牧場へ帰った方が人手をかけられるだろう。

            ー

昨夜というか夜中の結腸捻転の母馬の状態も悪くない。

水を飲み、食欲もある。

血液検査所見も悪くない。

子馬を連れてきてもらい、点滴が終わったら退院だ。

あ~眠たい。

          ///////////

春眠暁を覚えず

夜来とうちゃん診療の音

馬助かること知る多少ぞ

(春はオラもねむたい 夜中にとうちゃんは仕事に行ったらしい 馬が助かったって?

 そんなことはオラはしらない    笑)

 

 

 


肋骨骨折からの敗血症

2021-04-13 | 新生児学・小児科

その子馬は、生後数日で後肢球節の細菌性関節炎を起こし、関節洗浄しに連れて来られた。

そのとき、左の肋部が腫れていて、超音波で肋骨4本の骨折と周囲の血腫を確認していた。

知らないうちに2週間早く生まれていた子馬で、難産や人の牽引で折れたのではないと思われた。

親はちょっとうるさい馬のようだった。

数日後、今度は反対肢の球節と両側の飛節が腫れて、寝起きも悪くなった、とのことでまた関節洗浄に連れて来られた。

抗生物質治療を続けながら、他の関節へ感染が広がっていくようでは厳しいかもしれない、とは思った。

3日後、死んでしまった、とのことで剖検。

肋骨骨折部は血腫はカッテージチーズ様になり化膿しているようだった。

(今も病理学で”乾酪化”って習うのか?乾酪ってチーズのことだよ)

まわりは黄色く膠様浸潤が広がっていた。フレグモーネと言っていいかもしれない。

(”膠”って”にかわ”。今は死語だよね。病理の先生には新しい言葉を考え出してもらいたい)

ダメージは胸腔内にもおよんでいて、心嚢のまわりにはフィブリンが付着し、横隔膜が心嚢に癒着していた。

左の胸腔にはかなりの量の血液が溜まっていて、最終的な死因になったかもしれない。

来院したときの超音波検査では胸腔に水はほとんどなかったので、

寝起きが不自由で介助しているうちに肋骨に沿って走っている動脈が傷ついて胸腔内へ出血したのだろう。

肋骨骨折を手術して固定したことはある。

しかし、すでに感染しているようだと厳しかっただろうと思う。

                ---

今年は疝痛や分娩事故は少ないかも・・・と思っているが、けっこう開腹手術はある。

子馬の関節炎やNICU入院もつぎつぎにある。

もう半分は生まれたかね・・・・

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ばたばたと右往左往するイメージ