今年も数頭、軟口蓋裂の子馬を診断して処分した。
生まれてから鼻から乳が逆流する。
そのうち肺炎症状が表れる。
というのが経過。
左写真の硬口蓋(デコボコした部分)の奥に見えるのが軟口蓋。
本当は裂け目があってはならないが、中央で避けてしまっているのがわかる。
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外科的に治療する方法は考案されているが、下顎を左右に割って、舌の横を咽頭が見えるところまで切り分け、可動性の軟部組織の棚である軟口蓋を縫合するという大掛かりで難しい手術になる。
(右図はEquine Surgery 1st ed. より)
解剖学的に正常な馬でもDDSPなどの障害が起こりやすい部位なので、競走馬として成功することは望めず、
牝で、繁殖供用だけでも、というならやってみる価値があるかもしれないが、手術が成功する保証はなく、すでに化膿性肺炎が起きていることが多く、繁殖供用にはこの病気の遺伝の問題もある。
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しかし、ヒトでは外科治療技術のみならず、その後のケアの方法も確立され、たいへん素晴らしい成果をあげている。
(ヒトは、口を開けて鏡を観てもらうとわかるように、軟口蓋全域へ口からアプローチできるので解剖構造的には楽なのだろう。
イヌでも外科治療が行われているようだ。
肉食獣も大きく口を開けることができるし、口でも呼吸できる動物なのでウマより解剖学的に楽かもしれない。
しかし、馬医者も要望があるなら応えなければならない。
鼻から乳を出す子馬がいたら、早めに内視鏡で診断した方が良い。
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午前は後肢にできたEquine Sarcoid(馬類肉腫)の切除手術。
高齢馬で、全身麻酔したくないのでてこずる。
午後は、重種子馬の脛骨近位成長板骨折のプレート固定手術。
治療費の問題で、吸入麻酔せず、手術台も使わなかったので、麻酔覚醒にてこずる。
NHKマイルCを観るどころではなかった。
応援した馬は不利を受けたようだ・・・・・と思ったら、もう1頭は好走してるじゃないか!(嬉)
ヒトと同じ経緯で発症するとすれば治療していただいたおんまさんの仔が環境因子なども克服してレースに出走することもあるかもしれないということなのかなぁ、と考えました。
hig先生は今日のレースで転んじゃったおんまさんも応援していたのですね。怪我はなかったそうですね。
図を見るだけですごい手術ですね・・・!
犬は吻は長いですが大きく開きますね、昔飼っていた犬の口内をなにか治療しようとしたときほとんど180度くらいまで開いたので「(わが犬ながら)犬相こわい!」と思いました^^;
日々の手術すごいです。
遺伝要素があるので繁殖供用してはいけない。とはっきり書いている成書もあります。しかし、どれくらいの遺伝率なのかはおそらく誰も正確には知らないと思います。
競走させるのは難しいと思います。それほど完全に縫合できないはずです。
転倒馬も騎手もひどい怪我ではなかったようです。応援していたのは、別な馬でした。
肉食獣の口の開き方はすごいですよね。耳まで裂けた口。なんて表現しますが・・・・・