真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「野坂なつみ 本番援助交際」(1991『女子大生 わいせつ集団』の1997年旧作改題版/製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/脚本・監督:神野太/プロデューサー:高橋講和/撮影:小山田勝治/照明:白石宏明/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》/音楽:伊藤善之/助監督:藤本邦郎・木村明生/撮影助手:小島裕二/照明助手:五十嵐丈水/メイク:信沢理恵子/現像:東映化学《株》/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/タイトル:ハセガワプロ/協力:日本映機、オノライト、報映産業、フィルム・クラフト、サクラミュージック《SAKURA》、ラストショーカンパニー、にっかつスタジオセンター/出演:野坂なつみ・大友梨奈・渡辺千尋・秋吉貢次・足立修治・平賀貫・金丸和久・大塚秀喜・山口健三・藤本一郎・木村章)。出演者中、山口健三は本篇クレジットのみで、謎の平賀貫がポスターには普通に平賀勘一、平賀貫名義なんて初めて見た。
 ナイトランプにハモニカ音、多分今は社会に出た関口トモコ(野坂)の部屋にて、恋人の橋本トシヒコ(秋吉)が正常位挿入。中途で大きなクマさんから入る事後、橋本が関係のマンネリを棒口跡で難じるのを、トモコは寝たふりでスルーする。消灯して、おピアノが起動する雨の路地。トモコが帰宅すると、友人の白川深幸から手紙が届いてゐた。開封したところ上手い具合に飛び出て来た写真は、深幸(大友)と白川パイセン(平賀)のツーショット。トモコが頬を綻ばせ、田舎の山に“三年前”。悉く回避する気配に不安も徐々に覚えつつ、二番手・主演女優・三番手の並びで線路をほてほて歩くスタンド・バイ・ミーに、六分半漸くのタイトル・イン。子供と動物が主人公の映画は観ないマイ掟にしてゐるゆゑ、スタンド・バイ・ミー実は未見なんだけどね。
 判別する限りの配役、渡辺千尋はトモコ・深幸とトリオ的な森田チカ、深幸の旧姓は今泉。足立修治は、何処ぞの海町にある実家か別荘かよく判らん、兎も角白川の下に向かふ途中、ガス欠で車をエンコさせるユタカ、チカの彼氏。多分葵なり青井の一度きり呼称される苗字が、上手く聞き取れない。山口健三は、酔ひ潰れたか潰した深幸の破瓜を散らす、ある意味山口健三らしいハマリ役。その他男優部に、手も足も出ない。残りは橋本との関係に煮詰まつたトモコが相談の電話をかけた際の、チカが大絶賛それどころでないお相手。白川との間に生まれた因縁の詳細は綺麗に等閑視して済ます、治外法権にヒャッハーなチンピラ二人組、以下仮称ヒャッハーズ。チカのセフレ?とヒャッハーズの間に見切れる、ユタカが給油を果たすスタンドの店員までビリングに名前を連ねてゐなければ、頭数が合はない。
 IEでは見られないエッジ推奨の、エクセス公式サイトの配信動画・エクセス動画。そんな、端から敷居の高いエク動がチョロメだと突破出来ると教へて貰ひ、遠征が一時?止まつて生まれた時間に辿り着けたか手をつけた、神野太「ガッデム!!」(主演:小沢仁志)挿んで通算第三作、ピンク映画第二作。当然、少なくともex.DMMには入つてゐない。当サイトに来るアレな大人のみんなも、エクセスにお金を落とさう!ところで「喪服妻と老人 昇天奥義」(2008/主演:友田真希)以来、暫し名前を耳にしない神野太は、川瀬陽太のツイートによると制作会社が仕出かした金銭トラブルに巻き込まれ、足を洗つたらしい。
 初めて触つてみたエク動は、画面の大きさが―黒縁込みで―四分の一弱のデフォルトと、全画面の二つに一つのみなのと、十秒と一分刻みで後から前から、もとい後にも前にもスキップ可能なDMMプレイヤーに対し、ボタンが再生と一時停止しかないのが激しく使ひ勝手が悪い。上に、エッジを推奨してゐるものをチョロメで開いてゐる所為なのか、画質もどちらかといはずとも低い。それでも、みんなもエクセスにお金を落とすのよ(๑❛ᴗ❛๑)
 映画の中身に話を戻さうにも、戻すほどの中身もないんだな、これが。で終ると、それこそ実も蓋もない。倦怠期に陥りかけた、トモコと橋本の三年前。未だ性行為に慣れぬトモコに橋本が一旦匙を投げての、微妙な空気の中での小旅行。各々ヒャッハーズに犯されたトモコと深幸が、橋本と白川パイセンと改めて結ばれる人を喰つた展開を、橋本とヒャッハーズをシメに行つたユタカに惚れ直した、チカも追走する。へべれけな濡れ場トリプルクロスはそこだけ掻い摘めば流石エクセスな腰の据わつた裸映画にも思へ、回想パート中更に捻じ込む再回想の入りが結構へべれけで、時制は自堕落に混濁。正直スッカスカに薄い物語を、雰囲気ナーバスかセンシティブに矢鱈とマッタリ回す尺。挙句そこそこ以上の三本柱を擁してゐながら、絡みを何ひとつ完遂するまで描かないスカした姿勢は、激しく癪に障る。端的に、裸と映画の二兎を力なく捕まへ損ねた、デビュー当初らしいで片付ければそれまでの、桃色よりも青臭い一作。居間にてヤッたまゝ寝てしまつたチカとユタカの傍ら、白川と橋本が平然と朝食を摂る。正体不明に無造作なカットが、明後日か一昨日な琴線に触れる。何はともあれ、詰まらないのも面白くないのも、見てみないでは判らない、始まらない。

 とこ、ろで。三年前のトモコらが女子大生ぽいのは、明示はされないものの何となく通るにせよ、本番だらうと疑似だらうと、劇中“援助交際”なんて素粒子一粒ほども見当たらない件。幾ら旧作上映に際しての便宜的な新題とはいへ、一本の商業映画の公開題が内容に全く即してゐなくとも別に構はない、世界の清々しさ、プライスレス。


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