真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「喪服妻と老人 昇天奥義」(2008/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/脚本・監督:神野太/企画:亀井戸粋人/プロデューサー:伍代俊介/撮影監督:下元哲/撮影助手:浅倉茉里子/照明助手:塚本宣威/助監督:小山悟/監督助手:伊藤祐太/メイク:榊原美香/編集:フィルムクラフト/制作協力:フィルムハウス/出演:友田真希・佐々木基子・日高ゆりあ・坂入正三・岡田智宏・小滝正大)。
 義理の母の一周忌を済ませ、黒江翔子(友田)と夫・弌郎(岡田)が帰宅する。弌郎は靴を脱ぐや勿論礼装の翔子にむしやぶりつくと、「何でかなあ・・・?」、「昔から、男つて奴は女の喪服姿に欲情してしまふんだよなあ・・・」。懇切丁寧にコンセプトを開陳して呉れるのは天晴な御愛嬌、個人的には、全く以てその嗜好を持ち合はせるものではないのだが。一戦交へる二人は、後れて帰宅した弌郎の父・巌(坂入)に、その模様を覗かれてゐるのを知らなかつた。事後縺れ合ふ夫婦の足と、少しパンした後方に立ち尽くす義父の足下とで状況を説明するカットに、神野太のさりげない妙技が光る。実直な娯楽映画のみが持ち得る、何気な堅実さが心地良い。
 六年後、開巻の夫婦生活は実は夢オチで、しかも弌郎は一年前に亡くなつてゐた。黒江家は母親の七回忌と、弌郎の一周忌を併せて執り行ふことに、かういふ辺りの数字の扱ひも堅い。弌郎の双子の弟・弐郎(いふまでもなく岡田智宏の二役)、弐郎の妻・和美(佐々木)と娘の美樹(日高)も集まる。法要も終り皆で旨さうな握り寿司なんぞ摘んでゐるところに、三男の克三(小滝)が遅れて仙台から駆けつける。その夜無理な妻の求めに応じ、弐郎は和美を抱く。洩れ聞こえるその様子にアテられた翔子は、浴室に駆け込むと激しい自慰に耽る。そんな義姉の姿に克三は劣情を滾らせ、巌は息子に出歯亀の先を越されたことに臍を噛む。
 二月末公開の今作で主演デビュー後、池島ゆたか監督作(×二本)、工藤雅典、佐藤吏と現時点の主演作だけでも五本と、今年のピンク界を席巻してゐる勢ひもある、当代人気熟女AV女優の友田真希。矢張りといふか素のお芝居はどうにも覚束ないが、AV女優として案外長い(2002年デビュー)キャリアにも裏打ちされた、艶技力の方は申し分ない。といふ訳で、熟れた未亡人に熱い視線を注ぐ三人の男達。一方美樹は、藪から棒といつてしまへばそれまででもあれ、実は何故か父親の弟に積極的な想ひを寄せてゐたりなんかする。そんな腰から下に司られた一家の桃色騒動が、特段の踏み込みや映画的完成度の煌きを見せるではないまゝに繰り広げられ、最終的には更に一年後の弌郎の三回忌、再び看板を偽らぬ翔子の喪装濡れ場が、更に何故か巌を終の相手に展開される。佐々木基子と日高ゆりあの絡みはそれぞれ一回づつ―和美には入浴シーンも設けられる―に止(とど)め、残りは友田真希の裸を延々見せ倒す一点突破に潔く徹する構成は、実用的には全く過不足ない。家人それぞれの立ち位置の描写の十全さに、ルーチンワークとまで断じるのは幾分以上に酷な、エクセス・ピンクのエチュードともいへよう一作である。


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