真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「巨乳・美乳・淫乳 ~揉みくらべ~」(1997/制作:セメントマッチ/配給:大蔵映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/プロデューサー:大蔵雅彦/撮影:千葉幸男/照明:多摩三郎/録音:シネキャビン/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/助監督:佐藤吏/撮影助手:池宮直弘/照明助手:多摩次郎/監督助手:広瀬寛巳/タイトル:道川昭/現像:東映化学/協力:木澤雅博・STAR DAST/挿入歌:『ぼくの育つた都市⦅まち⦆』鷹魚剛 詩・曲・歌/出演:槙原めぐみ・館山あかり・風間今日子・杉本まこと・熊谷孝文・荒木太郎・飯田孝男・神戸顕一・北千住ひろし・池島ゆたか・藤森きゃら・木澤雅博・ひろぽん)。
 海岸に赴く、手向けの花を携へた女と三人の男、暗転して“7月上旬―初夏”。ジャズバー店長の飯田孝男と、店の常連客でビリング順にマリコ(館山)と五十嵐(杉本)にカズヒコ(熊谷)の四人が、一月半前泥酔した上での溺死でその砂浜に打ち上げられた、マリコの供養に訪れる。マリコは三月の終りか四月の初めに、現れた時と同様、皆の前から不意に姿を消してゐた。ところで協力の「STAR DAST」は、それホントにUでなくて“DAST”なん?プリミティブな疑念はさて措き、波に花を投げた、そもそも口跡の心許ない館山あかりが海に向かつて「バカヤロー!」した、してのけた瞬間の、曇天に煌めくやつちまつた感。エンディングで使用するのとはまた別の鷹魚剛が流れ、フィルムハウス作のやうな品のないタイトル・イン。ひとつ根本的な疑問が、タイトルでググるとジャケの画像が出て来る、今作のVHS発売。正当に筋を通してゐるとは到底思ひ難い、タカオゴー方面は果たして如何に処理してあるのか、全くのノータッチ含め。フィジカルが手許に残るソフト化でなく、配信なら通るといふ話でもないのだが。あと、池島ゆたかが好きなのか正体不明の鷹魚剛フィーチャーは、確認出来てゐるだけで2002年第三作「猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!」(脚本:五代暁子/主演:葉月蛍)に於いて、より物語に埋め込まれた形で見られる。
 配役残り、“その2ヶ月前―春・5月”。こゝで漸く顔を見せる―最初のカットは土座衛門の背中―槙原めぐみは苗字不詳のマリコ改め、仁科かすみの名前でデビューするAV女優。藤森きゃらがスタイリストで、北千住ひろしがカントク。助監督のひろぽん(広瀬寛巳)が青さすら残しかねないくらゐ若いのが、明後日か一昨日なハイライト、木澤雅博は多分録音部。荒木太郎は男優部のマシーン、ではなくパワフル、尤も造形は大して変らない。風間今日子がかすみを北千住カントクに紹介した、企画物女優部のキクチ安奈。神戸顕一は路上飲みするかすみに声をかける好色漢、かすみと神顕の悶着に、安奈が介入したのが二人のミーツ。“その1ヶ月前―春・4月”、実はマリコでもかすみでもなく、本名は遠野飛鳥が公衆電話からかける、電話の向かうの母親ボイスは五代暁子。新しい人間の登場しない“その1ヶ月前―春・3月”と“そのさらに2ヶ月前―冬・1月”は飛ばして、“前の年の10月・初秋”。池島ゆたかは飛鳥が会ひに行く、五代暁子とは離婚してゐる父で探偵の竹宮、入婿であつたのか。竹宮姓の探偵といふキャラクターは、その後2005年第二作「肉体秘書 パンスト濡らして」(脚本:五代暁子/主演:池田こずえ)と、2006年第三作「熟女・人妻狩り」(脚本:五代暁子/主演:三上夕希)で佐々木麻由子が継ぐ、本家込みでほかにもあるか知らんけど。
 確かに量産型娯楽映画的ではある、過去からも未来へも類作と連関する縦方向の繋がりならばあちこち窺へなくもない反面、あくまで今作単体として触れる限り、終に足が地に着かず首は据わらぬまゝ、木に竹を接ぐアングラフォークで止めを刺す池島ゆたか1997年第三作、映画の自害か。
 その時々で名前さへ変へる、掴み処のない風来坊、当人にも。夭逝後大体四十九日を起点に、マリコだかかすみだか飛鳥の来し方を、断片的にか漫然と遡つて行く。とかいふ、趣向ならば酌めこそすれ。死亡時の状況なり真相は必ずしも兎も角、何せ自ら見つけきらなかつた飛鳥自身の外堀が、家族の存在以上一欠片たりとて埋められるでなく。一種の持ち芸ででもあるかの如く、飛鳥がユカリや安奈に要は限りなく全く同じ要領で上手いこと拾はれては、その時々そこかしこで居合はせた者達と寝る、男女問はず。ふんだんに、主演女優の裸を見せる点に関しては大いに天晴、にせよ。如何せん同じやうなといふか、同じ立ち位置から半歩も動かない展開の繰り返し蒸し返しで話は一向膨らむでなければ深まるでなく、となると半ば当然特にも何も面白くもなく。マリコとの出会ひに、ユカリが情を交したばかりのカズヒコに関する愚痴を絡める。五代暁子にしては最大級に心を砕いた跡を看て取るべきなのか、首の皮一枚流れが設けられて、ゐるとはいへ。しかも、もしくは挙句終盤まで温存した、あるいは温存する破目になつた。槙原めぐみはおろか―色んな意味での―大女優・風間今日子をも擁してゐながら、選りに選つて瀬戸恵子の再従姉妹みたいな、何処から連れて来たのか色気があるのかないのかよく判らない、二番手の濡れ場で締めの濡れ場を敢行するといふか断行もしくは強行する、蛮行が兎にも角にも致命傷。その際の、ユカリに対するぞんざいな扱ひを下手に強調しようとした諸刃の剣で、単なる底の浅さに堕した熊谷孝文のメソッドも既に死んだ映画に鞭打つ、息絶えたのか。かと、いつて。全く箸にも棒にもかゝらない純然たる玉石混合の多い方なのかといふと、決してさうでもなく。導入がへべれけ気味なのは正直否めない、安奈とかすみが出し抜けに咲かせる、百本に一本級の百合の名花がエロくてエモい、天下無双のエロ―ションを轟然と撃ち抜く。たとへば新田栄作に際しての、見易さ乃至シンプルな即物性に徹したプレーンな画とはまるで別人の、千葉幸男による艶のあるカメラが捉へた、槙原めぐみと風間今日子が正しく竜虎相搏つ、オッパイの巨山が四峰連なる極上の絡みは至福の眼福。惜しむらくは、そのエクストリームを序盤で通過か消化してしまふ残念な構成ともいへ、一撃必殺の絡みで十二分な印象を刻み込む、頑丈な裸映画である。


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