真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「W不倫 寝取られ妻と小悪魔娘」(2017/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:加藤義一/編集:有馬潜/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:榎本靖/録音:シネキャビン/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボテック/効果:東京スクリーンサービス/出演:江波りゅう・きみと歩実・あやね遥菜・竹本泰志・津田篤・なかみつせいじ)。
 サド全集とか適当に並ぶ書架を舐めた先の、PC画面にタイトル・イン。何処そこ大学心理学教授の吉永修一(なかみつ)が、当時の学部長を媒酌人に見合結婚して十年の妻・笑子(江波)を、戯れにでもなく鞭打ち責めてみる。いやしくも心理学徒が、所詮文学者のサドを出汁にいはゆるマゾ気質を女にア・プリオリなものと看做す態度には猛烈に疑問も覚えつつ、どエロい江波りゅうの乳出し下着に免じ、然様な些末はこの際さて措く。最初はノリが悪かつたものが、攻守交替するや笑子が俄然ノリッノリになり、最終的には何時もと変らぬ早打ちの吉永が妻を待たず果てた事後。先にシャワーを浴びようとベッドから離れ際笑子が残した溜息に、吉永は地味に衝撃を受ける。その話を聞いた準教授の村木健吾(竹本)が、出し抜けな突破力で尽力を申し出た翌日か後日、吉永が大学の自室に入らうとすると、見知らぬ女が。部屋を間違へたかと踵を返しかけた吉永を、村木が手配した専任秘書・夏目ひとみ(あやね)が引き止める。一方その頃吉永家には、如何にも関根和美らしいアバウトさで面識の有無は語られないまゝに、最初から妙に距離の近い村木が笑子を訪ねる。
 配役残り津田篤は、後述する祥子の同棲相手で、研究員の高嶋信人。それ以外には内トラ一人見切れない純然たるデフォルト、あるいはミニマム布陣。吉永の教授室は兎も角、キャンパス内に模した―つもりの―ベンチが、どう見てもそこら辺の公園にしか見えない画は如何なものか。せめて、すぐ背中が往来でないロケーションを摸索すればいいのに、オープンキャンパスにもほどがある。
 豪快な荒業を繰り出す前作を剛とすると、今回は柔の関根和美ともいふべきNSP“ニュー・関根和美's・ピンク”2017年第二作。剛といふか柔といふか、二作一緒くたに業とでもいふか。映画前半は、吉永のスキャンダル失墜を目論む、村木の夫婦個別撃破。後半も成立する“W不倫”(吉永夫婦)は兎も角、“寝取られ妻”(笑子)も“小悪魔娘”(ひとみ)も全て額面通り揃つてゐる。ところが村木と、実は元カノであつたひとみの本濡れ場を務め上げたところで、三番手はザクッと退場。色恋に関する経験値不足を自認する小心さに基づき、ひとみの解雇を吉永が台詞一言で告げるや、村木に提出するレポートの期限を諸々に忙殺されスッ飛ばし、吉永に泣きつくハーバード大への留学も決まつた才媛・君田祥子役のきみと歩実大登場。足元を見る形で吉永が祥子に疑似恋愛を持ちかける後半は、主演―の筈の―女優も殆ど何処吹く風、完ッ全にきみと歩実が支配する。気がつくと高嶋が準教授に昇格してゐたりする割に、触れられさへしない村木の去就。木に竹を接ぐか手の平を返したハッピーエンドも、藪蛇に濁して絶妙に後味を悪くする。三本柱に恵まれ裸映画的には全く以て安定するにせよ、ブレるどころかある意味綺麗にスライドする軸転移なり、不用意な枝葉は典型的なNSPならぬUSP“ユージュアル・関根和美's・ピンク”。そんな中でも突発的な見所は、ひとみが一度は確かに吉永を籠絡する件。手渡された書類の何処に判を捺したらいいのか吉永が見つけられないでゐると、ひとみが横から体を密着させオッパイをグーイグイ押しつける、のは全然試運転。自らタイトスカートをたくし上げた上で、背面座位の格好で吉永に跨つたひとみが臆面もなくグリングリンしながらええとええとしてのける、今上御大・小川欽也も流石に呆れるかシャッポを脱ぐにさうゐない超弩級の駄メソッドには腹を抱へた。あと、クレジット画面は普通ゆゑ、仕上げではなく恐らく元々の撮影素材の問題か。全般的にといふか正しく全篇、フィルム時代のキネコを彷彿とさせる画質の粗さが目についた、別に懐かしくはない。


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