真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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どすけべ姉ちやん 下半身兄弟
あ行
/
2023年06月02日
「
どすけべ姉ちやん
」(2000『どすけべ姉ちやん 下半身兄弟』の、何時旧作改題?/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督:上野俊哉/脚本:小林政広/企画:朝倉大介/撮影:小西泰正/編集:金子尚樹《フィルムクラフト》/音楽:太刀川彦一朗/助監督:坂本礼/撮影補:水野泰樹/撮影協力:岩田治樹/録音:シネキャビン/監督助手:大石健太郎・躰中洋蔵/撮影助手:田宮健彦/ネガ編集:門司康子/タイトル:道川昭/タイミング:武原春光/現像:東映化学/製作応援:森元修一/協力:広中康人・今岡信治・田尻裕司・女池充・星川隆宣・佐藤宏・鈴木賢一郎・ポパイアート/出演:佐藤幹雄・しらとまさひこ・奈賀毬子・井出ナヲミ・大西裕・川瀬陽太・山崎瞳/ナレーション:江端英久)。出演者中大西裕は本篇クレジットのみで、ナレーションの江端英久が正確には、井出ナヲミと大西裕の間に入る。
タイトル開巻、流石に神奈川から徒歩で来た訳ではあるまいが、しらとまさひこ(a.k.a.しらとまさひさ)が東京の土手を走る。劈頭と掉尾を飾る、江端英久のナレーションが起動、「それは母が亡くなる、ずつと前のことでした」。
母親が亡くなるずつと前に、郷里の父親がサイドブレーキ云々で自分の車に轢かれて急死。横浜で大学生活を送るカワイ健司(しらと)は帰省する金がなく、パチプロの兄を頼るもちやうどその時奈賀毬子とヤッてゐる真最中の、良介(佐藤)もオケラだつた。潔く母親に泣きついて、振り込んで貰へばチャッチャと事済むやうな気もするのは、それだと物語が動かない。二人は良介のパチプロ仲間に、金を無心しに行く。
配役残り、翌年山咲小春に改名する山崎瞳は、最初良介と悶着を起こす喫茶店のウェイトレス・春代、屋号は多分「POKO」。川瀬陽太が、件のパチプロ仲間・木村。兄弟がアパートに辿り着くと木村もヤッてゐる最中で、相手はその日口説いたばかりの春代であつた。とかいふ、ありがちかアメイジングな世間の狭さ。紆余、曲折後。春代を二親等に譲る腹を固めた健司は、サラ金で金を借りソープに、大西裕は素晴らしくそれらしく映る店員。井出ナヲミが、特上と大西裕にオーダーしたにも関らず、健司の前に現れる肉襦袢、誰も特大とはいふてない。終盤まで温存されながら、濡れ場要員といふよりも寧ろ出オチのコミックリリーフとして、遅きに失した三番手が始終の推移に水を差す、量産型裸映画特有の悲劇を巧みに回避する。その他、プロジェク太の画質が壮絶でとかく要領を得ないけれど、「POKO」店内には内トラが投入されてゐるかも。
国映大戦
第五十二戦にして初となる小屋での本戦は、地元駅前ロマンに未配信作が飛び込んで来た、上野俊哉の「したがる兄嫁」第三作。尤も三本目とはいへ、弟も都落ちする無印第一作「
白衣と人妻 したがる兄嫁
」(1998/脚本は全て小林政広)と、その直後を描いた「
したがる兄嫁2 淫らな戯れ
」(1999)に対し、兄と兄嫁の馴れ初め、あるいは兄弟と兄嫁の出会ひを描いたプリークェルの「エピソード1」である旨、ラストの手書き字幕でも爽快に謳はれる。翌年、更にもう一本続く「
新・したがる兄嫁 ふしだらな関係
」(2001)は、ナンバリング二作で弟役の江端英久を兄貴に、今作の兄・佐藤幹雄を弟に据ゑた対偶のやうなキャスティングによる、三人の名前から変つてゐる所謂リブート作。改めて俳優部の相違を整理しておくと、前二作に於ける兄弟と兄嫁が、本多菊雄と江端英久に葉月螢、新の兄嫁は宮川ひろみが演じてゐる。
二三番手を共々一幕・アンド・アウェイで通り過ぎる一方、絶頂を描くのを頑なに拒む据わりの悪さか小癪ささへさて措けば、男優部三冠も達成する、主演女優の裸は正攻法の濡れ場で質的にも十全に量的にもふんだんに拝ませる。そんなに飯が旨いのか、田舎に帰ると佐藤幹雄が体からデカくなるのかよだの、どれだけ壮絶な人生を送れば精々セイガクの間僅か数年で、白土勝功が江端英久になるのといつた類の、児戯じみたツッコミに戯れるつもりもない。ただ、一点如何せん看過能はざる、致命的な瑕疵が。最初は春代の側から―良介でなく―健司にさういふ形で膳を据ゑる、放蕩息子が年貢の納め時で家業を継ぐべく帰郷するに際して、嫁を手土産代りに連れて帰る展開の主要な構造、乃至さういふ感覚が土台肯んじ難い旧弊。誰と誰であれ誰かを誰かの、オプションにするのは間違つてゐる。当時の空気なんてとうに覚えてはゐないが、これがシレッと通つたか、二十世紀。春代の移り身、もしくは直截に尻の軽さについては、何せしたがる人につきもう仕方ない。青いほど若い川瀬陽太に触れるのも、それはそれとしての興を覚えなくもないとはいへ、木村の他愛なくしかない“自分なり”探しも所詮、木に竹も接ぎ損なふか枝葉も枯らすモラトリアムな自堕落。さうかう、あれこれするに。「淫らな戯れ」こそ「スーパースター21」パートを主にエッジの効いたキナ臭さが弾けつつ、そもそも「したがる兄嫁」、そんなに面白かつたのか。一頃の流行りもとうに廃れたきのふけふ、この期に及ぶにもほどのある疑問を、新版公開が惹起する。ピンクならではの椿事が、何気に趣深い。
最後は再び江端英久のナレーションで、「それが兄嫁との、隠された過去の出来事だつたのです」。結局、順にエピソード2→3→1と来て、明後日か一昨日に飛び4以降に連なることのなかつたシリーズ構成に関しては、こゝで実は健司と春代に関係を持たせてゐた、持たせてしまつた風呂敷を、如何に畳んだものか窮したのも否めないのではなからうか。
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