真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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不倫する人妻 眩暈/ビデオマーケット戦
た行
/
2023年06月26日
「
不倫する人妻 眩暈
」(2002/製作・配給:国映株式会社・新東宝映画株式会社/製作協力:Vシアター/監督:田尻裕司/脚本:西田直子/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・増子恭一/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/録音:シネ・キャビン/現像:東映ラボ・テック/助監督:吉田修/撮影助手:田宮健彦・小宮由紀夫・山本宙/監督助手:松本唯史・岩越留美・池亀亮輔/協力:志賀葉一、榎本敏郎、小川満、大西裕、熊谷睦子、坂本礼、躰中洋蔵、城定秀夫、日本映機株式会社、カースタント・タカ、⦅有⦆ライトブレーン/出演:佐野和宏・松原正隆・佐倉麻美・あきのなぎさ・細谷隆広・馬場宙平?・上井勉・小峰千佳・羅門中・朝生賀子・川上寛史?・藤本由紀・佐々木ユメカ)。出演者中、あきのなぎさがポスターには本名義の秋川百合子で、細谷隆広から藤本由紀までは本篇クレジットのみ。といふか画質云々以前に、アホなタイトルバックで日の透けるブラインドに白文字が飛び、俳優部の名前が二人分どうにも読めない、考へろよ。
敗色濃厚な面接を受けて来た、旧姓岡崎の高田千春(佐々木)はエレベーターで、結婚前に勤めてゐたデザイン会社の同僚、兼当時不倫相手の芳村(松原)と再会する。何故か千春が求職中であると瞬時に察した―別の階から乗り合はせて来た―芳村に対し、千春は夫がリストラされた近況ないし苦境をサクッと告白。一旦別れたのち、五年前と番号が同じ千春の携帯に、芳村から復職を勧める電話がかゝつて来る。ポカーンとする、佐々木ユメカにタイトル・イン。
配役残り佐野和宏が、千春の夫・良二、目下CADの資格を取るため通学中。佐倉麻美は千春の元後輩で、その後離婚した芳村の現交際相手・小林美佳。一応独身につき芳村サイドでいふと自由恋愛にせよ、美佳には劇中全く登場しない彼氏が実はゐる。そして良二が千春を外で働かせてゐるのに驚く、秋川百合子の変名のあきのなぎさが良二の前妻・本田博子。主たる離婚事由は博子の仕事、あとこの人は不脱。本クレ限定隊に、可能な限りの整理を試みると。ビリング推定で藤本由紀が最初の画面に映る、次に面接を受ける女で、千春を送り出す面接官は川上寛史?かなあ。松原正隆と大して変らない年恰好の社長含め、その他デザイン会社部―屋号不詳―が、多分馬場宙平?から小峰千佳、トム・ウェイツどの人よ。良二の前を歩く、総合資格学院に入つて行く男女二人連れのうち、軽く横顔を拝ませる男の方はa.k.a.今岡信治の羅門中、背中しか見せない女は、何処となく演出部ぽい佇まひを見るに朝生賀子ぽい。隣のベンチで黄昏る男の姿に、アテられた良二が吸はうとしてゐた煙草をボックスに戻す、矢張り職探しに苦しむ中年男は細谷隆広。凄まじく今更だけど、
らもんなか
て何か由来あるのかな、アナグラムにしては原型が判らん。あと、かつて千春に別れを決めさせた、子供の出来た―当時―芳村夫人の、電話越しの声の主には流石に辿り着けない。
安い月額料金―月極でないと使へない―だと結局一本毎にポイントを消費させる、理に適つてゐなくもないが使用感としては割とまどろこしい、ビデオマーケットと正直早く手を切りたい
国映大戦
。第五十四戦は前作「
姉妹OL 抱きしめたい
」(2001)に続き西田直子と組んだ、田尻裕司第六作。素のDMMが焼野原に刷新された今、ビデマが有難いのは確かに有難いのだけれど。
アメイジングなフランクさで元の職場に出戻つた人妻が、昔の男と焼けぼつくひに点火する。そもそも無職である以外千春と良二の関係にさしたる問題が見当たらず、忽ち芳村によろめくヒロインの姿に偶さかな下心くらゐしか窺へないのが、埋められぬまゝ放置される最外縁の外堀。十九時半にオフィスで乳繰り合ふのかよ、早えなといふぞんざいなツッコミはさて措き、定時退社した会社に謎の理由で引き返した千春が、抱き合ふ芳村と美佳を目撃。良二からかゝつて来た携帯を鳴らし、芳村のみならず気づかれてゐない訳がないにも関らず、千春との絡みで美佳がその点一切通り過ぎる途轍もない不自然さも、下手に堅実な作劇の中では却つて看過し難い。これ、「G線上のアリア」でなくて「
カノン
」かいな。千春のフェイバリットが往来で流れての、終に別れた筈の千春と芳村が、熱いランニング抱擁を交すシークエンスの結構なダサさに関しては、カット自体の満更でもない強度に免じてこゝはさて措く、にせよ。跨ぎで―事実上―締めの濡れ場に突入する、本来ならピンクが一番盛り上がるべき流れに、生半可な一般指向が災ひ、ジャンル映画の限界が透けてしまふのが、田尻裕司にまゝ見受けられる自殺点的な致命傷。佐倉麻美共々、感嘆させられるほどデカいデスクトップを睨みつけるオッカナイ形相を中心に、どちらかといふと努めて綺麗に美しく撮らうといふより寧ろ、飯岡聖英は佐々木ユメカを容赦なく捉へてゐたやうにも、
m@stervision大哥の御眼鏡に反し
当サイトには映つた。所詮この人等に、些末を力で捩ぢ伏せる、強靭な裸映画を望んでも仕方がなく。さうなるとラストの長く回すためだけの長回し―ついでに車道走んなや―が象徴的な、漫然とした一作、であつても全然おかしくなかつたところが。良二も良二で、博子が再就職先の口を利いて呉れる。壮大なラックを同じ映画のしかも夫婦で二発放つ、博子いはく確かに二度とない話に対し、如何にも佐野らしい意固地を拗らせた良二が「自力で勝たなきやダメなんだよ」。これがアテ書きでないなら何なのかといはんばかりの、佐野の佐野による佐野のためのエモーション。脊髄で折り返して命名するとサノーションが、佐野ならではの一撃必殺を轟然と撃ち抜く。
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