真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ペッティング・モンスター 快楽喰ひまくり
や行
/
2022年12月20日
「
ペッティング・モンスター 快楽喰ひまくり
」(2021/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:藍河兼一/編集・VFX:山内大輔/録音:光地拓郎・大塚学/ベロデザイン 造形・特殊メイク:土肥良成/ガンエフェクト:浅生マサヒロ/ラインプロデューサー:江尻大/制作進行:神森仁斗/助監督:谷口恒平/監督助手:吉岡純平・栗原翔/音楽:Project T&K/効果:AKASAKA音効/撮影助手:赤羽一真/特殊メイク・造形助手:李華㬢/ポスター:本田あきら/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:きみと歩実・篠崎かんな・七菜原ココ・加藤ツバキ《特別出演》・安藤ヒロキオ・可児正光・森羅万象)。出演者中、加藤ツバキの特出特記は本篇クレジットのみ。
ピントを外された、“何か”ゐる水槽にタイトル・イン。結論を先走ると下手糞なくさめが、何某か演出企図があるものやら単なる不調法に過ぎないのか、最後まで判別しかねる森羅万象が薄汚れたオーバーオールでほてほて歩いて来るロング。に、全篇通して徒に乱打か濫用される、虚仮脅しの大仰な劇伴を鳴らす珠瑠美主義、縮めてルミズム。国産有機大豆使用を謳ふ「おいしい納豆」の販売員・三沢(森羅)が、小さなクーラーボックス一つ携へ得意の江口家を訪問、結婚三年目のマリカ(きみと)が藁包を三つ買ふ。まあた随分と、のんびりした商売ではある。その夜、マリカの夫・裕樹(安藤)が四日後の週明けからといふと、出し抜け通り越して出鱈目なオマーン赴任を報告、何て雑な会社なんだ。兎も角その日の夫婦生活と、何気に三沢とも交錯する裕樹の出発後、宅配便を持つて来た裕樹と同じ容姿の男(安藤ヒロキオの二役目)にマリカが犯される、ワンマンショーのオカズ妄想を経て。後始末するマリカに、五年の疎遠といふと結婚式にも呼んでゐない妹のユイカ(七菜原)から電話が入る。や否や、何処からかけて来たのか観音様も乾かぬ早さで、二人ともパチ屋のバイトを馘になつた彼氏のミキオ(可児)と、ユイカが収容人数には余裕のある姉宅に転がり込んで来る。傍若無人な妹カップルにマリカが普通にキレる中、裕樹から国際電話が。ユイカ曰く残して来た姉のケアを義兄に頼まれた旨、マリカが不平を唱へると君は一人つ子であつた筈だといふ裕樹は、続けてマリカに、ペットのプレゼントを用意しておいたと告げる。ユイカらに貸したつもりの、子供部屋(予)にマリカが入つてみるとそこには水槽があり、大人と同じくらゐの大きさの舌を常時文字通りべろーんと出した、一つ目で棘の生えた謎の生き物“ベロ”が入つてゐた。何に一番近いかと問ふならば、ガヴァドン幼生かな。
配役残り、矢張りマリカを犯す可児正光二役目の宅配配達員と、裕樹が客死し悲嘆に暮れる、マスカラが溶けザ・クロウみたいなマリカを拾ふ安ヒロ三役目のガテン系。に続く加藤ツバキは、ガテン裕樹がマリカの以前に抱いた、矢張り未亡人の沙月弥生。特別出演ゆゑ、精々下着までしか脱がないものかと思ひきや、オッパイを御披露なさる豪気には軽く驚いた。篠崎かんなはマリカを訪ねる、弥生も組合員証を首に提げるNPO法人「全日本未亡人組合」の、城東地区リーダー・佐藤灯里。2014年発足で三万人弱の加入者を擁する「全日本未亡人組合」が、「
全国未亡人連合
」の後身組織といふのは、坂本太を悼むためだけに吹く与太。その他、加藤ツバキ第二戦の相手を務めるガテン系カニ・クルーズも登場。灯里がお尋ね者であるらしき風情と、ガテン裕樹の正体を埋める。
七月末封切り、とはいへ。事情は知らないが映倫審査を受けたのはその十三ヶ月前、ともなると。凡そ四ヶ月前に公開された「
淫靡な女たち イキたいとこでイク!
」(主演:加藤ツバキ)よりも確実に、先に撮られてゐさうな山内大輔2021年第二作。ベビーブーム・マサ( a.k.a.廣田正興)の「
魔性尻 おまへが欲しい
」(2020/共同脚本:今奈良孝行/プロデューサー:榊英雄/主演:知花みく/二番手)からピンク二作目の篠崎かんなも、2020年七月末で引退してゐる。なので、こゝで
谷口恒平
は継戦するのか!?なんて、脊髄で折り返して色めきたつのは恐らくぬか喜び。
人の言葉をも話す怪生物(CV不明/CはCreatureのC)と、存在するのか否か覚束ない妹。納豆の配達員は、回転式も持つて来る。おどろおどろしく且つキナ臭いサスペンスが、棹の休まる暇もない重量級の絡み絡みを、事実上独り身のマリカが溺れる、自慰イマジンの形で一点突破。効果的に虚実を混濁させつつ、剛腕の裸映画として見事に成立する、前半は。後半、要はハネムーン作戦的な生物兵器の大風呂敷をオッ広げると、第三勢力なのか政府反政府の何れかから分派したのか瞭然としない、全未組の立ち位置といふ結構根本的な疑問には強ひて目を瞑れば、如何にもありがちな結末ながら案外スマートな力業で、映画を大破させもせず綺麗に硬着陸。そもそも無理の多い強奪作戦の立案に関しては、それをいひ始めてはこの手の物語は片端から成立しない。損壊後の人体程度ならば兎も角、銃弾が貫通する特効には不意を突かれた。展開の収束に尺を割かざるを得なかつた結果、締めのシン・夫婦生活を主に、終盤裸映画的な失速は否み難い反面、実は争奪戦に全く絡まない、弥生即ち加藤ツバキが要は概ね木に濡れ場を接ぐためだけに、わざわざカメオ出撃する豪快さが清々しい。神が宿りもしない、微に入り細を穿つ悪弊に戯れるなら穴だらけともいへ、強引な力業は強引なりの絶妙な力加減まで含め、そこそこ底堅い一作。川辺に佇む加藤ツバキとタイトルバックを中心に、引いた画の強さが、そこかしこで映画を救ふ。
尤も、だからベロの食料は人間の粘膜から出る体液だと裕樹から聞いてゐるにも関わらず、餌をやらうとするマリカが所謂バター犬的に表皮を舐めさせるのは、幾らきみと歩実のオパーイ感溢れるオッパイを見せる大義を優先した結果ではあれ、大人の娯楽映画としては些か通り辛いプリミティブなツッコミ処。ひとまづ先にハモニカを吹かせてからで、別に罰は当たらないやうな気がする。あと、介錯役に恵まれなかつた点も酌めなくはないものの、出番自体極々僅かな、二番手の脱がなさぶりが地味に衝撃的。
世にいふ“かういふのでいいんだよ”を極めた覚悟完了のエロ映画、2019年第一作「
若妻トライアングル ぎゆつとしめる
」(桜木優希音と真木今日子もまりかと茉莉花)。正にマリカの扱ひに関して、旧弊なミソジニーが古色蒼然通り越して、古色惨憺たる2020年第二作「
つれこむ女 したがりぼつち
」に続く、マリカ・サーガ第三作。とか、気紛れに掻い摘みかけて。遠くエクセスに遡るか里帰りする幻のプロトゼロ作、2007年第三作「
性執事 私を、イカして!
」(主演:中島佑里)があるのを完全に忘れてゐた。もしかしたら、十有余年に亘る量産的創作活動の末、山内大輔当人も忘れてゐるのかも知れない。
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