真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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痴漢電車 いけない妻たち/素のDMM戦
さ行
/
2018年10月31日
「
痴漢電車 いけない妻たち
」(1992/製作:国映株式会社/配給:新東宝映画/脚本・監督:瀬々敬久/企画:朝倉大介/撮影:斉藤幸一/照明:笹塚ライト兄弟/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:斉藤博/応援:山田菜苗/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:岸加奈子・伊東ゆう子・伊藤猛・蒲田市子・佐野和宏・宵待闇四郎・外波山文明)。
田圃が続く車窓、寝てゐる岸加奈子が目を覚ますと、対面には不遜なグラサンの伊藤猛が座つてゐて、なほかつリーチのある左足はスカートの中に潜り込んでゐた。暫しグリグリだかモゾモゾ、キシカナが密やかに喜悦した上で、ホームに入る電車にタイトル・イン。クレジットと並走して、風の強い物陰―といふほど隠れられてもゐない―でキシカナと伊藤猛が情を交す。中途で事後の渡船船着場、目的地が一応あるらしきキシカナに対し、体躯を持て余すかのやうにボサッとした伊藤猛は、キシカナが別れを告げたにも関らず、ボサッとしたまゝ後をついて来る。その内に倒れたキシカナを、伊藤猛は兄で漁師の外波山文明が嫁の伊東ゆう子と民宿も営む?実家に担ぎ込む。自衛隊は除隊した体の掴み処のない弟に、外波文が匙を投げる一方、無闇な色気のある兄嫁は色気づく。
配役残り佐野和宏は妹とのラジオ体操が日課な、近隣で進むマリンリゾート開発の人夫。脱ぐと案外いいオッパイの蒲田市子が佐野の妹かと思ひきや、当人曰く佐野はお父さん。お父さんだとすると、お母さんは誰なんや。キシカナに執心したり、佐野の周囲に出没したり、兄嫁には言ひ寄られてもみたり。宵待闇四郎は油を売るに終始する伊藤猛の前に辛抱きらして現れる、同僚を通り越した同士。元版のVHSがどうなつてゐるのかは知らないが、正直下手なロングにもなるとそこに誰が映つてゐるのかてんで判らなくなるくらゐ配信動画の画質が派手に悪く、伊藤猛に見劣りしないタッパもある角刈りの男前である、見るから変名臭い宵待闇四郎の正体には辿り着けなかつた。
“系”ならばある程度まだしも、狭義の国映作が月額のピンク映画chには殆ど全く入つてゐない―もしかしてガチで「
未来H日記
」だけ?―癖に、ex.DMMのFANZAですらない、今でも素のDMMバラ売り動画の方には結構ゴロッゴロ入つてゐる事実に気づき、上等だと国映大戦をオッ始めることにした瀬々敬久1992年第二作。商業限定で、通算第七作。平成元年のデビュー後―デビュー作もある―も続けてゐた助監督稼業からは、流石に90年で足を洗つてゐる。話を戻して、結構ゴロッゴロといふのが、ザッと見渡してみて二三十本は下らない。ex.DMMは回避しておきながらといふ辺りの、如何にもお高くとまつたスカし具合が矢張り癪に障らなくもないにせよ、ワン・ノブ・フロンティアスとして足元見られる、もとい突入する所存である。未見のもの、あるいは過去に観てはゐるけれども素通りしてしまつてゐるものは、何でも、あるいは誰のでも見るなり観たい。
「何時かやるなんていふ奴の“何時か”なんて一生来ない、やるなら今しかないんだよ!」。エモい予告篇に琴線を激弾きされ観に行つた「菊とギロチン」は、途方もない映画だつた、
尺が
。若い頃強ひられた窮屈な映画作りの反動あるいはトラウマか、瀬々敬久は自分の企画ともなると際限を見失ふ傾向だか性向にあるやうだが、そもそも対比で論じる筋合のものなのかといふ、至極全うなツッコミに関しては聞こえないプリテンドでさて措くと、上映時間は菊ギロの三分の一にも満たない今作が、どう控へめに見積もつたとて少なくとも三倍は面白い。何気ない会話の端々で何となく外堀を埋めつつ、満を持しての宵待闇四郎投入で漸く全貌をほぼほぼ露にした物語が、俄然唸りをあげ走り始める強靭な作劇。伊藤猛が度外れたストライドで走り、佐野は観念的に彷徨ひ、そして重たい想ひを引き摺るキシカナが、姿を消した男を追ふ。結構な面子を大勢揃へた一般映画にも、引けをとらないどころか俳優部、おまけに画面の強度も勝つてはゐまいか。菊ギロにも和田光沙のサービス・ショットがなくもないけれど、加へてピンクにあるのは、いふまでもなく女の裸。廃屋の窓越しの伊藤猛と伊東ゆう子の後背位は映画的な詩情のみならず、通俗的な煽情性をも十二分に兼ね備へた良濡れ場で、キシカナと佐野が熱戦を大完遂したのち、カット跨いでグン!と引くカメラには度肝を抜かれた。終盤大概差し迫つての三番手は如何せん些か無理筋で、佐野の素性にあへて余白を残した以上、伊藤猛と佐野を繋ぐ線が、必ずしも満足に繋がつてゐるともいひ難い。バキューンバキューン銃声の音効は牧歌的で、エンド・マーク代りの、“一九九二、二、二七”は流石にダサも否めない。詰めの段階で幾分力尽きたきらひもなくはないにせよ、色彩―ないしは色調―と表情豊かな海を背景に、性と政治が滾るドラマはガツンと見応へがある。といふか、蒸し返すと結局三時間もかけて、菊ギロは性も政治も燻り仕舞ひだつたな。
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