真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「団鬼六 美女縄化粧」(昭和58/製作配給:株式会社にっかつ/監督:藤井克彦/脚本:中野顕彰/原作:団鬼六 二見書房刊『濡れた復讐』より/プロデューサー:奥村幸士/撮影:水野尾信正/照明:野口素胖/録音:酒匂芳郎/美術:金田克美/編集:山田真司/選曲:佐藤富士男/助監督:高橋安信/色彩計測:田口晴久/製作担当者:三浦増博/現像:東洋現像所/出演:高倉美貴・伊藤麻耶・大杉漣・隈本吉成・都家歌六・森みどり・江崎和代・宇南山宏/緊縛指導:Dr.ハルマ)。緊縛指導の正確な位置は、森みどりと江崎和代の間に入る。
 にっかつロゴ尻に、鹿威しが鳴る。和装の高倉美貴がゆすいだ手で水を口に含み、楚々と茶室に入る。久我山産業社長令嬢で女子大生の華子(高倉)が、父親(宇南山)と二人で江里子(江崎)をお師匠に週に一度のお茶の稽古。宇南山宏の役名が久我山である辺りに、シレッと煌めく量産型娯楽映画的な遊び心。一転、父娘でおテニス、接頭辞要らんぢやろ。二人がテニスを楽しむカットに、「今度はあの娘だ」、「え、いいんですか!?」と、大杉漣と隈本吉成の聞くから不穏な会話が被さる。高倉美貴のオッパイが悩ましく弾む、スローモーションが何時までも何時までも見てゐられると思へるくらゐに素晴らしい。総尺二時間半中、高倉美貴の弾むオッパイのスローが百分、起承転結は残りか余りでどうにでもせれ。そんな映画を、小屋で浴びてゐたい。
 閑話休題、手前のバラからピントを送る、華子と久我山がテニス後に話を咲かせる茶店。「あの娘に縄の味を教へてやる」と大杉漣の物騒な声は続き、窓の外から抜いた華子の画が、カシャッとカメラのシャッター音とともに停止してタイトル・イン。如何はしく起動する、ペットが堪らない。大学帰り―地方民につきロケーション特定不能―の華子を、プロ責め師の京田宗一(大杉)が結構な街中であるのをものともせず豪快な、水のないプール式に拉致。相棒でカメラ担当の谷(隈本)に運転させた、元々白いのを八割方黒く塗り直したライトバン乗せられた華子は、港湾地区の倉庫に連れ込まれる。
 配役残りa.k.a.小森道子の森みどりは、華子が京田に強要された旅行に行く旨の嘘電話をとる、久我山家お手伝ひ・秋子、一幕限りの完全無欠な脇役部ぶり。「今夜パパに会ひに行きませうか」と、京田は華子をラブホテル「スターダスト」に連れ出す。伊藤麻耶は、そこでの覗き窓越し、久我山から大概ハッチャメチャに責められる若い愛奴・レナ、この人も一幕限りの完全無欠な濡れ場要員。そして、江戸時代より伝はる落語家の名跡―但し目下は空き―の八代目である都家歌六が、一旦倉庫を自力で脱出した華子が拾ふ、イースタンタクシーの運転手。ところで、あるいは実は。二月二十一日の大杉漣に続いてといふいひ方も何だが、八代目都家歌六も、後を追ふが如く今年の三月末に死去してゐる。
 福博の最後の牙城・駅前ロマンが“大杉漣 出演作品”と銘打ち「団鬼六 美女縄化粧」をかける筈が、実際上映されたのは“美女”の抜けた「団鬼六 縄化粧」(昭和53/監督:西村昭五郎/脚本:浦戸宏/主演:谷ナオミ)。とかいふ、どうしたら然様な大惨事が起こるのかタマキューよりも不条理かつデストロイな事態を受けて、観損ねた藤井克彦昭和58年第二作をex.DMMで落ち穂拾ひ。落ち穂拾ひに当たるのか?この場合。とまれルパン鈴木とジミー土田に、前述した八代目都家歌六。昭和の映画ゆゑ当然といへばその一言で事済む話でもあるのだが、亡くなつたのは、大杉漣だけではない。と改めて一通りググッてみたところ、宇南山宏が今作の翌年に鉄道自殺してゐた衝撃の事実にブチ当たつた。
 再度話を戻して、下手に引く傾向が顕著で、高倉美貴の超絶美身に寄らないフラストレーションを募らせるカメラは、ポルノよりも映画を志向したものと強ひて我慢する。不自然に迂闊な親爺が衝撃の再会を果たすラストでは既に、娘は恍惚の彼岸へと跨ぎ終へた後だつた。とかいふ如何にも類型的な物語には、寧ろ清々しさを覚えるべき筋合に思へる。時代など関係ない圧倒的な素材は兎も角、最終的には大根の枠内に留まる高倉美貴のメタ的な箱入り感に関しては、今なほ多いクラスタ諸兄を不用意に刺激しないやう控へる。控へてねえだろ小僧、にしても。本当は正統派の精悍な二枚目であるにも関らず、まるでファインダーを覗いてゐないと他者と満足に接することも出来ないかのやうな谷の造形には、歪んだエモーションが爆裂する期待に琴線を激弾きされた、ものの。三代目“SMの女王”たる和製オリビア・ハッセーを主演に据ゑた、大雑把に片付けるとにっかつ目線では確実に数字を上げることが要求される中、さういふ日陰者ばかりを滂沱の海に沈める方向に映画が振れてみせる訳がなく。良くも悪くも手堅く纏まつた、個人的には永遠に辿り着き損ねた一作である。

 因みに目下も声優・俳優として活動する隈本吉成のプロフィールでは、ロマポ時代は黒歴史扱ひされてゐたりする、いい仕事してたのに。


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