真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「揺れる巨乳103cm」(1989/製作:プロダクション鷹/配給:新東宝映画/監督:珠瑠美/脚本:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:沖茂/音楽:CMG/美術:衣恭介/編集:竹村峻司/録音:協立音響/録音:ニューメグロ・スタジオ/現像:東映化学工業・株式会社/出演:東美由紀・渡瀬奈々・刀根新太郎・嘉見力・須藤伸・あおい恵)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。協立音響も録音になつてゐるのは、効果の誤りか。とか何とか、それどころではなく。
 カッチョいいギターがギュインギュイン唸る中、自慰る尻が漫然と正面を向きオッパイをデローンと開陳する。暗転明けた先は、上下に“abnormal sex”の五連打。流石だ、今ならストロングゼロでもがぶ飲みしながらでないと、こんな映画撮れない気がする。東美由紀つきのVHS題がブツッとタイトル・インして、最初の、といふか最大の衝撃は本篇クレジット、渡瀬奈々とかあおい恵なんて出て来ないぞ。何で斯くも自由なのか、大泉逸郎みたいな気分だ。
 「トラック一杯といひたいのだが」、「その片隅に僅かな身の回り品だけを載せて」、「田舎の高校を出るとエイコ十八歳」、声は渋いプロ鷹ナレーション起動。両親の束縛から逃れるためだけに短大に進学した、要は遊ぶ気全開のエイコ(東)が同級生でルームメイトの、この人は保母志望で一応真面目に勉学するマサコ(上原絵美/石川恵美の旧名義)に生活態度を窘められる。不貞たマサコが街をブラつく頃、マサコもマサコで隣に住む大学生(刀根)をベランダから家に上げての一戦。帰宅したエイコに、情事の痕跡を見つけられる。母親が倒れ、マサコは一時帰郷。マサコが彼氏らしき先に電話をかける度に隣で受話音が鳴るのに気づいたエイコは、マサコを装ひ誘き寄せた刀根新を寝取る。
 配役残り、上原絵美同様本クレに等閑視される井上真愉見は、百合を咲かせる目的でエイコを買ふ未亡人。かに見せかけて、須藤伸が百合畑に乱入し二人でエイコを手篭めにする井上真愉見配偶者、実にタマルミックなシークエンスではある。嘉見力は、誰かしら弾いた直後にエイコとミーツする鉄砲玉・ケン。
 珠瑠美1989年第一作、案外少ない全三作。タマルミのフリーダム演出に劣るとも勝らない致命傷は、オバパーでどすこいフェイスの主演女優。角度と顔さへ撮らなければオッパイは確かに映えなくもないものの、乳が太ければ腹回りも多少太からうと構ふまいとするが如き風潮には、当サイトは断固として与さない。一方、主演女優の面と腹肉を見て流石の珠瑠美も血相を変へ幾分かはヤル気を出したのか、前半のマサコ篇は、別にも特にも全く面白くはないにせよ、第一次井上真愉見パートを挿んでエイコが刀根新と乳繰り合ふところにマサコが帰つて来る修羅場で、霞よりも稀薄な物語とはいへ大袈裟な破綻もなくひとまづ収束する。明けて銃声とともに嘉見力が飛び込んで来た時には、いよいよ以てこの映画は終りだと頭を抱へかけつつ、まさかよもやの木に接いだ竹を魔展開で裏返す力技で井上真愉見と嘉見力を強制連結。だから欠片たりとて面白くはないにしても、とりあへずなラストに到達してみせるのは、珠瑠美にしては画期的。

 ところで、濡れ場でこれといつてアブなプレイを仕出かしてはゐない件?バッカモーン!だからタマルミが風呂敷を畳んでゐるだけ有難いと思ふべきだ。


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