真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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ロリータ喪失/DMM戦
主に渡邊元嗣と、わ行
/
2017年11月23日
「
マリは天使の匂ひ
」(昭和60『ロリータ喪失』のVHS題/製作:日本シネマ/配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:片岡修二/監督助手:高嶋靜子/撮影助手:片山浩/照明助手:田端功/制作進行:池田文彰/美粧:鷹嶋青子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/主題歌“君と天使の風になる”作詩:川上謙一郎・作曲:鈴木智子・編曲:中谷靖・唄:鈴木智子/出演:松田ジュン・彰住響子・藤冴子・杉本未央・ジミー土田・池島ゆたか・金太&ヒロコ・螢雪次郎)。製作の伊能竜は向井寛の変名、監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣。
悪魔のイラストを、真ん中に配せばいいのに右上にチョコンと置いて、馬鹿にシャレオツなVHS題開巻。明けて手前の蝋燭越しに後背位、舞台は安普請な地獄。コードネームの―あるとするならば―含意に辿り着けない下級悪魔・サタンSGW2249(螢)と、魔女(藤)の一戦。線が細い上に今でいふゴスなメイクを施した螢雪次郎が、結構佐賀照彦に見える。大絶賛事の最中にも関らず、サタンに直属デビルの下に出頭するやう獄内放送。左右に地獄の番人(金太&ヒロコ)を侍らせた、池島ゆたかがサタン上司のデビル。といつてモップみたいな赤毛の鬘に、顔はホルスタイン柄の池島ゆたかが、声を発するまでその人とは判らない。地獄の番人に関しては恐らく画面左で尺八を吹いてゐるのがヒロコで、右からデビルとチューしてゐるのが金太か、パッと見二人ともオカマぽい。劇中台詞ママで“馬小屋で生まれたあの捻くれ者”の没後、かれこれ二千年。今回デビルがサタンに下した任務は、西暦二千年に新たなる救世主を産むやう天国が遣はせた新聖母候補を、堕落させての処女懐胎阻止。これまた画期的に気の利いた極大風呂敷を広げてみせたものだと感心しかけつつ、要は、時期的にドンピシャな「ターミネーター」の影響が色濃く窺へると解するのが正解なのか。デビルに指示された、三十分後に発車する地上行の普通列車・地獄69号、ではなく。その次の特急に乗れば間に合ふといふ口車に乗せられ、サタンは魔女と未遂の事を再開。改めてサタンが達すると、テレテレテレテレーンとトロい主題歌起動、高校三年生の杉本真理(松田)が着替へて外出、ショーウィンドウ越しに見初めた、サンタか何かのてるてる坊主みたいなマスコット?を買ふ。
配役残り純然たる四番手濡れ場要員の杉本未央は、真理の姉・良江。嵐の夜、出没したサタンに籠絡される。目新しい機軸として悪魔は処女の血に弱い設定で、そのためサタンのミッションは、周囲をまづ攻略し真理を非処女にする作戦。二枚目ツッパリ造形が清々しく似合はないジミー土田は、真理にガッつく同級生・横島。彰住響子は、真理と同じマンションに越して来た、FM銀座のアナウンサー志望の女子大生・馬場明子。オーラスに飛び込んで来る、シン・マリ役の子役と、背中しか見せない母親は不明。
単独第三作となる、渡辺元嗣昭和60年第一作。非常に壮大かつ魅力的な物語ながら、真理がてるてる坊主を買つたところから、サタンが嵐の杉本家に現れる件の繋ぎは甚だ手際が悪く、展開は序盤から順調に迷走する。サタンが明子なり横島から攻めるのは既定路線とはいへ、電話ボックスの中、悪魔と天使が当人を挟んでポップにせめぎ合ふ一幕は笑かせるものの、ジミ土が不器用な純情のエモーションを撃ち抜き、もせず。根本的に理解に難いのが、主演女優が男優部と本格的に絡むシークエンスに何故か頑なほど尺を割かないまゝに、サタンの姦計がサックサク実るよもやの悪魔勝利エンドには、度肝の以前に拍子を抜かれた。ところがその時、横島と邪に街に消える真理が見たのは。開巻の地獄パートで案外周到に撒いた伏線が見事に着弾する、まさかの大どんでん返しには正方向に驚かされた。いや別に、サタンそこから再始動すればいいぢやん、といふツッコミもしくは疑問は強ひて呑み込むとして。サタンに「それぢや、俺はまるでキューピッドぢやないか!」なる名台詞まで吐かせておいて、何となく国沢実の名前も浮かぶ、三転目が蛇の足気味な最終的なキレの悪さもさて措くとして。必ずしもどころでなく十全ではない演出を、秀逸な脚本が見事に救済した一作。雑な希望を述べると、今からでも遅くないから、といふか今こそなナベの盤石な円熟でセルフリメイクすることは出来ないのかな。らしからぬ与太を吹くやうだが、プラス戦線の決戦兵器を十二分に狙へる弾たり得るのではと、思つてみたりもした。
最後に特筆すべきは、悪魔が神とか天使とかあるいは聖母(予)とか、兎に角悪魔がホーリーな存在に手を出すナベシネマとなると、2000年第六作にしてピンサロ病院シリーズ第三弾「
ピンサロ病院3 ノーパン診察室
」(脚本:中野貴雄/主演:黒田詩織)に、デジタル初陣の2015年第一作「
いたづら天使 乱れ姿七変化
」(脚本:山崎浩治/主演:桜木凛)。何気に十五年周期を採つてゐる―多分ほかには見当たらない、筈―点については、何某か大いなる意思の存在でも感じ取ればよいのであらうか。
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