真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「変態夫婦 とろける寝室」(2013/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/原題:『深いアナ』/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/音楽:大場一魅/編集:酒井正次/助監督:中川大資/監督助手:菊嶌稔章・松井理子/撮影助手:猪本太久磨/照明応援:広瀬寛巳/編集助手:鷹野朋子/タイミング:安斎公一/協力:Import Lingerie Shop KURONEKO/出演:当真ゆき・星野ゆず・沢村麻耶・竹本泰志・津田篤・野村貴浩・なかみつせいじ)。クレジット終盤、急上昇する情報密度に屈する。撮影助手の猪本太久磨は、もしかして猪本雅三の御子息?
 昼休み、河川敷で腕立て伏せに汗を流す平山由紀彦(竹本)に、上司の神林(なかみつ)が声をかける。神林に飲みに行くことを誘はれるも、十四と結構な歳の差再婚したばかりの由紀彦は固辞。その日のプレイに思ひを馳せ、ウキウキ帰宅する由紀彦の姿に続けて殺風景なタイトル・イン。由紀彦を迎へた妻・さおり(当真)は似合はないセーラー服、由紀彦も―竹本泰志的に―初めて見た気がする詰襟に着替へ、先輩・後輩といふ設定でフォークダンスと由紀彦のストリップから寝室を蕩けさせる。一切登場しない前妻とは三年のレスの果てに間男を作られ離婚してゐた由紀彦は、さおりとのセックスを過剰に重視してゐた。そんな最中、見合が決まつてゐるといふ由紀彦の部下・柏木あおい(星野)が、実は処女につき由紀彦に初めての男となつて呉れることを乞ふ。空前の据膳にも関らず、浮気はしないと由紀彦は拒否。ところが、頻発する由紀彦のいはゆる中折れに自身の体に飽きたのかと悩んださおりは、カンフル剤にと由紀彦にあおいを自宅に連れ込むことを公認する。
 配役残り、津田篤は由紀彦が処女を抱いたのだからと、さおりも出会ひ系で調達する童貞。沢村麻耶と野村貴浩は平山夫妻がお世話になる、スワッピングのベテラン夫婦・今井ではなく向井玲子と尚也。沢村麻耶も間違つても貧乳ではないゆゑ、尚也がさおりのデカパイに殊更に垂涎して見せるのは奇異に映る。
 池島ゆたか旦々と、では勿論なく淡々と2013年最終第四作、坦々とといつてもよい。日々夫婦生活の探求に勤しむ、中年男とうら若き二度目の妻。平山夫妻が夜の営みを自画撮りしたDVDをコレクションしてゐる辺りで気付き、以降星野ゆずと津田篤のポジションと行く末に確信に変りつつ、遠征より帰還後グーグル先生に尋ねてみたところ、今作は「本番 《秘》夫婦生活」(1994/脚本:五代響子/主演:泉京子)のセルフリメイクであるとのこと。となると、とならずともあちこち苦しい。正直若々しくはない水風船は泉京子に明確に劣り、年の離れた後妻に夢中のオッサンにしては、竹本泰志は些かでなく色男に過ぎる。逆に二番手は大幅にパワー・アップしてゐるとして、津田篤と黒沢俊彦は造形の微妙でもない差異込みで五分。展開上最大の相違にして致命傷は、ダブル林田が激突する飛び道具も火を噴く、大所帯を動員する「倒錯の館」パートが単なる二対二の夫婦交換に替つてしまふ点、どうしやうもないスケール・ダウンが否めない。ハイライトとなる、倒錯の館に於ける到達感溢れるエモーションも当然不発。濡れ場の連結が自動的に要請される物語は裸映画的に麗しく鉄板であるとはいへ、前作を知る身には、如何せん物足りない一作ではある。かうなると逆に、以前は無用な拘泥に思へなくもなかつた、池島ゆたか監督作百本連続出演を既に達成した、神戸顕一探しの小ネタが絶たれたことも地味に響く。


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