真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「さかり猫三姉妹」(1991/企画:サン企画/製作:Gプロダクション/配給:大蔵映画/監督:市村譲/脚本:夢野春雄/撮影:立花次郎/撮影助手:余郷勇治/照明:隅田照明/照明助手:渡辺登/スチール撮影:最上義昌/音楽:東京スクリーンサービス/効果:サウンドBOX/録音:銀座サウンド《株》/編集:井上和夫/助監督:国沢実/現像:東映化工/出演:風間ひとみ・中川みず穂・山岸めぐみ・えりこ・JASON ANTONIO・野澤明弘・吉沢正二・中田太・竜仁)。照明の隅田照明は、隅田浩行の変名か。
 タイトル開巻、飛行機の画とオープニングにクレジット。成田近辺、車を停め自販機でジュースを買ふ一応派手な外国人ボルガリーノことボルガ(JASON ANTONIO)と、バス停でバスを待つ中条か中條ひとみ(風間)がミーツ。銀座への道を尋ねられた―また随分と雲を掴む話だな―ひとみは、すは交通費が浮かせると気軽に車に同乗。とはいへ幹線道路にすら辿り着けずに道に迷つた二人は、暗くて全然見えないカーセックス挿んでラブホテルに。事後、ホテル代を五万ばかり妹に持つて来させるかと、番号を受け取つたボルガからの電話を受けた三姉妹の三女・夢美(山岸)は、片言の遣り取りを何故か誘拐されたひとみの身代金に五百万と豪快に勘違ひ。次女・希か望(中川)は然程深刻に受け止めるでもなく、以前より付き合ひのある私立探偵・山田ダイスケ(野澤)を頼る。
 配役残り、四番手であることと無造作な名義の割には濡れ場が十二分に尺を喰ふえりこは、山田の彼女、兼探偵事務所のアシスタント。吉沢正二・中田太・竜仁は、夕暮れ時ぽい暗いロングで人数を確認するのが精一杯の三人組、内一人だけ発する声は国沢実。
 何か市村譲を見るかと、サムネに見切れる野澤明弘目当てで選んでみた1991年全八作中第六作。したところが、まあ漫然としたとでもしかいひやうのない果てしなく捉へ処のない一作。一体何しに日本に来たのか三姉妹丼は完成したボルガは、ランダムにブラブラした末に予定されてゐた―らしい―取引をスッぽかしコロンビアには戻らずにアメリカに渡る。同じ便に搭乗する、職業がスチュワーデスであることがラストで出し抜けに明らかとなるひとみが、前後の飛行機カットは昼間なのにセット撮影の機内は暗い無頓着なちぐはぐさの中、ボルガに機内食のデコイを出しからかつて―挙句にそれは希発案―終り、しかも尺は二分強余して。酔つ払つてゐるのかラリッてるのか、劇中最強の美人が勿体ない希のへべれけな造形。文字通りの薮蛇感だけ残す、中条三姉妹に三百万を呉れてやつたとかいふ伊集院様とやら。ひとみと希は何となく兎も角、希の金を胡麻の灰したボルガと、夢美がスナック綾で待ち合はせる完全にスッ飛ばした脈略。ボルガ以前に、市村譲が今作を通して何を描きたかつたのかサッパリ判らない。一切のテーマ性は排し、劇映画風な最低限の体裁はギリギリ何とか辛うじて整へる、整つてないかも知れないけど。無作為と作為のスレスレの境界を危ふく駆け抜ける、案外スリリングな映画術に思へなくもないやうな気がしないでもないとはいへ、如何せん現状市村譲の映画を何十本とこなすことは不可能ゆゑ、如何とも漠然と煙に巻かれるほかはない。といふかより直截には、どうやら俳優部出身の人みたいだが、どうしてこんな市村譲が十五年百本強―jmdbに記載のある活動期間は昭和55~1995―もローテーションを守つて来れたのかとの素朴だか大雑把な疑問も禁じ得ない。量産型娯楽映画が現に量産されてゐた麗しき時代の、巨大なる幹の一部―より正確には枝葉―と思へば興を覚えぬでもないものの。


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