真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「姉妹どんぶり ‐味くらべ‐」(1994『強制わいせつ姉妹』の2001年旧作改題版/製作:キク・フィルム/提供:Xces Film/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:永井日出雄/編集:㈲フィルム・クラフト/助監督:国沢実/音楽:東京スクリーンサービス/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワ・プロ/録音:シネキャビン/現像:東映化学《株》/出演:工藤ひとみ・吉行由美・草原すみれ・武藤樹一郎・白都翔一・樹かず・真央元・板垣有美・港雄一)。
 薮の中、逃げる女と追ふ男の下半身。白都翔一がノされ、ノボルさんに助けを求める女の叫びは届かない。よく判らないロケーションに逃げ込んだ倉石麻衣(工藤)が、目出し帽の二人組(樹かずと真央元)に犯される、オッパイのアップにタイトル・イン。何かを轢いた白いワーゲンから降りた太田(武藤)が、片方のヒールを拾ひ首を傾げたところで哀願する麻衣の悲鳴。完全に犯された後に大丈夫ですかとのこのこ飛び込んだ太田は、兎も角麻衣を保護。倉石家のお屋敷まで送り、名刺を渡し別れる。泣きながら麻衣が風呂で体を洗つてゐると、「麻衣、誰かに乱暴されたんですつて?」と豪快な第一声を投げ何故かレイプ事件のことを知つてゐる義姉(吉行)が浴室に入つて来る。だから乱暴されたばかりだといふのに、吉行由美は後妻の連れ子である麻衣に対し背中流せだ洗へだと高圧的な暴虐三昧。遂に堪へかねた麻衣は、乳も放り出したまま大喧嘩。その後家を出た麻衣を倉石家の多分執事・三枝ノボル(白都)は案ずる一方、吉行由美はお手伝ひの民(板垣)には、戻つて来たとしても家には入れるなと厳命する。ところで当の麻衣はといふと、名刺に自宅の住所とは自営業なのか、太田宅に転がり込み、何でもするから置いて下さいとサクサク膳を据ゑる。
 配役残り、石川恵美のアテレコの草原すみれ(a.k.a.西野奈々美)は、太田が金を借りる平林(港)をパトロンにする女。純然たる三番手絡み要員ながら、順に武藤樹一郎戦と港雄一戦、コッテリ濃厚な二戦を披露する。小林悟夫人の店「RiZ」の表にて、太田が―恐らく麻衣のソープの給料を―三ヶ月分前借りする長身のグラサンは勿論国沢実、アフレコも当人。
 死後小屋でお目にかゝる機会はめつきり減つてしまつた大御大・小林悟の映画を、特にどれをといふこともなくダウンロードしてみる。何はともあれ観るなり見ないことには始まらない以上、それもひとつの、DMMでピンク映画を見る上での醍醐味といへるのではなからうか。とはいふものの、田舎の屋敷―DMMのストーリー紹介には麻衣が襲はれたのは千曲川のほとりとあるのだが、ホントか?―に居場所をなくしたヒロインが頼つた東京の男は、紳士でも王子様でもなく、女を金で転がすオッサンのスケコマシであつた。そもそも二枚目でなければ若くすらない太田相手に、「助けて頂いた貴方に、私の人生も差し上げます」とまで闇雲に突つ込む麻衣がジュスティーヌばりに泡風呂に沈む展開は、腰の据わつた小林悟一流のドライな世界観といへる―やうな気がする―反面、豪快にスッ飛ぶ脈略もある意味安定はしてゐるけれでも別に信頼は出来ないしする必要もあるまい何時もの御大仕事。寧ろ―らしからぬほど十全にフラグを投げた―義姉の悪事が報はれるのは、吉行由美の本格的な濡れ場といふジャンル上最も肝心な要請をあへてさて措くならば、悪徳が栄えない不徹底と思へなくもない。尤も、オッパイでジェット・ストリーム・アタックが撃てる超絶強力な三本柱を擁し、裸映画的には完全に充実する。麻衣と三枝が結ばれ、ひとまづ物語が完結してゐる分、度肝を抜かれるほど放置した工藤ひとみの前御大戦「女子大生 奴隷志願」(1991)よりはマシかと思ひかけて、矢張りそこに至る段取りはズッタズタであるのだから、大差はないなと考へ直した。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )