真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫乱体験 体が溶けちやふ」(2001『女痴漢捜査官4 とろける下半身』の2014年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:加藤義一/監督助手:下垣外純/撮影助手:田宮健彦/照明助手:深川寿幸/録音:シネキャビン/現像:東映化学/大人玩具・提供:《株》ウィズ/出演:美波輝海・風間今日子・林由美香・今野元志・十日市秀悦・田嶋謙一・螢雪次朗)。>シネキャの前に元永斉がスチール担当
 女痴漢捜査官の栗田久里子(美波)が、地下鉄車内にて今野元志の痴漢に被弾。一頻り攻めさせた上で、久里子が現行犯逮捕の手錠を取り出すと今野元志はリモコン状のガジェットで応戦、フル稼働を陰部に押しつけられた久里子は悶絶する。この一件で体の一部が麻痺、いはゆる不感症の後遺症を残しながらも現場復帰した久里子に、痴漢捜査課チーフの吉永純一(田嶋)は新たな任務を与へる。次期首相候補と噂される与党大物政治家・亀橋静太郎(十日市)の交際相手―亀橋は目下独身につき―水野恭子(風間)が、ストーカー被害に遭ふ。何故か恭子は警察への通報を拒み、総裁選を控へ事を大袈裟にしたくない亀橋の意向もあり、事件の捜査に際し隠密組織である痴漢捜査課に白羽の矢が立つたものだつた。イントロダクションに一段落ついたところで、スライド・プロジェクターの放つ光がフラッシュ・バックしてタイトル・イン。恭子の尾行を開始した久里子は、恭子が今野元志に襲はれる現場に遭遇。今野元志を撃退し、リモコン・ガジェットを入手する。装置の精巧さに注目した吉永は、保釈中の天才科学者にして超外科医・根久田判二羽留(螢)に捜査協力を求めるやう提案する。どちらがミイラなのか判らないトゥー・マッチ感は無視するとして、恭子の部屋を盗聴する久里子は、恭子と今野元志が、複数機現存するのか件のガジェットその名もビックリX―この辺りは貫禄のセンス・オブ・ナベ―を使用し強烈な情事に及んでゐることに混乱する。そんな久里子に治療と称した純然たる濡れ場を施しつつ、蛇の道は蛇方便の一点張りで、根久田はビックリXを開発したのは、共生病院に勤務する謎の神経外科医・朝雲あきら(今野)である情報を伝へる。
 全くの余談でしかないが今回の第三百四次「前田有楽旅情篇」は新版のジェット・ストリーム・アタックで、未感想作は一本もないのだが、為にする筆でなく本当にウルトラ・スーパー・ハイグレード・デラックス・ゴージャスな座席に生まれ変つた改装新生有楽を味はひたかつたのと、中身に殆ど触れてゐない前感想をいつそ全面的に書き直すかと、こんちこれまた遥々電車に揺られ木戸銭を落として来た次第である。全四作の女痴漢捜査官シリーズに止めを刺した一作、といふのが恐らく一致する衆目で、一度目の旧作改題当時に、小生もさういふ印象を大雑把に持つてゐた。ところが改めて冷静に観返してみたところ、案外満更でもない。主演女優の全方位的にプリミティブな破壊力に目を覆ふなり塞ぐなりするならば、確かにそこで話は終る。仰々しい名義に透けて見えるよくいへばポジティブな自意識は窺へるものの、美波輝海は然程美しくなければ特に輝きもせず、お芝居の方も辛うじて棒つきれではない程度。とはいへ風間今日子と林由美香、近代ピンクはおろか史上最強をも十二分に狙へる三番・五番コンビにおとなしくクライマックスを委ねる賢明な戦略が功を奏し、物語全体の要所はガッチリ締まる。久里子を弄ぶかのやうに、といふか現に弄びながら、根久田が日常と非日常の境界に揺さぶりをかける件も、女痴漢捜査官といふ設定自体を巧みに回収してみせ見応へがある。意図的に、ではなく何時も通りのナベシネマ水準である点はさて措き、チープでキャンプな見映えに一見失笑ものに見せて、オーラスのバッド・テイストは地味に容赦ない。となると、ナベシネマ・オブ・ナベシネマな娯楽活劇の第一作「女痴漢捜査官 お尻で勝負!」(1998/脚本:波路遥/主演:工藤翔子)。痴漢要素は薄いけれども正攻法サイコ・サスペンスの第二作「女痴漢捜査官2 バストで御用!」(1999/脚本:波路遥/主演:工藤翔子)に、m@stervision大哥大絶賛の第三作「女痴漢捜査官3 恥情のテクニック」(2000/脚本:武田浩介/主演:蒼生侑香里)。実は女痴漢捜査官は四打数四安打の、稀有なシリーズであつたといへるのではなからうか。

 ここでいい機会に、美波輝海の全六戦を振り返る。初陣は北沢幸雄の「股がる義母 息子の快感」(2001)で、第二戦が今作。翌年の最高傑作「美人姉妹の愛液」(2002)で短い実働期間を終へたものかと思はせて、五年後「特命シスター ねつとりエロ仕置き」(2007)に大貫あずさ名義で電撃復帰。以降も小山てるみと再び名義を変へ、「喪服の女 熟れ肌のめまひ」(2008)、「愛液ドールズ 悩殺いかせ上手」(2009)と二作に出演する。m@ster大哥はナベが匙を投げたが如く書かれておいでではあるが、これで意外と、美波輝海は渡邊元嗣に可愛がられてゐたのかも知れない。
 地味に容赦ないバッド・テイスト< あきらから切除したマンコを、亀橋の口唇部に移植


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