真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴漢とストーカー いじられた秘部」(2001『女痴漢捜査官4 とろける下半身』の2005年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/玩具協賛:《株》ウィズ/出演:美波輝海・林由美香・風間今日子・田嶋謙一・十日市秀悦・今野元志・螢雪次朗)。
 囮痴漢捜査官の栗田久里子(美波)は、捜査中秘部に入れられた謎の器具により不感症になり、休職してゐた。復職した久里子の最初の任務は、大物悪徳政治家・亀橋静太郎(十日市)の愛人・水野恭子(風間)を、ストーカーの朝雲あきら(今野)から保護するといふ任務であつた。
 反省してイントロダクションはここいら辺りで止(とど)めるが、渡邊元嗣にしてはおふざけの度合ひの比較的―普通の監督からすれば十分マキシマム―小さい、新東宝で撮る際に得てして撮りがちな、成功してゐるところをあんまり見た覚えがない基本非コメディ路線のサスペンスである。
 この映画、何がどうだといつて主演の美波輝海に尽きる、といふか詰まれてしまふ。美しいだ輝くだと、名前だけは徒に大仰だが、まあ華のないこと華のないこと。何でこんな女が主演を張つて、林由美香と風間今日子が脇に回つてゐるのだかさつぱり判らない。とはいへ改めて考へてみれば、これこそが、かういつた状況にあつての仕事こそが、林由美香―と風間今日子―といふ女優の真骨頂である、ともいへるのではあるまいか。
 抗弁の効く理由、抗弁の余地もない理由によつて水準以下の出来に成り下がつた、幾多のピンク映画を最悪その出演シーンだけでも最低限形を成して救つて来た、正にさうしたところにこそ林由美香―や風間今日子―の仕事の真の価値はあるのではないか。映画女優として数作の決定的な代表作、必殺の名作に恵まれるのは勿論重要で、いふまでもなく素晴らしいことである。確かにそれはそれで結構なことではあらうが、林由美香―に風間今日子―のやうな、やゝもすれば埋もれかねない戦績にも矢張り同等な、時にそれ以上の値打ちがあるとしたら。さう考へるならば、林由美香といふ映画女優は決して数作の伝説を残して、短い全盛期を強烈に、猛烈にスタンピートして駆け抜けて行く類の女優ではなかつたのだ。何時まで経つても、仮に数年ピンクから離れてゐた者が、久し振りに帰つて来て観てみたところが未だに出てゐた。ちよつと小皺は目につくやうにもなつたけれど、それでも何時まで経つても若かつた、可愛いかつた。林由美香には、さういふ女優人生が相応しかつたのではなからうか。いふても詮無い繰言は千も承知の上、私はさう思ふ。少々歳は取つたとて、時代を忘れるかのやうに銀幕の中から私達に微笑みかけて呉れる、勝手に変つて、勝手に移ろひ通り過ぎて行くこの浮世の中で、何時までも変らない存在であり続けて欲しかつた。さう思ふ時、そのあまりに突然で、あまりに早過ぎる死は、殊更に哀しい。

 といふ訳で、今作の感想は何処に行つた?


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