真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻淫熟 ダブル性感帯」(2001『若妻快楽レッスン 虜』の2013年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/脚本・監督:渡辺護/企画:福俵満/製作:深町章/撮影:鈴木志郎/編集:田中修/助監督:佐藤吏/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:里見瑤子・永井努・佐々木ユメカ・かわさきひろゆき・佐倉萌・岡田智宏・門前忍)。出演者中門前忍は、本篇クレジットのみ。
 テレビ局勤務のドキュメンタリー・ディレクターである夫(岡田)の東南アジア出張中、新婚八ヶ月の若妻・工藤舞(里見)は高校時代の親友・洋子(佐々木)がカラオケバーを営む山間の田舎町を訪ねる。舞の欲求不満を看破した洋子は初めてではない百合の花を咲かせ、自身のパトロン・村木(かわさき)も舞に宛がふ。その件、床の中一人で遊ぶ舞が気づくと直ぐそこまで村木が迫つてゐたなどといふシークエンスは、幾ら何でも粗雑に過ぎる。一方、奴隷のやうに洋子に傅く洋子の店のナイーブなバーテンダー・晃(永井)は、洋子が母親に似てゐること、その母親を犯しかけ家出した末に洋子に拾はれたことを、大して面識もない舞に語る。そんなディープな話出し抜けに切り出されても、普通聞く耳持たないよね。
 配役残り佐倉萌は、洋子の店「ちよ PART Ⅲ」のホステス・明美。この名義での監督作もある、渡辺護の変名である門前忍はちよ店内カットに於いて洋子が相手する客、明美が対する二人連れは不明。
 “ピンク映画黎明期を支えた巨匠”―新東宝公式配信頁より―渡辺護十二年ぶりのピンク映画帰還作。今回今作を観たのは八幡の前田有楽で、因みに次作は、先週小倉名画座に新版が来てゐた「義母の秘密 息子愛撫」(2002/主演:相沢ひろみ)。個人的にはピンクを観始めて間もなく、淫タクに一人で熱狂してゐた―今でも一人だが―頃なので、当時の受け取られ方なり何なり雰囲気は全く覚えてゐない。本丸に話を戻すとこれ百合か?無粋なもので申し訳ないが何かの花から自ら股を開き股間を晒す里見瑤子の下半身にオーバーラップする開巻にまづ、清々しいまでのアナクロぶりに苦笑する。里見瑤子は兎も角、佐々木ユメカは正直殆どギャグ感覚の、セーラ服の二人がキャッキャ戯れ合ふ女学生時代の回想パートも、遣り口自体が特殊な訳でも決してない割に、不可思議なほどに古めかしい。そこまでは、微笑ましさの範疇として。髪形が軽いと永井努が結構真央はじめに酷似して見える、晃が振り回す徒な重さで薮蛇な大仰さを醸し出しつつ、これ要は、旦那の出張中に火遊びを楽しんだ人妻が、マキシマムの刃傷沙汰が起こつたにも関らず再び元の日常にケロッと復帰する、如何にも人を喰つた話なのではなからうか。さういふものを誰それ先生のお撮りになつたものだからと有難く押戴く心性は、残念ながら今も昔も持ち合はせない。ルーズなルーチンがグルッと一周してアヴァンギャルドなりパンクの領域に突入しかねない、大御大・小林悟や今上御大・小川欽也、最強の小屋の番組占拠率を誇る無冠の帝王・新田栄らにツッコミツッコミしながらも生温かく接する愉悦を、寧ろ俺は選ぶ。粗雑に総括すると全盛期を知らない不勉強な若輩者にとつては、渡辺護のピンク映画少なくともラスト三作は、他と比較して明らかに重く扱はれる、その名前の大きさを実感させるものでは必ずしもなかつた。

 洋子宅が御馴染み水上荘であることはm@stervision大哥のレビュウを通じて広く知られるところとして、現代的な問題は、水上荘公式サイトのドメインが切れてゐる件。

 以下は再見に際しての付記< 明美が接客する二人連れ、小用に立つのが佐藤吏で、明美を執拗に口説くのは、どうもアテレコ臭く聞こえる福俵満


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