真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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プライベート・レッスン ~家庭教師の胸元~/DMM戦
か行
/
2013年09月19日
「
プライベート・レッスン ~家庭教師の胸元~
」(2001/製作:フリーク・アウト?/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:樫原辰郎/撮影監督:鈴木一博/助監督:城定秀夫/撮影助手:岡宮裕・大久保礼司/監督助手:伊藤一平/ネガ編集:フィルムクラフト/録音:シネ・キャビン/スチール:佐藤初太郎/音楽:黒澤祐一郎/効果:梅沢身知子/現像:東映化学工業/フィルム:愛光/協力:劇団ひぽたま・シバテック・ナック/出演:南あみ・榊うらら・徳蔵寺たかし・SHIHO・とも)。
ダウンロードした動画再生はトブほどの強い光が時折当てられる中、シーツに包まれ眠る榊うららの体に、男の手が添へられる。イメージ風に三分四十秒絡みを見せた上で、ある意味信頼の夢オチ。少女の部屋にはダーッをする猪木と、BI砲のポスター。ベッドから転げ落ちた藤野か富士野愛(榊)が、半分以上起きてゐない状態で寝返りを打ち肌蹴た背中にタイトル。やるな!要は
前作
で使用したのと同じネタではあるのだが、画期的に見せ方が洒落てゐる、ピンク映画史上に残る名タイトル・インといへまいか。
和田山大学大学院生・新島か新嶋薫(南)が、ショー・ウィンドウに張りついたまま左から右にパン。また南あみのファースト・カットが超絶、既に俺の中で、今作は永遠だ。ちやうどお金が入用なお年頃のところにかゝつて来た朗報に、薫は嬉々と対応する。声しか聞かせぬ父親(国沢実)による愛のイントロダクション噛ませて、薫は高校中退後大検を受けるとはいひながら、漫然と日々を過ごす愛の家庭教師をすることに。徳蔵寺たかしは、家庭教師を始めるや逆質問を投げて来た愛に薫が白状する、正確には“元”カレ・深尾コウジ。院に進んだ薫に対し、こちらは社会人。事の最中―濡れ場の冒頭布団から這ひ出る瞬間の、南あみの尻の肉感が堪らない―深尾の携帯に浮気相手からの電話が入り、三年続いた関係はあつさり終る。そのことを思ひ出し河原で薫がジタバタしてゐると、水路の向かう側には上手いこと愛が。未成年であることはさて措き愛が買つて来たビールで励まされるも、酔へば酔つたで、薫は絡み酒。尤も、南あみが為すことは何でも狂ほしいほどに可愛らしいゆゑ許す。今度は、意図的に特定を拒んでゐるやうにしか思へない名義のともが、愛が高校―に行つてゐた―時代に片想ひした堀田勝也。愛の回想、とものファースト・カットが、いきなり土手でドリブルの練習をしてゐるだなどといふ、三十年一日の石化したクリシェぶりは流石にもう少しどうにかならんものか。勝也は家庭の事情で高校を中退し、少し遅れて自分の進むべき道なりあるべき姿を見失つた愛も、後を追ふ訳ではないにせよアタシの事情で高校をやめてしまつたものだつた。
配役残りSHIHOが、深尾の浮気相手。SHIHOとのデート中も深尾が想起するのは、心を残す薫のことばかり。そのまま薫との濡れ場にまで突入し、深尾がフと我に返ると体の下でアヒンアヒン喘ぐのはSHIHOだつた。といふのは幾ら三番手とはいへ、あんまりな扱ひだと思へなくもない反面、じわじわスリリングな別れのバドミントンは演者の資質も考慮するとなほのこと、奇跡的な名場面。しかも何と三分の長回し、何だかもう、どうかしてゐたとでもしか思へない。徐々に快活さを取り戻して来た愛は、スナック「ポッケ」で働く勝也と再会する。ここでマスターの石動が、まさかの樫原辰郎。告白する腹で来店した愛の決意を酌んだ石動は、池さん(池島ゆたかの愛称)と浅草東映に国沢実四作前の薔薇族「ミレニアムZERO」を観に行くと席を外す好アシスト。その際の、気の利かない長髪客は城定秀夫。
故福岡オークラにて結構な回数観てゐるものの、偶々未感想につきDMM戦を挑んだ、無印国沢実2001年全四作中第二作。プライベート・レッスンがてら、姉妹のやうな大学院生と高校中退娘とが、互ひの恋路に背中を押し押されるキュートで甘酸つぱい青春ピンクの名作。SHIHOとはキレた深尾と再会した薫が、ここも長く回して画面遥か奥で捕獲されたかと思へば、次のカットでは即ベッド・イン。自堕落に憂鬱な深尾の造形も踏まへて、南あみは相手役とシークエンスに恵まれず、榊うららは映画を背負はせるには心許ない。そもそも、咲き誇る百合への飛躍を埋める努力は清々しく放棄。大穴に事欠かない筈なのに、全てがキラキラと輝いて輝いて見えて仕方がない。平板な出来不出来なんぞこの際どうでもいい、温かいエモーションが、穏やかに満ちる。大好きな南あみが画面に載つかつてゐるから、と片付けてしまへば元も子もないのかも知れないが、それだけではなからう。女優を最も美しく撮る映画監督は、少なくともピンクのフィールドでは実は国沢実であつたのではないか、そんな思ひも強く過ぎる一作。否めないのは、レガシー感。
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