真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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近所のをばさん -男あさり-/DMM戦
浜野佐知(的場ちせ)
/
2013年09月16日
「
破廉恥をばさん -欲しくてたまらない-
」(1994『近所のをばさん -男あさり-』の2000年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志・小山田勝治/照明:秋山和夫・蛭川和貴/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:女池充・戸部美奈子/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:斉藤秀子/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:辻真亜子・石原ゆり・扇まや・平賀勘一・甲斐太郎・栗原良)。
主演女優がここでは声しか聞かせぬ甲斐太郎に尺八を吹く、イメージ風の絡みにて開巻、口内射精のストップ・モーションでタイトル・イン。のつけからげんなりしたのは個人的な性癖ないしは未だ至らなさ―生涯到達叶はずとも全く構はぬが―としても、浜野佐知は敵がどうあれメガホン捌きを弛めはしない。
人目を憚らぬどころでもなくベッタベタに破廉恥な様子で寄り添ひ歩く片倉(辻)と甲斐太郎(別にヒムセルフでも問題はない)の姿に、八百屋の仙波(栗原)と妻の香織(扇)は呆れ顔。所変つて小田急電鉄小田原線の経堂駅に、キャンバス・バッグを抱へた石原ゆりが降り立つ。経堂駅が、旦々舎の最寄駅なのか。片倉の娘である桃(石原)は、旦々舎に帰宅。ところで旦々舎は片倉家でも何でもなく、買手がつくまで、母娘で雇はれ管理してゐるだけ。すると片倉は、甲斐太郎と非大絶賛交戦中、桃はポップにうんざりする。今時の自画撮りならぬ自画描き、通ふ美大の課題で自らの裸身をスケッチする桃に甲斐太郎が如何にも―スクリーンの中の―甲斐太郎らしく下卑た風情で水を差し、桃の焦燥には火に油が注がれる。娘を産む前に父親には逃げられた片倉は、桃に新しいお父さんをと男を取つ換へ引つ換へしては何時も騙され、桃はそんな母親に飽き飽きしてゐた。
配役残りオールバックのセミロングと鼻髭が絶妙な平賀勘一は、捨てたのか捨てられたのかは黙して語らぬが甲斐太郎とは切れた片倉が、懲りずに旦々舎に連れ込む平松。英文学専攻の大学教授、らしい。仙波の八百屋には背の低い量産型中村和彦みたいなのと地味にバックシャンの、通算二人客要員が見切れるのはこれは演出部動員?
浜野佐知1994年全十作中第五作、量産型娯楽映画を本当に量産してゐたこの頃の勢ひは凄まじいのも通り越し麗しくさへあるが、今回注目したいのはそのことではない。特筆すべきは今作が、「シンドラーのリスト」から想を得た結果が何と「
チンポラーのリスト
」になるといふ正しく奇想が天外な痛快作「
近所のをばさん2 -のしかかる-
」(1994)、エクセスが公認する最大のヒット作「
犬とをばさん
」(1995)に連なる、監督:浜野佐知×主演:辻真亜子によるをばさん三部作の第一弾に当る点。因みに、「犬とをばさん」には更に「
新・犬とをばさん むしやぶりつく!
」(1995/主演:野際みさ子)なる続篇があり、栗原良(=リョウ=ジョージ川崎=相原涼二)は目出度くこれら都合四作に於いて皆勤賞を達成してゐる。流石旦々舎の看板俳優だ、これは公式見解ではない。ついでといつては何だが、レア名義のジョージ川崎と相原涼二に関して改めてここで整理しておくと、確認出来てゐるだけでジョージ川崎の系譜は順に、中村和愛デビュー作「
人妻の味 絶品下半身
」(1997/主演:羽鳥さやか)。浜野佐知1997年全十三作中(一本目は薔薇)第六作「
白衣のをばさん -前も後ろもドスケベに-
」(1997/主演:鮫島レオ)と、続けて第七作「
ねつとり妻おねだり妻Ⅱ 夫に見られながら
」(的場ちせ名義/主演:柏木瞳)。そして1998年唯一作「
奴隷美姉妹 新人スチュワーデス
」(1998/主演:桜ちより)、この年浜野佐知が一本しか発表してゐないのは、翌年公開の一般映画第一作「尾崎翠を探して 第七官界彷徨」の撮影に入つたからである。同じく相原涼二の系譜は、中村和愛第三作「
新任美術教師 恥づかしい授業
」(1999/主演:小野美晴)。jmdbにはVシネ二本(1998・2000)と片岡修二の「酔夢夜景」(1998)に出演してゐる相原涼二の項目があるけれども、そちらの方を知らないので同一人物か否かは不明。
話を戻して、
てつきりオッカナイ女房を尻目に母娘を天秤にかけた仙波が、
何故かキラー・カーンに似た方を選ぶ
倒錯し倒した物語になるのかと思ひきや、母親―の男の趣味―に反発する娘が、男の化けの皮を剥ぎ母の目を覚まさうとする、旦々舎の割には恐ろしく在り来りな展開に収束してしまふ。栗原良も傍観者にしては徒に難渋な程度で、二番手を半分と三番手の濡れ場を介錯するほかは、特に何をするでもない。眉根に溝のやうな深い皺を刻み込み、「どうしてかうなつたんだ」と闇雲に苦悩する、御馴染みの見せ場が不発なのは大いに残念。一体俺は、ピンクに何を求めてゐるのか。そもそも、石原ゆりは兎も角前後に控へるは辻真亜子と扇まやといふのが、裸映画的にこれまた随分と狭き門だなとは、好き好みの問題でもある故あへてさて措く。但しまさかの百合を、美大の課題に着地させるアイデアは非常に洒落てゐる。さう来たかと、思はず膝を打たされた。
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