真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「人妻13人乱交パーティー」(1992『人妻13人いんらん比べ』の2007年旧作改題版/製作:伊能竜/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/撮影:稲吉雅志/照明:柴崎江樹/編集:酒井正次/助監督:水野智行/監督助手:駒場三十郎/撮影助手:斉藤明/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:橋本杏子・石川恵美・小泉あかね・南城千秋・千秋誠・望月あゆみ・高円寺しのぶ・杉下なおみ・如月弥生・植木かおり・中山久美子・山本竜二・芳田正浩)。出演者中、南城千秋は本篇クレジットのみ。逆にポスターには、俵ひとみが紛れ込む。ほかに千秋誠と中山久美子が、ポスターでは千秋まことと仲山久美子。仲山久美子は、仲山みゆきに引き摺られてない?製作の伊能竜は向井寛の、脚本の周知安は片岡修二の変名。今回新版ポスターでは、何故か駒場三十郎が監督助手から助監督に昇格してゐる。駒場三十郎といふ如何にも感漂ふ名義も、恐らく変名ではなからうか。最後に照明の柴崎江樹が、ポスターでは御馴染伊和手健、こちらは逆にカミングアウト?
 新婚の園山(山本)は新妻・明子(橋本)に夜の作法を仕込み最中で御満悦の一方、部下の倫子(小泉)と不倫関係にもあつた。アクティブな倫子に誘はれ、園山は女十人VS男三人からなる色んな意味で壮絶な乱交パーティーに参加する。恐る恐るその場に足を踏み入れた園山は、パーティー参加は五度目といふ轟(芳田)・悦子(石川)夫妻と対面し、それぞれのパートナーを交換することになる。極私的にツボに入つたのは、女同士も当然含め、銘々がペアを作つての人海戦術を極めた宴がスタートするや、総勢が13=2×6+1人といふことから、あぶれた一人がそれでゐて中央でオナニーしてゐたりなんかするのが妙に愉快だ。頭数だけは無闇に並べた文字通りの乱交シーンは、乱交ですねといふ以外の感興も別に湧きはしないが、途中から一人減つてはゐないか?その辺りすら、最早判然としないだけの迫力ならば溢れてゐる。
 倫子は結婚するといふので別れた後日、帰宅後くつろいでゐると越して来た隣家夫婦が挨拶に来たといふので、玄関に出た園山は度肝を抜かれる。新しい隣人とは、何と轟夫婦であつたのだ。パーティーには愛人と参加してゐた手前、秘密を握られた形の園山は恐々とし、轟の指示に従ふまゝに急な仕事と夜家を抜け出しては、お隣に駆け込み悦子を抱く日々を迎へる。園山が悦子に捕まる一方、外出し時間を潰して来るやうに見せかけた轟は、主人は不在の園山家へと直行する。男は同伴者が居る場合のみだが、女は一人でも参加可といふパーティーに、単騎で参戦してゐたのか、誰か別の随伴機を伴なつてゐたのかは不明ながら、実は明子も乱交パーティーの参加者であつたのだ。とかいふ塩梅で、要は轟夫婦が園山夫婦を各個撃破する攻勢が鮮やかに決まつたところでは感心させられたが、残念ながらそこから先が、特にこれといつて話が膨らむ訳でもない。悦子に対するお勤めを終へ疲れ果てつつ園山が帰宅すると、明子は明子で、轟に抱かれ疲れて既に眠つてしまつてゐる。ヤケクソ気味に電気スタンドの笠を被つた園山が、おどけるショットで無理矢理映画を畳んでしまふ幕引きには、投げ放した印象は確かに否めない。とはいへ、女優の四番手以降は逆の意味で結構攻撃的なものの、小泉あかねまで三本柱の粒は綺麗に揃つてゐるのと、山本竜二のフレキシブルなコメディ演技が展開をそれなりに繋ぎ、然程ダレるでも呆れ帰ることもなく、意外に全篇を通して観させる一作である。後に残るものも、特にはないといつてしまへば正しく実も蓋もないが。

 今作は1997年に、「人妻《秘》パーティー 13人すけべ比べ」といふ新題で―少なくとも―既に一度新版公開されてゐるらしい。十三人脱ぎ役の女が出て来る訳でもなければ、全員人妻でもないのだが。


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