真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ふたりの妹 むしやぶり発情白書」(2008/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:竹田賢弘/撮影助手:鶴崎直樹/照明助手:八木徹/衣装・下着協賛:ウィズコレクション/出演:夏井亜美・華沢レモン・西岡秀記・早川瀬里奈)。
 非自発的失業者の阿部潤一(西岡)は、保険外交員の婚約者・北嶋真琴(華沢)の家に厄介になることになる。婚約者とはいつても、一月前に結婚紹介サービスで引き会はされたばかりでもあるのだが。真琴宅に足を踏み入れた潤一を、ニートでレイヤーの北嶋三姉妹三女・凛(早川)が、さりげなく乳首も隠しきれてゐないバニーコスで早速迎撃する。主演の早川瀬里奈は振り抜いたアニメ声を駆使しつつ、面長の美形に劇中では―入浴中ですらも!―終始巨大なアラレちやんメガネを合はせ、トランジスタな大きさの割には張り物臭いオッパイは兎も角、伸びやかな膝下の細さとは対照的な、尻から太股にかけての逞しさはバニースタイルに一際映える。加へて一点心の琴線を強烈に爪弾かれたのは、早川瀬里奈、股の開き方が画期的にエロい。お芝居だのお話だのは最早ひとまづさて措け、今回の渡邊元嗣は、強力な決戦兵器を手に入れたんだぜ。
 コロッと撃墜された潤一が憚りもなく凛にも鼻の下を伸ばしてゐると、今度は北嶋三姉妹次女で女優の卵の薫(夏井)が、家賃を滞納して矢張り住むところを失つたと、長姉の下に転がり込んで来る。三姉妹の揃つた一軒家に男一人、俄かに完成したハーレムに色めき立つ潤一に対し、これ見よがしに大袈裟な裁ち鋏を持ち出した真琴は、他の女に手を出したりするとタダではおかないと恐ろしい釘を刺す。後日、絶賛主夫生活を送る潤一は洗濯物を干してゐる最中庭の片隅に、三姉妹それぞれの名前の記された、ペットの墓のやうに小さな十字架を見付ける。真琴に尋ねてみたところ、三姉妹の“ 思ひ出したくない過去”とやらが埋めてあるといふのだが・・・・
 長女といふ役柄に徹したか、華沢レモンがおとなし目にすら見えるグッド・ルッキングな北嶋三姉妹が華麗に爆裂する一方、三人各々名義の小墓が登場した際には、よもやナベが又ぞろダークファンタジーの無茶振りを仕出かすのかと身震ひさせられた。回収される気配も見られぬままに、落とされた伏線のことも一旦は忘れかけた頃。十字架を前に謀議する三姉妹の姿すら差し挿みながら、いざ潤一が掘り返してみると昔の通知簿その他が出て来た日には、無茶振り以前の振り逃げかよと呆れ果てた。ところが、夢の一夫多妻転じて大胆な姉妹共有財産制が咲き乱れる展開に普通に感心させられかけたのも束の間、鮮やかな波状攻撃で叩き込まれる奇想天外なオチには大いに驚かされた、これは素晴らしいワンツー・フィニッシュだ。開巻、潤一と中出しをせがむ真琴との濡れ場での、「君つて何時も安全日だね」といふ引き気味の台詞がここで活きて来ようとは!可愛らしい主演女優を擁し、恐らくは渡邊元嗣も嬉々と撮り上げてゐたであらうことが想像に難くはないアイドル映画をのんびりと楽しんでゐたところ、最後の最後で実は計算された脚本が見事に火を噴く快作。自身の頑強なアイドル映画志向をも、渡邊元嗣が観客のミス・リーディングに対して有効に作用させる為に織り込んだものだとしたら、これ程鮮やかな話もあるまい。油断してゐたといふのもあるのかも知れないが、この結末は予想出来なかつた。全くの、そして実に心地良い完敗である。
 複雑な家庭につき―真琴の―両親にも会はぬまま式を挙げようだの、女優とはいへ、これまでこなした役は死体にゾンビだといふ薫に対し、真琴がマトモな人間の役がひとつも無いぢやないのと揶揄する件。そこかしこの小ネタも、振り返れば何れも綺麗に決まつてゐる。全般的に、脚本の完成度も光る一作といへよう。

 「女桃太郎侍」―もうこれも、ナベ自分で撮つちまへよ―のオーディション帰りの薫を急襲する柄の悪いグラサン二人組は、定石からいふと永井卓爾と竹田賢弘か。仮にだとすると、何処かしらで見覚えのある背の低い方が永井卓爾?
 オーラスに付け足される「これは又、別のお話」が、残念ながら今のところ製作された気配はない、待つてます。


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