真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「エロスの冒険 快楽まみれの女たち」(1990『アブノーマル・ペッティング』の2008年旧作改題版/製作:《株》メディアトップ/企画:《株》旦々舎/配給:新東宝映画/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志/照明:田中明/音楽:藪中博章/助監督:毛利安孝/編集:金子編集室/車輌:原隆志/出演:大沢裕子・早瀬美奈・風間ひとみ・吉本直人・佐藤源三郎・平賀勘一・アナル市原・池島ゆたか)。
 女だけでのAV鑑賞会。人妻の朝倉比呂美(大沢)、女子大生の羽田登水子(早瀬)、スナックママの木原雪絵(風間)はひとまづ興奮しながらも、だが然し不満足を覚える。更なるエキサイトを求めた女達は、一ヶ月後の結果報告会での再会を期しての、銘々が性の冒険に入ることを決める。登水子は夢の三段締めを可能とする膣圧アップを求めて体力増強に励み、比呂美は専攻は不明なものの学者といふ設定の夫・麻樹生(アナル市原/AV男優・監督である市原克也の別名)に相談してみた結果、重力の呪縛から逃れるべく、浴槽内での擬似無重力セックスに挑む。一方雪絵は大量のバイブを導入しつつ、女には男よりも体に開いた穴がひとつ多いことに着目する。
 女達がアクティブな性の探求に奮闘する、浜野佐知にとつてはらしいことこの上ない筋立てを手に、映画はこの先快調を通り越して走り出す。微妙に服を着たままなのが煽情性の喚起以外には意味不明な、狭い風呂でのバーチャル無重力は見るからに形にならず、趣向を変へた夫婦生活に呑気に満足し眠る麻樹生に対し、比呂美の欲求不満は募る。書店でフと手に取つた上野千鶴子『スカートの下の劇場』(初版1989年)内に紹介されてあつた、大陰唇の大きさが女の優劣を決するといふ社会に触発された比呂美は、耳飾をプッシーリングに代用しての、自らの大陰唇の肥大化に取り組む。雪絵は更に大胆にもバイブを電極つきのものに改造すると、上の口と下の口とを通して体に微電流を流す、などといふデンジャラス極まりない荒業に挑戦する、かまちるぞ。対して三段締めを手に入れたところで、申し訳ないがそれはその際気持ちいいのは貴女ではなくして俺達の方ではないのか?といふそもそもの根本的な疑問を残す登水子は、以降大した活躍を見せることは別にない。
 起承転結でいふと承部が分厚く膨らんだところまでは良かつたが、それ以降が失速してしまふ。雑踏の片隅といふか外れたところに、比呂美は“フリーでダーティーな人”(池島)を発見する。アルバイトを持ちかける比呂美に対しそのままいふと浮浪者は、「働きたくないから、ここで、かうしてるんだけどな」。ボソッと呟かれる、この鮮やかな名台詞には激しく納得させられたが、そこから比呂美の大陰唇肥大が活かされる訳でも特にない濡れ場に、どういふ意味があるのかはよく判らない。加へてホテルでの身元不明の人妻殺害―よくよく考へてみると、身元も判らないのにどうして人妻といへるのだ?―を伝へる報道に登水子と雪絵とが慄くミス・リーディングは、木に竹を接いだ蛇足にしか思へない。挙句に各々の体験が絡められるでもなければ一切深められるでもなく、一応もう一度三人が顔を合はせてみました、といふだけで裸も見せずに尺が尽きてしまふのは全く頂けない。中盤が馬力豊かに充実してゐるだけに、唖然とさせられる尻すぼみに余計に落胆の強い一作である。

 吉本直人は、登水子の彼氏・浅野多加志。佐藤源三郎は雪絵のヒモ・島田宏彦。平賀勘一は、劇中男性陣としては殆ど唯一の積極性を発揮しもする、実棒での二穴責めを可能ならしめる為に招聘される島田の先輩・藤堂真司。比呂美殺害を誤誘導するニュースを読むアナウンサーは、多分若き日の山崎邦紀か。
 今作は2002 年に少なくとも既に一度、「どすけべコンテスト 3人のエロ女」といふ新題で新版公開されてゐる。改めて気付いてみると、アブノーマル・ペッティングといふ旧題に特段の意味はまるでないな。因みに1990年には続篇なのか、「超アブノーマル・ペッティング 異常快楽」といふ恐ろしく混同しさうなタイトルで、山邦紀の監督デビュー作(当時は山崎邦紀名義)も公開されてゐる!続篇ならば、そちらも強力に観たいところではある。続篇でなくとも観たいか。


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