女教師狩り

　「女教師狩り」（昭和57/製作・配給：株式会社にっかつ/監督：鈴木潤一/脚本：斎藤博/プロデューサー：林功《日本トップアート》/企画：成田尚哉/撮影：前田米造/照明：矢部一男/録音：伊藤晴康/美術：金田克美/編集：西村豊治/音楽：前澤晃・安部弘高/助監督：金子修介/色彩計測：高瀬比呂志/製作担当者：桜井潤一/刺青：あとりえ千両箱/出演：風祭ゆき・梓よう子・伊藤京子・井上肇・錆堂連・石神一・石山雄大・翔野幸知・新井真一・原田千枝子・相田麻理子・関かおり）。配給に関しては事実上“提供：Xces Film”か。
　夏の夜の校内プール、忍び込んだ伊藤京子と井上肇が全裸で泳ぎ戯れる。プールサイドに置かれたセーラ服を、何者かの手が盗む。日が明け、プールに浮かぶセーラ服を、教師が棒を伸ばし回収する。校舎の遠景に電話の受話音と共に被せられる、タイトル・イン。
　島崎学園女教師の坂谷島子（風祭）は、名乗らない者から担任する村上緑（伊藤）が、同級生の栗山大介（井上）に犯された旨の告発電話を受ける。一学期最終日、最後の校内放送を終へた放送部の緑は、田中良夫（石神）を煙たがるやうに先に帰す。一方、大介は噂に対する学校側の対応に立腹し、島子に退学届けを叩きつける。放送室に緑を訪ねた大介は、放送設備のスイッチを入れた上で緑を荒々しく抱き、模様を全校に放送する。衝撃的なシークエンスをサラッと通過し、島子は湘南の地にて、雑誌編集者の一郎（錆堂）と不倫の逢瀬。他方大介も、ヒッチハイクで湘南に入る。若者ら（翔野幸知以下四名か）に威勢よく絡んだまではいいものの情けなくボコられた大介に、昼間はテキ屋、夜は居酒屋「天龍」―天竜かも―を情婦の今日子（梓）と営む政治郎（石山）が助け舟を出す。背負つた彫り物もよく似合ふ、石山雄大の地味に抜群な安定感はさりげなくそこかしこを締める。そのまま大介は、政治郎の下に転がり込む。その頃東京では、緑が大介に強姦されたといふ噂は、良夫が流したことが明らかとなる。
　「キャバレー日記」（監督：根岸吉太郎）の助監督挿んで、漢字表記時代の鈴木潤一（＝すずきじゅんいち）昭和57年第二作、通算第三作。因みに田中登・加藤彰・根岸吉太郎・藤井克彦・上垣保朗（＝佐々木尚）・斎藤信幸ら錚々たる名前が並ぶ、「女教師」シリーズの第七作に当たる。表面的な起承転結なり統一的な物語に囚はれるでなく、湿気の強い日本の夏と同様、強烈かつ濃密な一幕一幕で畳みかけて行く始終は、悔しいが現在の生半可なピンクには到底太刀打ち出来まい見応へがある。技術と意欲の如何の以前にバジェットから文字通り桁が違ふ撮影と、昭和といふ時代そのものが有する空気密度との、分厚さなり熱つぽさには歴然としたものを否定し難い。それとタイトル明けのファースト・カットで度肝を抜かれたのが、現代の最前線でも全然通用し得よう、パキパキッと洗練された風祭ゆきの硬質で都会的な美貌。周囲の垢抜けなさと比較するに、当時この人の登場は革命的なセンセーションを以て迎へられたのではなからうか。そのことにこの期に及んで吃驚してみせるといふのも、どれだけロマンポルノを食はず嫌ひしてゐやがるのかといふ話でしかない。男優部に於ける側面的な見所は、jmdbを鵜呑みにするとデビュー作となる石神一。ビリング後位で、既に初陣を飾つてゐる可能性も大いになくはないが。ポップな小物好色漢に一皮剥ける以前の、ムッツリさは変らず少年の青さなりナイーブさを色濃く残した風情は、田中のウジウジしたポジションに素晴らしくフィットする。