真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「快感ヒロイン ぷるるん捜査線」(2019/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:増田貴彦/撮影・照明:飯岡聖英/録音:小林徹哉/編集:酒井正次/助監督:小関裕次郎/監督助手:植田浩行/撮影助手:近藤祥平・森田亮/照明助手:広瀬寛巳/協力:中野貴雄/スチール:本田あきら/選曲:徳永由紀子/MA:Bias Technologist/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:如月生雄/出演:妃月るい・美咲結衣・桜ちなみ・原美織《愛情出演》・小滝正大・津田篤・ケイチャン)。出演者中原美織のカメオ特記は、本篇クレジットのみ。
 レス・ザン・バジェットな、異世界「ハナビランド」のイメージ。アイデンティティを喪失し破滅的な行動に走るルイを、ハルナが諫めるライン風会話。転じて現し世、公園的な原つぱに唐草模様の風呂敷と所謂ピコピコハンマーを背負つた水木ルイ(妃月)が現れるや、松本から家出したルイの両親に娘捜しを依頼された、私立探偵の真島祐二(ケイチャン/ex.けーすけ)も後(あと)を追つて駆けつける。たかと思へば再度矢継ぎ早にルイが待ち合はせてゐた、河田俊雄(津田)が何者かに襲はれ後頭部から出血した状態で倒れ込む。しかも河田はルイに渡す約束になつてゐた、フラワー戦士「シノビーナス」幻の十三回にして最終回のDVDを奪はれてゐた。とかいふ次第で、ハナビランドからやつて来たサクラビーナス(美咲結衣のゼロ役目)とラベンダービーナス(原)が、ドワルダー(ケイチャンの二役目)率ゐる悪の組織「ドグサレンダー」と戦ふ女の子向け低予算特撮番組。であつたものが、低視聴率とスポンサーの倒産とで十二話で打ち切られた、シノビーナスのイントロダクションまで済ませてタイトル・イン。何気な神速を誇る新田栄と比べると幾分以上か以下に粗雑ではあれ、高速かつ情報密度の濃いアバンに軽く意表を突かれる。のと、ルイが正真正銘全篇駆使し倒すハナビランド語が、大体のりピー語。ついでか更にスチールを繋げたシノビーナスイントロに登場する、ドグサレンダーの女怪人は中野貴雄の配偶者である春咲小紅?
 ルイを松本に連れ戻さうとする真島に対し、当のルイは最終回DVDを手に入れるまで帰らないの一点張り。シノビーナスの必殺ならぬ必生技「ヒーリングウェーブ」と称した、要はルイの色仕掛けに当然勿論世界の真理に従つて真島は懐柔。探偵兼のボディガードといふ形で、ルイと行動を共にする格好に。
 配役残り、ぼちぼちピンク第四戦の桜ちなみは、保険証で見た住所を頼りに河田の自宅を訪ねた二人を迎へる、河田の妹を騙る女・ハルナ。どんな服を着たとて隠せまい、琴線にフルコンタクトを叩き込む爆乳の圧倒的な破壊力は兎も角、幾らお眼鏡とはいへ、流石にクリムゾンのボストンはダサいものはダサい。そこを譲るのは、思想の後退であると難ずる。河田が十三話DVDを闇サイトで入手したとの情報を得て、真島はルイを知人のギークでナードな中野孝史(小滝)の下に連れて行く。ここで特筆すべきが、ファンタな造形を施された中野の、レインボーなドレッド風のウィッグ。ほかでも使つてゐるかも知れないが「女痴漢捜査官4 とろける下半身」(2001/脚本:波路遥/主演:美波輝海/a.k.a.大貫あずさ/a.k.a.小山てるみ)に於いて、根久田判二羽留役の螢雪次朗が被つてゐたものと同じブツ。これはネットで見られる今作の予告篇と、ex.DMMで女痴漢捜査官4を何度も見比べて確認した、物持ちいいな!中野が割り出した、闇サイト業者の住所・阿玖芽町十三丁目五番地十七号(アクメの漢字は適当)を、ルイと真島は次に訪れてみる。改めて、こちらは国沢実2015年第二作「スケベ研究室 絶倫強化計画」(2015/脚本:高橋祐太/主演:竹内真琴)以来の五本目となる美咲結衣は、そこで整体院「やすらぎ整体院」を営む榛名智美。美咲結衣が前四回の国沢組含め、五作連続二番手といふ案外離れ業を達成。
 増田貴彦とのコンビで三作目となる、渡邊元嗣2019年第一作。目下確認出来る範囲では増田貴彦脚本ナベシネマは次作までで、2019年第三作では山崎浩治が2016年第二作「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(主演:星美りか)ぶりとなる大復活を遂げてゐるのが地味なトピック、地味でない。
 特オタ女が自らの肉体で男を誑かし、お目当てのお宝DVDゲットに邁進する前半は文句なく完璧。職務上の要請を抱へる真島と、容易に予想される怖い筋の存在に、下手に首を突つ込むのに抵抗を覚える中野。極めて常識的か論理的な男衆の障壁を、ルイがピッチピチの美身で突破する展開は綺麗な説得力を獲得。「美乳夜曲 乱れる白肌」にあつては違和感を覚えなくもなかつた、妃月るいの少々ラウドな嬌声も底を抜いたファンタジーには瑕疵なく親和する。反面、最終話DVDの出処と、ルイが大切にする―オフの面識はない―同好の士・ハルナの正体を巡るサスペンスは、元々脚本がトッ散らかつてゐたものか演出の鈍りかは判らないが、一応映画的ではあるラストまで含め結構ガッチャガチャ。手放しで絶賛するには、如何せん遠い、ものの。正直いふと泣いたのが、失恋に心を痛めたルイがハルナのレコメンドで救はれた、フラワー戦士がドグサレンダーのどうせ私なんか仮面に立ち向かふシノビーナス第八話の件。一撃必殺で涙腺を決壊させる渾身のエモーションこそが、“傷ついてゐる全ての人が救はれる感涙必至のハッピーエンド”に違ひないとルイが予想を通り越して確信する、シノビーナス最終回の内容に仮託した、鉄の信念に貫かれたナベシネマがナベシネマたる所以。桜ちなみの乳も太いが実は余らせた腹肉は見なかつたことにすると、アヤメビーナスとカキツバタビーナスにショウブビーナスをも揃へた、三者三様に三百花繚乱の三本柱は鉄板。クライマックスまで三番手を温存するだなどといふ、平素ならば悪手をも見事に引つ繰り返す、ユリビーナスが爆誕する秀逸な構成も相俟つて裸映画的には磐石の安定感を誇る。結局十三話の中身が明らかにならないのは、わざッと持たせた余裕。渡邊元嗣相手にワーキャー騒ぐほどには当たらないにせよ、ナベシネマの堅調に枕を高く出来る一作である。


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