真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女教師 生徒の眼の前で」(昭和57/製作・配給:株式会社にっかつ/監督:上垣保朗/脚本:大工原正泰/プロデューサー:三浦朗/企画:奥村幸士/撮影:野田悌男/照明:内田勝成/録音:木村瑛二/美術:中澤克巳/編集:山田真司/選曲:伊藤晴康/助監督:村上修/色彩計測:福沢正典/現像:東洋現像所/製作進行:三浦増博/出演:三東ルシア・岡里奈⦅新人⦆・嵯峨美京子・中根徹・堀広道・北見敏之・吉川敏夫・岸正明・小旗拓郎・水木京一)。
 軽く廃墟みさへ漂ふ古い校舎を背景に、体育の授業のサッカーにクレジット起動。校内に入つたカメラが、歩を進めるタイトルバック。英語の授業中の、教室のドアを開けトリの上垣保朗。教科書を朗読する、校名不詳高校英語教師のヨシザワ令子(三東)に、案外ぞんざいな書体でタイトル・イン。一学級優に賄ふ潤沢な生徒部に関しては、潔く白旗を揚げる。凄腕の人が見たら、何処に後年の誰それがとかあるのかな。
 令子に当てられ、教科書を読み始めたシマノ貴志(堀)をリーダー格の酒井拓也(中根)以下、ガールフレンドの久美(岡)。桑田(岸)と名なし悪ガキ要員(小旗)に、若森(古川)の三馬鹿が点取り虫云々と揶揄する。フと調べてみると初陣にして二番手に起用されたオカリナに、以降の戦歴が見当たらない件。ザックリ譬へるならば、縦方向に引き伸ばした相沢知美(ex.青井みずき/a.k.a.会澤ともみ)。閑話、休題。令子が顧問で、冷やかしに来た三馬鹿をテニスには真面目に取り組む拓也が排除する、テニス部の部活を経て。女子職員更衣室のシャワーで汗を流す令子を、拓也と同じジャージなのは多分学校指定の、ストッキングを顔に被つた暴漢が襲撃。令子が誰も見てゐないところで犯された事後、現場には何故かジグゾーパズルがひとピース残されてゐた。
 配役残り、嵯峨美京子は令子の同僚かつ友人の祥子。北見敏之は祥子の恋人・秋山、多分サッカー部の顧問。令子は普通のアパートに住んでゐる割に、秋山が妙にゴージャスなマンション住まひであつたりするのが不可解な所得格差。そして画期的ならしさで飛び込んで来る水木京一が、件のワンピースを携へ、令子が話を訊きに行く玩具店店主。ピースひとつ持参してどのジグゾーパズルのものかなんて、判る訳ないだろ。
 第四作「女教師 汚れた放課後」(昭和56/監督:根岸吉太郎/脚本:田中陽造/主演:風祭ゆき)が地元駅前ロマンに来た流れで、ぼちぼち見進めて行くかとした、全九作で一応括られる「女教師」シリーズ第六作。ex.DMMに全部入つてゐるゆゑ、見る分には容易いとしても第一作のそのまゝ「女教師」(昭和52/監督:田中登)が、何をトチ狂ふたか尺が百分もあるのが正直結構面倒臭い。上垣保朗(a.k.a.佐々木尚)のフィルモグラフィとしては昭和57年第一作、といふより通算第二作にあたり、一方、三東ルシアにとつては初の量産型裸映画。演出部と俳優部、期待の新星を日活が揃へて来た布陣ないし風情も窺へる。
 ロマポの一種お約束事でもあれ、若かりし時分に要はオナペットとしてしこたまお世話になつたイカ臭い思ひ込み、もとい青臭いエモーションにじつくり醸成された闇雲な激賞もそこかしこに見当たりつつ、そもそも強姦された女が、ジグゾーパズルを手掛かりにレイプ犯を自力で捜し出さうとする。だなどと土台頓珍漢な無理筋に貫かれた物語が、特段面白い訳でも別になく。反面、男が立ち去つた後の方が寧ろエロい最初の凶行と、久美に連れて行かれるまんまと鴨葱の体で、令子が日曜日と創立記念日の二連休、矢鱈豪勢な酒井邸に囚はれる。当時観客の精巣を空つぽにしたにさうゐない、轟然と畳みかける怒涛の中盤が大いに充実。屈折した劣情をヒロインが正体不明か御都合的な懐の広さで受け容れる、シークエンス自体は―よしんば歪んでしかゐないにせよ―感動的な締めの濡れ場まで含め、女の乳尻を愛でる分にはひとまづの完成度。端々でズッタズタ平然とカットを飛ばす乱雑さと、締めの濡れ場の、不用意な暗さに加へ距離と構図何れも中途半端な、ヤル気の有無が微妙に怪しいフィックスは頂けないけれど。裸と映画を天秤にかけた場合明らかに裸が重い、ぼちぼちの一作。でも別に構ひはしないともいへ、今作最もメタ的に解せないのが、公式のイントロ―当時のプレスが、シリーズの第10弾を謳つてゐるへべれけさは微笑ましい―から貴志が自閉症とされてある謎設定。精々線の細い、優等生くらゐにしか映らない。女教師が生徒(久美と三馬鹿)の眼の前で生徒(拓也)の尺八を吹かされてゐる体育倉庫に、ぐるぐるパンチばりの原初的な勢ひで実力介入、したはいゝものの。秒殺でボッコボコに返り討たれる情けない貴志の姿は、無体な無様さがグルッと一周する清々しさを呼ぶ。

 それと、前年に勝アカデミー(四期)を卒業してゐる、カメラの前に立つ仕事的には最初期の中根徹が、幼さを残すほど若いのも側面的な見所。


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