鶏肉


Z7 + NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

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父親は鶏肉が嫌いであった。
何でも好き嫌いなく食べる人だったが、鶏肉だけは食べたがらなかった。
母親によると、当時ソ連の航空会社であったアエロフロートに乗ってからだという。

昭和40年代の初めの頃の話である。
仕事でヨーロッパに行くのに、アエロフロートの安い航空券を買った。
海外に行くのは今より遥かに大変な時代で、少しでも安いチケットを選んだのだろう。

ところが機内で出されたチキンが、恐ろしく不味かったらしい。
しかもそれが何度も出たという。
それを食べて以来、チキンが食べられなくなってしまった。
大抵のことはものともしない父親が、食べられなくなったのだから、余程の事だったのだろう。

しかしちょっと食べただけで、それ以前は好きだったものが食べられなくなってしまうというのは、尋常なことではない。
一体どのようなチキンだったのだろう。
半分笑い話として聞いていたが、それが具体的にどのようなものなのか、思い浮かべることは出来なかった。

数年前、あるところで、冷凍保存していたらしいチキンを食べた。
白いささ身であるが、噛んでみると中央部分がまだ冷たかった。
まあいいやと思い食べたが、そのうちその中央部の臭いが鼻につきだした。

噛むと解凍で出たらしい水分が滲み出してくる。
真ん中は生っぽい味がする。
「うっ・・・」
段々と気分が悪くなってきた。
吐き気がして、僕にしては珍しく途中で箸を置いた。

それ以来、僕もチキンがあまり好きではなくなった。
美味しいチキンならいいのだが、少しでも味の悪いものを食べると、あの臭いが蘇ってしまう。
父の経験した食べられなくなる程の不味さって、もしかするとこういうものだったのではないか・・と最近考えている。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (はまぐり)
2018-11-03 11:42:32
通常、生物は同じ経験を何度か繰り返すことによって学習していきますが、食べ物に関しては一度だけの体験で学習することがあるそうです。食べ物の場合は生命にかかわるからではないかということでした。
かくいう私も、10年ほど前にリンゴを食べた後に吐いたことがあり、それ以来リンゴを食べられなくなりました(体質的なアレルギーではありません)。
 
 
 
Unknown (COLKID@会社)
2018-11-03 11:46:20
そうですか。
以前ここに書いたのですが、子供の頃高熱を出した状態でカキフライを食べて、以来カキフライが食べられなくなりましたが、数十年経って急に食べられるようになりました。
不思議なものですね。
 
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