COLKIDが日々の出来事を気軽に書き込む小さな日記です。
COLKID プチ日記
生産-1
Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
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今から30数年前の話であるが、会社で新しく大型の機械を導入することになり、その操作方法を習うために、何週間かヨーロッパの都市に滞在したことがある。
アルプスの山々に囲まれた田舎町で、絵本の中のような素晴らしい世界であった。
日本では知られていない場所で、滞在中一度も日本人とすれ違うことはなかった。
先方が手配してくれた立派なホテルには、はるばる日本から来た僕を歓迎して、日本の国旗が揚げられていた。
まだ圧倒的にヨーロッパの方が進んでいた時代で、何もかもが豊かに見えて、日本との差に驚かされる事も多かった。
毎朝まだ暗いうちに迎えが来て(と言っても真冬だったので、現地では朝8時でも真っ暗で空には星が光っていたが)先方の会社に行き、インストラクターから操作方法を学んだ。
老練な技術者の男性が教えてくれた。
如何にも職人風の、がっしりした体型の白髪のおじいさん(と言っても今の僕より若いのであろうが)であった。
昼食などは工場の食堂で他の技術者たちと一緒に食べた。
その時に、そのインストラクターの男性がこう言った。
「私はこの会社にもう15年いる。長くいすぎなんだ」
「えっ、15年が長いんですか」
「他の連中は平均7年でステップアップして他の会社に行くよ」
それが僕には凄く不思議に聞こえた。
なぜかと言うと、その会社の製造している機械、特にその時導入しようとしていたものは、大きさが10畳間ほどもある巨大なもので、7年程度でマスターできるような代物ではなかったからだ。
単に操作するだけなら、講習を受ければ一通り覚えられるだろうが、実際に運用していくとなるとそうはいかない。
時間が経つにつれて様々なトラブルに見舞われるはずで、7年程度の経験では対処できない。
この手の機械はオンオフのスイッチを押せば勝手に動いてくれるものではなく、その日の気温や湿度、使用する材料のばらつきなど、様々な要因を考慮して調整する技術が必要になる。
何千もあるパーツも、稼動と共に磨耗していくわけで、パーツによって交換する時期も異なり、サイクルが7年以上のものも多い。
機械にはそれぞれ癖があり、それを掌握するだけでかなりの年月がかかるのだ。
車で言えば、運転するだけなら誰でも出来るだろうが、エンジンをばらして調整し直すくらいの技術が必要になる・・ということだ。
7年でオペレーターが入れ替わってしまったら、そういう職人的なノウハウの習得は難しい。
やっと覚えた頃に、辞めて他の会社に移ってしまうとしたら、どの会社も未熟な人ばかりの素人集団になってしまう。
それでどうやって運用しているのだろう・・・
ひとつの仕事に一生をささげる・・という日本的な考え方が、既にあちらでは古いものになっていた。
後から分かったのだが、欧州では階級制がしっかり出来ており、子供たちは若いうちから、職人なら職人として専門教育を受ける。
企業側も学生たちを受け入れて、実習教育に協力する義務があり、ちょうどその時も高校生が大勢働いており、僕も彼らと一緒に食堂でお昼を食べた。
つまり卒業した時点で、ある程度基礎的な教育は済んでおり、就職すればすぐに実戦に投入出来る体制なのだ。
一つの会社で7年間働いて高度な技術を習得し、それを武器により高い報酬を得るために次の会社に移っていく・・という流れが作りやすかったのだろう。
しかしそうは言っても、それで実際に運用できるものなのだろうか・・という疑問が残った。
コアになる技術は7年程度で極めるのはかなり難しいであろう。
それでも7年で結果を出す必要があるので、貪欲に技術を習得しながら、自分をアピールしていく生活にはなるのかもしれないが・・・
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何となく中途半端で将来どうすべきかまだ決めかねている状態・・・
自分はこれになると決めて、あるいは決められて、その方向にどんどん進むというのも、確かに成熟度は高いですね。
ドイツなどはマイスターは尊敬される職業という体制が出来ているようですしね。