古い口座


Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

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もう何十年も前に取引のあった銀行に、まだ会社の口座が残っていた。
長年会社をやっていると、こういう残骸がそのままになることがある。
毎年決算の時期にはお金を支払って残高証明書を出してもらう必要があるので、もう無駄なことはやめようということになった。
要するにその古い口座(ほとんど残金は無い)を解約しようというのだ。

問題は、銀行がその後統廃合されて名前が何回か変わっている、ということだ。
当時付き合いのあった支店はとっくに無くなっており、その後別の新しい担当支店を指定されたが、それさえも次の統合の時に再度変更されていた。
そのため遠くにある現在の支店まで、わざわざ出向くことになった。

あらかじめ電話で必要な書類を聞いておき、それらを揃えていった。
窓口の女性にそのことを話すと、あちらも初めてのことなのか戸惑ってしまい、結局仕切られた別の相談窓口へと回された。
確かにその行員さんが子供の頃に消滅したような銀行の書類を持ってこられても困惑するのはわかるが、考えてみればあちらの一方的な都合でこうなったのだ。

書類はこれだけでいいと電話で言われたことを告げると、当初は誰がそんなことを言ったか・・とでも言わんばかりであった。
しかし電話で話した人が本部の偉い人だったようで、「上司に相談しますのでお待ちください」ということになった。
イレギュラーな処理のようで、電話でも謄本などいらないのか聞いたが、「うーん、必要ないと思うので窓口でそう言ってください」というあやふやな答えであった。

最初は古い口座の解約なんて数分で終わるだろうと思っていたが、どうもそう簡単ではないようだ。
しかもその間、こちら側の代表者が替わり実印も替えたので、その変更手続きも加わり話はさらに複雑になっていた。
そのうち女性から「けっこう時間がかかると思いますが、今日はお時間が有りますか?」と聞かれた。
こうなったら仕方がない。
帰りに得意先に寄ろうかと思っていたのだが、どうやら無理そうだ。

持って行った書類は、当時の小切手帳の残りとか通帳とかである。
それらが銀行の名前が変わるたびに新しいものになり、使えなくなった過去の銀行名のものが溜まっていったのだ。
使わなかった小切手の番号を全部控えるのにかなりの時間を要し、その上で発行済みの半券を返却された。
いらないから処分して欲しいと言ったが、そうもいかないようだ。

その間も奥では数人で何やら協議していたが、どうやら僕や会社のことを調べていたようだ。
担当の女性から、貴社を調べた結果OKが出たようなことを言われた。
残金がほとんどゼロだったことも、その程度で済んだ理由かもしれない。

古い口座を解約するだけなのに、大事であることが分かった。
それだから今までやれずにいたのかもしれない。
お昼頃行ったのに、結局銀行の閉店近くまでかかった。
昼食を食べていなかったので、途中でお腹が空き体調が悪くなってきた。
これは残金ですと言われ、たったの十数円を渡され、やっと銀行を後にした。

帰宅すると母親が、まだこういうものもあると言って、黄ばんだ古い通帳を出してきた。
何と昭和20年代の手書きの通帳で、はるか昔に無くなった懐かしい銀行の名前が書いてある。
しかもこちらは残金がけっこうある。
思わず、もういい加減にして欲しいと言ったが、母親はこれは記念にとっておくからいいと言ってまた机にしまった。
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« 運び屋 AI戦争 »
 
コメント
 
 
 
Unknown (きたろう)
2019-03-13 13:00:14
私も似たような経験があります。昭和を引きずった口座かつ合併が3度も続いたので、先方の担当者も手続き手順をよく理解していないようでした。

対応支店は年に1回飛行機で行く距離の場所になるので、事前に先方に指示に従って十分準備した筈でしたが、事後に手続きに不備があったと連絡があり、結局手続きは1年後に持ち越しました。

当初は名義変更だけの予定でしたが、名義変更→即解約になったのは言うまでもありません(笑)。
 
 
 
Unknown (COLKID@会社)
2019-03-13 13:10:50
統合っていうのは、あちらにとっても過去を切り捨てて消してしまおうとする行為なのかもしれません。
だから昔の他行の口座なんて知ったことか、という考え方がどこかにあるような気がします。
以前ある銀行の人から、統合と言っても結局どちらか強い銀行が主導権を持ち、もう一方の銀行の支店と行員を潰してカットしていくだけのことだと言っていました。
 
 
 
Unknown (きたろう)
2019-03-14 16:14:50
>結局どちらか強い銀行が主導権を持ち

確かに当初の口座は一番最初に吸収された側の金融機関のものでした。

私はバブル崩壊の余韻が残る最中に新卒だったのですが、その頃都銀の合併統合が連続し、都銀勤めの友人が優秀な人ほど躊躇なくやめていくのを何回か観て唖然としました。

いずれも世間一般的には吸収された側のヒトで、占領下に置かれた職場の雰囲気の悪さに耐えられないと言った意見が多いように記憶しています。

当時はせっかく入った都銀をやめてどうするんだろうと思いましたが、概ね辞めた人々のほうがその後公私共々幸せそうなこと、現在の銀行業界の有様を観るとつくづく先のことは判らないなと思います。
 
 
 
Unknown (COLKID@会社)
2019-03-15 08:14:05
かつて銀行を辞めた人がその後幸せならよかったですね。
銀行に行くたびに、フロア一杯の行員を見て、こんなにいらないよな・・と思います。
実際国からも統合を指示されているようで、銀行によってはピリピリしていますね。

ウチの会社の経理の先生が優秀な方なのですが、それを知ったある大手地銀の行員が「資格を取って独立したいがどうしたらいいか」と聞いたので驚きました。
先生から「今時私だって今後どうするか悩んでいるのに仕事は無いよ」と言われてガッカリしていました。
 
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