COLKIDが日々の出来事を気軽に書き込む小さな日記です。
COLKID プチ日記
振り返る犬
Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
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母親は毎朝自分の住むマンションの前に立ち、僕の車が迎えに来るのを待っている。
向こうの方から、小さい犬を連れた女性と、その後ろを白髪の女性が歩いてくる。
二人は親子のようで、毎朝犬を連れて散歩に出かけるのだ。
必ず犬を連れた女性が先で、その後ろに白髪の女性が続く。
白髪の女性は、母親より少し若いようだが、それほど快活そうには見えず、ただ犬を連れた娘の後ろをとぼとぼと歩いている。
母親はいつも決まった時間にそこに立つので、ほぼ毎日のようにその親子と顔を合わせる。
一番最初にそこで遭遇した時、母親の前を通りかかった犬が、母親を見るなり目を輝かせたという。
そして喜び勇んで母親に飛びつこうとした。
女性が犬のつなを引っ張り、やめなさい、と犬に命令した。
犬はなぜ自分が引っ張られたのか分からない・・という顔をしていた。
しかし後ろから来た白髪の女性を見ると、あれっ?という顔になり、母親と白髪の女性を交互に見た。
どうやら僕の母親を、自分の飼い主の母親である白髪の女性と間違えたらしい。
共に高齢であるし、髪の毛も同じように白いので、勘違いしたのだろうか。
犬は少し恥ずかしそうにしながら、親子とともにその場から去って行った。
翌日もまたその犬の一行と遭遇したが、今回は母親を見ても間違えることは無かった。
ただ澄ました顔で母親の前を通り過ぎ、少し先に行ったところで、ちらっとこちらを振り返って見たのだそうだ。
母親は犬と目が合ってしまい慌てた。
その日以降、犬は必ず少し通り過ぎてから、母親の方を見るようになった。
犬がどのような気持ちで振り返るのかは分からない。
恐らく、あなたの事は知っていますよ・・という親愛の情を示しているのだろう。
あるいは、今日は間違えなかったでしょう?と言いたいのか。
しかしもともと犬やネコといった動物が好きではない母親にしてみれば、犬に馬鹿にされているような気持ちになるらしい。
あれは犬が自分より弱い老人に対し、優越感を持って見ているのだ・・と母親は言う。
一度は間違えてしまったが、俺はお前より強いのだと相手に分からせるために、わざと振り返って見ているに違いないという。
犬はそんな事考えていないから大丈夫だよ・・と言っても、なかなか聞いてもらえない。
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