先週5月17日の日経新聞朝刊「法務」ページ「法務インサイド」に、以下の記事が載っていました。
「知財高裁5年~特許成立ハードル低く
権利者寄り判断増える~「進歩性」認定厳格さ薄まる・企業活動への配慮も」
「今年4月に発足から満5年を迎えた知的財産高等裁判所。当初は特許権者に厳しい判決が多かったが、この1~2年は逆に権利者寄りの判断が増えてきた。知財高裁がひょう変した背景には、閉塞感が強まる日本市場での企業活動を、知財保護の面から何とか後押ししたいという意図があるようだ。」
右下の図は、「特許庁が特許を認めなかった審決を認めなかった審決を裁判所が取り消し、特許を有効とした比率」について2000年度から09年度までの推移を示したものです。おそらく、「査定不服審判に対する審決取消訴訟」に限定しているものと思われます。
図を見ると、2004年度が特に低かったのですねえ。3%しかなかったといいます。「(その後)上昇に転じ、それまでの10%前後から08年度に一気に30%台に上昇。09年度も同水準で推移しているとされる。」
図に「(注)特許庁調べ」とあるので、特許庁のホームページでデータを探したのですが、見つけることができませんでした。
記事では併せて、09年3月に、酒井化学工業と川上産業の間で争われた審決取消訴訟に言及しています。「判決を書いた飯村敏明判事は、進歩性を判断する際の留意点として、以下を挙げた。①発明の明細書から得た知識を前提に事後的に分析して、その発明が容易に思いつくものだと判断してはならない、②(進歩性を否定するためには)先行技術の文献に、当該発明に関する示唆が存在する必要がある--などだ。進歩性をむやみに否定しないよう、特許成立のハードルを下げたといえる。」
記事では、以前は知財高裁で進歩性のハードルが高かったことの理由として、『保護に値しないアイデアに安易に特許権を認めないことが健全な産業の発展に資するものとの考えのもと、同高裁は進歩性を「厳しく」判断していた。しかし、欧米に比べても厳格な基準を採用したことに加えて不況の影響もあり、企業の出願意欲が低下。』とし、
さらに侵害訴訟と並行する無効審判で特許が無効となる確率が高かった、とした上で『近年の知財高裁の方向転換について「過去に対する反省ではないか」との見方がある。ある法曹関係者は「景気低迷に加えて技術開発しても特許が認められないとなると、日本は企業にとって開発投資を回収できない国とみなされて市場としての魅力を失い。日本の競争力を弱める原因となっているのであれば、(知財高裁の)揺り戻しは必要、と話す。』と続けています。
それにしても、査定不服審判に対する審決取消訴訟で、「請求容認」との判決が30%程度となり、それが2年も続いたというのは画期的ですね。今までは、弁理士・弁護士にとって、『査定不服審判に対する審決取消訴訟で「請求容認」との判決を勝ち取ったら勲章』と思っていましたが、そうでもなくなりました。
このように知財高裁の判決傾向が変化した原因は、日経記事が解説している通りかどうか、わかりません。私自身は、『査定不服審判に対する審決取消訴訟で「請求容認」となる確率が10%前後』というのはあまりにも低すぎると思っていましたから、最近の傾向はいいことだと思っています。
日経の記事の解説が正しいとすると、産業政策として判決傾向が変化してきたことになります。特許法の目的は(日本における)産業の発達ですから、このような変化はあり得ることです。
ただし、そうだとしたら、2004年頃は「進歩性のハードルを厳しくした方が産業の発達に寄与する」と考えていたことになり、そちらの方が理解しがたい、というのが私の考えです。
「知財高裁5年~特許成立ハードル低く
権利者寄り判断増える~「進歩性」認定厳格さ薄まる・企業活動への配慮も」
「今年4月に発足から満5年を迎えた知的財産高等裁判所。当初は特許権者に厳しい判決が多かったが、この1~2年は逆に権利者寄りの判断が増えてきた。知財高裁がひょう変した背景には、閉塞感が強まる日本市場での企業活動を、知財保護の面から何とか後押ししたいという意図があるようだ。」
右下の図は、「特許庁が特許を認めなかった審決を認めなかった審決を裁判所が取り消し、特許を有効とした比率」について2000年度から09年度までの推移を示したものです。おそらく、「査定不服審判に対する審決取消訴訟」に限定しているものと思われます。
図を見ると、2004年度が特に低かったのですねえ。3%しかなかったといいます。「(その後)上昇に転じ、それまでの10%前後から08年度に一気に30%台に上昇。09年度も同水準で推移しているとされる。」
図に「(注)特許庁調べ」とあるので、特許庁のホームページでデータを探したのですが、見つけることができませんでした。
記事では併せて、09年3月に、酒井化学工業と川上産業の間で争われた審決取消訴訟に言及しています。「判決を書いた飯村敏明判事は、進歩性を判断する際の留意点として、以下を挙げた。①発明の明細書から得た知識を前提に事後的に分析して、その発明が容易に思いつくものだと判断してはならない、②(進歩性を否定するためには)先行技術の文献に、当該発明に関する示唆が存在する必要がある--などだ。進歩性をむやみに否定しないよう、特許成立のハードルを下げたといえる。」
記事では、以前は知財高裁で進歩性のハードルが高かったことの理由として、『保護に値しないアイデアに安易に特許権を認めないことが健全な産業の発展に資するものとの考えのもと、同高裁は進歩性を「厳しく」判断していた。しかし、欧米に比べても厳格な基準を採用したことに加えて不況の影響もあり、企業の出願意欲が低下。』とし、
さらに侵害訴訟と並行する無効審判で特許が無効となる確率が高かった、とした上で『近年の知財高裁の方向転換について「過去に対する反省ではないか」との見方がある。ある法曹関係者は「景気低迷に加えて技術開発しても特許が認められないとなると、日本は企業にとって開発投資を回収できない国とみなされて市場としての魅力を失い。日本の競争力を弱める原因となっているのであれば、(知財高裁の)揺り戻しは必要、と話す。』と続けています。
それにしても、査定不服審判に対する審決取消訴訟で、「請求容認」との判決が30%程度となり、それが2年も続いたというのは画期的ですね。今までは、弁理士・弁護士にとって、『査定不服審判に対する審決取消訴訟で「請求容認」との判決を勝ち取ったら勲章』と思っていましたが、そうでもなくなりました。
このように知財高裁の判決傾向が変化した原因は、日経記事が解説している通りかどうか、わかりません。私自身は、『査定不服審判に対する審決取消訴訟で「請求容認」となる確率が10%前後』というのはあまりにも低すぎると思っていましたから、最近の傾向はいいことだと思っています。
日経の記事の解説が正しいとすると、産業政策として判決傾向が変化してきたことになります。特許法の目的は(日本における)産業の発達ですから、このような変化はあり得ることです。
ただし、そうだとしたら、2004年頃は「進歩性のハードルを厳しくした方が産業の発達に寄与する」と考えていたことになり、そちらの方が理解しがたい、というのが私の考えです。
しかし今の時代は国際化時代。日本企業の特許が無効になると、途上国企業がその技術を使うことができる。日本の技術流出が加速するんですね。それが今の惨状です。
ということでしょ
何が理解しがたいのか理解しがたいですが