弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

フェルディナント氏が製鉄所見学

2010-12-07 21:02:56 | Weblog
フェルディナントヤマグチ氏は、日経ビジネスONLINEにフェルディナント・ヤマグチ 走りながら考えるという自動車批評を連載しています。数回シリーズで特定の車種を取り上げ、まずはフェルディナント氏が試乗し、次いで国産車であれば開發責任者にインタビューしてとっておきの話を引き出す、という筋立てです。私はいつも楽しみにしています。このブログでも、1年前に日産GT-R開発者水野和敏氏として紹介しました。

そのフェルディナント氏が、「番外編」として新日鐵君津製鐵所を取材した記事が掲載されました。
ヘルメットイッキはやめたけど まだまだ強いニッポンの鉄~番外編:燃える男の製鉄所“萌え”編
君津製鐵所こそ、私がサラリーマンとして最初の13年間を過ごした職場です。
フェルディナント氏はここで、3人の研究者・技術者から、主に「ハイテン」の日本鉄鋼業優位が今後とも続くのかどうかという点について話を聞き出します。「ハイテン」とは、高張力でかつ加工性の良好な鋼板を意味し、主に自動車の軽量化を実現する上で要求され、製鉄メーカー各社がしのぎを削っている品種です。

まず、フェルディナント氏はヘルメットをかぶって製鉄所内を見て回ります。転炉工場にも行ったのですね。転炉工場とは、NB-OnLine記事1ページこの写真にもあるように、高炉から出銑した溶銑(炭素濃度4%程度の溶けた銑鉄)を鍋から転炉の炉内に装入し、炉内で酸素ガスを吹き付けることによって炭素を燃焼させ、溶鋼(炭素濃度を所定の濃度まで減少させた溶けた鋼)を作る工程です。私の職場だったところです。写真では実感が湧きにくいですが、写真にある鍋には約300トンの溶けた鉄が入っているのです。
鍋から溶銑を転炉内に入れ替える「溶銑装入」という工程は、安全性の観点から直接眺めることは最近では許されません。フェルディナント氏はNB-OnLine記事4ページこの写真にあるように、ちょっと遠目からですが溶銑装入の瞬間を見ることができたのですね。
私も入社早々、この溶銑装入を目にして「男の現場だ!」と実感したものです。

さて、NB-OnLine記事5ページでは(FU:薄板材料研究部のF田氏、F:フェルディナント氏)、
『FU:新入社員が寮に入ると歓迎コンパをやる訳なんですけど……。
F:はあ……。
FU:昔はあのヘルメットに日本酒をなみなみ注いで、イッキ飲み大会をやったものです。一升ちょっと入るんですよ。あのヘルメットには。
F:げ。日本酒一升イッキ。そんなムチャな……。』
という話が紹介されています。

君津製鐵所は特に田舎ですから、君津製鐵所に配属になった独身の新入社員は皆、寮に入ります。入寮した新入社員に歓迎コンパでヘルメットイッキ飲みをさせるという儀式は、私が入社した昭和48年にはまだありませんでした。私の入社より数年後から始まったらしいです。寮の名前に因んで“八重原の儀”と呼ばれていました。
イッキ飲みの弊害が知られるようになった以降、もう止めているとは思いますが・・・。
それにしても、現在会社の中核を担っている社員の人たちにとっては、重要な記憶として残っているのですね。

ところで、「ハイテン」です。
フェルディナント氏は、「今は日本の製鉄メーカーはハイテンの技術で優位に立っているかもしれないが、いずれ中国その他にキャッチアップされるのではないですか?」と質問します。
これに対して新日鐵の研究者たちは、「他の国々が今の日本メーカーのレベルに到達したときには、日本メーカーはさらにその先を行っているので、10年やそこらでは追いつけません」と断言していました。
その断言が未来においてそのまま実現するかどうかは、その未来になってみないとわかりませんが。
また、別のところで聞いた話では、ハイテンにもさまざまなグレードがあり、日本が図抜けているのはそのうちの最高級グレードだけであり、自動車に使われるハイテンのうちの中級以下については他の国も追いついている、ということらしいです。
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