最近、テレビのニュース番組で「静かな退職」が取り上げられていました。下のサイトかも知れません。
【work23】会社辞めずに“最低限の仕事”「静かな退職」広がる 実践中の20代男性に密着「ダラダラした方がコスパいい」 企業に意外なメリット?
【news23】4/23(水)
『最近、「退職はしない、ただ、必要最低限の仕事しかやらない」という働き方を指す「静かな退職」という言葉が注目されています。
“必要最低限の仕事のみをこなす働き方”、「静かな退職」。実際に退職はしないものの、心理的には会社を去っている状態を意味します。
「静かな退職」をしている正社員の割合(出典:マイナビ)
▼20代 46.7%
▼30代 41.6%
▼40代 44.3%
▼50代 45.6%』
『“静かな退職”をする大手企業勤務(20代)
「いわゆる“指示待ち”をして、指示されたことはやる」
「(Q.モチベーションは100%で言うと)業務に対する熱量みたいなことですか?ゼロですね」』
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ここまでの番組の進行では、「静かな退職」とは、「働く積極的な意欲がなく、指示されたことだけをやり、残業ゼロで帰宅してしまう」という「ダメ社員」を指しているような印象です。
しかし、私の理解では、「静かな退職」との文言でくくられる働き方は、むしろこれからの社会で推奨される働き方であると理解しています。適切な日本語を見つけるとしたら「働き方改革」です。
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『大手企業勤務の20代男性は、「業務に対する熱意がゼロ」と話していましたが、“静かな退職”について、雇用問題に詳しい大正大学の海老原嗣生氏は「いまは労働人口が減り、昭和のような『24時間戦う』無駄な働き方が難しい」「共働き家庭が増えるなか、会社に縛られない『静かな退職』は、家事や育児などと両立できる働き方に繋がる」とみています。』
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そう、この考え方です。
私は以下の書籍を読みました。
静かな退職という働き方 (PHP新書)

海老原 嗣生 (著)
「はじめに」から抜粋します。
『「静かな退職」――アメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和訳で、企業を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態である。
「働いてはいるけれど、積極的に仕事の意義を見出していない」のだから、退職と同じという意味で「静かな退職」なのだ。
・言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしたくない。
・社内の面倒くさい付き合いは可能な限り断る。
・上司や顧客の不合理な要望は受け入れない。
・残業は最小限にとどめ、有給休暇もしっかり取る。』
この「はしがき」も「静かな退職」に対してちょっとネガティブですね。しかし、本を読み進めると、違った姿が見えてきます。
最近の日本では、女性の社会進出が現実的に進展し、業務スキルを身につけた女性が育児退職することが会社の損失になり始めました。それに対する対策が取られた結果、少なくとも育児女性に関しては、「忙しい毎日」型の労働からは脱し、短時間で会社から帰る権利が確保されました。そのような働く育児女性が増えると、その夫は、家事分担を行うことが必須となり、男性についても「忙しい毎日」型の労働から脱することが必要となります。もはや日本では、「静かな退職」型の働き方が主流になっていくのです。
夫婦共働きの時代、夫婦ともに「静かな退職」を選ぶことで、家事と育児を共同で行うことが可能となります。
「働き方改革」ということで、エリート候補だろうがそうでなかろうが、皆が「静かな退職」的な働き方を目指しているようです。しかしこれでは、最先端の技術やエクセレントな会社は生まれづらいでしょう。やはり、優秀な一部のエリート層が全力で最先端を追いかけないと、日本の産業が欧米に並ぶことは難しいです。
一方、エリートコースに乗れないことが客観的に分かっているグループの人たちについては、24時間働くことは無意味であり、人生で失うものが多すぎます。
著書「静かな退職という働き方」では、日本での働き方と、欧米での働き方の違いが描かれます。
日本では、大卒で大手会社に正社員で入社すると、全員が「がんばれば社長や役員にもなれる」とおだてられてがむしゃらに働きます。「24時間働けますか?」の世界ですね。しかし、実際に社長や役員になれるのは、そのうちのごく僅かです。
一方、欧州大陸諸国(フランス、ドイツ)では、同じ大卒であっても、エリートコースに乗れるグループと乗れないグループが入社当初から厳然と分けられています。欧州大陸諸国であれば、職業資格と学歴で昇進上限が決まり、自分の将来が早期に見えてしまいます。
年齢別の年収を見ると、エリート層は年齢とともに年収が上昇するのに対し、非エリート層は年収の上昇がごくわずかです。
エリートコースに乗っている少数のグループはばりばり働いて先頭争いをする一方、そうでないグループは上記「静かな退職」の人たちに似たような働き方をします。
さて、日本のやり方と欧米のやり方のどちらが好ましいか、という問題です。
問題は、スタートの段階でエリートと非エリートを区別するという「差別」を、日本人が受け入れるか否か、です。
戦前の日本では、旧制高校と旧帝大を出た人たちがエリートで、それ以外の中卒・小卒は非エリートコースで厳然と別れていました。戦後の日本は、このエリート主義を否定することから始まっています。それがために、「大卒(場合によっては高卒)は全員、がんばれば社長や役員になれる」という平等主義で走ってきました。そのため、客観的に見たら役員などになり得ない人たちまでも、「24時間頑張れ」と働いてきたのです。
以上で、欧州大陸諸国と日本を対比しました。アメリカはどうなのでしょうか。著書「静かな退職という働き方」ではアメリカについてはさほど詳細に解析していません。
私が知る限りでは、アメリカの一般労働者は「静かな退職」型が多いようです。一方で、エクセレントな結果を出す集団は、集団全体が「24時間頑張れ」型になっている気がします。
今のウィンドウズパソコンのOSの原点は、Windows NTであると理解しています。そのWindows NTの開発の様子を、私はブログ記事『ザカリー著「闘うプログラマー」 2013-04-16』としてアップしました。
『私生活を顧みずに仕事に打ち込むことが要求されたので、家庭を顧みず、離婚にいたり、恋人と別れた人たちもいました。』
インテルがアンドリュー・グローブに率いられていた頃、アンディは「インテルはワーカホリック集団だ」と言っていたとの記憶があります。アンディがCEOの時代のインテルは地獄だったようですが。
最近の世界での技術革新は、アメリカ発が圧倒的に多いように思います。一般労働者は「静かな退職」型が多い一方、何事かをなし遂げようとする集団は優秀な人材がまとまって「24時間頑張れ」型の仕事をしており、これが技術革新を連続して生み出す源になっている気がします。
一方、日本もそうですが、ヨーロッパからもなかなか革新的な新技術が生まれません。エリートコースに乗っている少数の人材のみでは、アメリカのような革新的技術が生まれないのかもしれません。
以上を記述した上で現在の日本を振り返ると、日本は優秀層を含めて誰もかれもが「静かな退職」型に移行しつつあるようです。これでは、夫婦共働きには対応できるものの、世界の先頭に立つような国にはなりえないでしょう。結果として国民全体が貧しい生活を受け入れることになろうかと思います。
【work23】会社辞めずに“最低限の仕事”「静かな退職」広がる 実践中の20代男性に密着「ダラダラした方がコスパいい」 企業に意外なメリット?
【news23】4/23(水)
『最近、「退職はしない、ただ、必要最低限の仕事しかやらない」という働き方を指す「静かな退職」という言葉が注目されています。
“必要最低限の仕事のみをこなす働き方”、「静かな退職」。実際に退職はしないものの、心理的には会社を去っている状態を意味します。
「静かな退職」をしている正社員の割合(出典:マイナビ)
▼20代 46.7%
▼30代 41.6%
▼40代 44.3%
▼50代 45.6%』
『“静かな退職”をする大手企業勤務(20代)
「いわゆる“指示待ち”をして、指示されたことはやる」
「(Q.モチベーションは100%で言うと)業務に対する熱量みたいなことですか?ゼロですね」』
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ここまでの番組の進行では、「静かな退職」とは、「働く積極的な意欲がなく、指示されたことだけをやり、残業ゼロで帰宅してしまう」という「ダメ社員」を指しているような印象です。
しかし、私の理解では、「静かな退職」との文言でくくられる働き方は、むしろこれからの社会で推奨される働き方であると理解しています。適切な日本語を見つけるとしたら「働き方改革」です。
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『大手企業勤務の20代男性は、「業務に対する熱意がゼロ」と話していましたが、“静かな退職”について、雇用問題に詳しい大正大学の海老原嗣生氏は「いまは労働人口が減り、昭和のような『24時間戦う』無駄な働き方が難しい」「共働き家庭が増えるなか、会社に縛られない『静かな退職』は、家事や育児などと両立できる働き方に繋がる」とみています。』
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そう、この考え方です。
私は以下の書籍を読みました。
静かな退職という働き方 (PHP新書)

海老原 嗣生 (著)
「はじめに」から抜粋します。
『「静かな退職」――アメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和訳で、企業を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態である。
「働いてはいるけれど、積極的に仕事の意義を見出していない」のだから、退職と同じという意味で「静かな退職」なのだ。
・言われた仕事はやるが、会社への過剰な奉仕はしたくない。
・社内の面倒くさい付き合いは可能な限り断る。
・上司や顧客の不合理な要望は受け入れない。
・残業は最小限にとどめ、有給休暇もしっかり取る。』
この「はしがき」も「静かな退職」に対してちょっとネガティブですね。しかし、本を読み進めると、違った姿が見えてきます。
最近の日本では、女性の社会進出が現実的に進展し、業務スキルを身につけた女性が育児退職することが会社の損失になり始めました。それに対する対策が取られた結果、少なくとも育児女性に関しては、「忙しい毎日」型の労働からは脱し、短時間で会社から帰る権利が確保されました。そのような働く育児女性が増えると、その夫は、家事分担を行うことが必須となり、男性についても「忙しい毎日」型の労働から脱することが必要となります。もはや日本では、「静かな退職」型の働き方が主流になっていくのです。
夫婦共働きの時代、夫婦ともに「静かな退職」を選ぶことで、家事と育児を共同で行うことが可能となります。
「働き方改革」ということで、エリート候補だろうがそうでなかろうが、皆が「静かな退職」的な働き方を目指しているようです。しかしこれでは、最先端の技術やエクセレントな会社は生まれづらいでしょう。やはり、優秀な一部のエリート層が全力で最先端を追いかけないと、日本の産業が欧米に並ぶことは難しいです。
一方、エリートコースに乗れないことが客観的に分かっているグループの人たちについては、24時間働くことは無意味であり、人生で失うものが多すぎます。
著書「静かな退職という働き方」では、日本での働き方と、欧米での働き方の違いが描かれます。
日本では、大卒で大手会社に正社員で入社すると、全員が「がんばれば社長や役員にもなれる」とおだてられてがむしゃらに働きます。「24時間働けますか?」の世界ですね。しかし、実際に社長や役員になれるのは、そのうちのごく僅かです。
一方、欧州大陸諸国(フランス、ドイツ)では、同じ大卒であっても、エリートコースに乗れるグループと乗れないグループが入社当初から厳然と分けられています。欧州大陸諸国であれば、職業資格と学歴で昇進上限が決まり、自分の将来が早期に見えてしまいます。
年齢別の年収を見ると、エリート層は年齢とともに年収が上昇するのに対し、非エリート層は年収の上昇がごくわずかです。
エリートコースに乗っている少数のグループはばりばり働いて先頭争いをする一方、そうでないグループは上記「静かな退職」の人たちに似たような働き方をします。
さて、日本のやり方と欧米のやり方のどちらが好ましいか、という問題です。
問題は、スタートの段階でエリートと非エリートを区別するという「差別」を、日本人が受け入れるか否か、です。
戦前の日本では、旧制高校と旧帝大を出た人たちがエリートで、それ以外の中卒・小卒は非エリートコースで厳然と別れていました。戦後の日本は、このエリート主義を否定することから始まっています。それがために、「大卒(場合によっては高卒)は全員、がんばれば社長や役員になれる」という平等主義で走ってきました。そのため、客観的に見たら役員などになり得ない人たちまでも、「24時間頑張れ」と働いてきたのです。
以上で、欧州大陸諸国と日本を対比しました。アメリカはどうなのでしょうか。著書「静かな退職という働き方」ではアメリカについてはさほど詳細に解析していません。
私が知る限りでは、アメリカの一般労働者は「静かな退職」型が多いようです。一方で、エクセレントな結果を出す集団は、集団全体が「24時間頑張れ」型になっている気がします。
今のウィンドウズパソコンのOSの原点は、Windows NTであると理解しています。そのWindows NTの開発の様子を、私はブログ記事『ザカリー著「闘うプログラマー」 2013-04-16』としてアップしました。
『私生活を顧みずに仕事に打ち込むことが要求されたので、家庭を顧みず、離婚にいたり、恋人と別れた人たちもいました。』
インテルがアンドリュー・グローブに率いられていた頃、アンディは「インテルはワーカホリック集団だ」と言っていたとの記憶があります。アンディがCEOの時代のインテルは地獄だったようですが。
最近の世界での技術革新は、アメリカ発が圧倒的に多いように思います。一般労働者は「静かな退職」型が多い一方、何事かをなし遂げようとする集団は優秀な人材がまとまって「24時間頑張れ」型の仕事をしており、これが技術革新を連続して生み出す源になっている気がします。
一方、日本もそうですが、ヨーロッパからもなかなか革新的な新技術が生まれません。エリートコースに乗っている少数の人材のみでは、アメリカのような革新的技術が生まれないのかもしれません。
以上を記述した上で現在の日本を振り返ると、日本は優秀層を含めて誰もかれもが「静かな退職」型に移行しつつあるようです。これでは、夫婦共働きには対応できるものの、世界の先頭に立つような国にはなりえないでしょう。結果として国民全体が貧しい生活を受け入れることになろうかと思います。
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