<2466> 大和の花 (624) ダイモンジソウ (大文字草) ユキノシタ科 ユキノシタ属
低地から亜高山帯の湿った岩場に生える多年草で、花茎の高さは10センチから30センチほどになる。葉は長さが3センチから15センチの腎円形で、基部は主に心形となり、浅く5から12裂し、粗い毛があり、長い柄によって根生する。
花期は7月から10月ごろで、花茎の先に円錐状の集散花序を出し、多数の白色から淡紅色の花をつける。花弁は細く、5個からなり、上部の3個が小さく、下部の2個が大きい特徴によりこれが大の字に見え、この名がある。雄しべは10個。葯は暗紅色。雌しべは2個。実は蒴果。
北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮、中国、ウスリー、サハリン、南千島に見られるという。大和(奈良県)では深山、山岳の冷温帯域の岩場で見かけるが、生育地も個体数も少なく、レッドリストの希少種にあげられている。 写真は花を咲かせるダイモンジソウ(十津川村の大峰山脈尾根筋の岩壁) 五七五ひとりもよけれ秋の夜
<2467> 大和の花 (625) ウチワダイモンジソウ (団扇大文字草) ユキノシタ科 ユキノシタ属
ダイモンジソウの変種とされる多年草で、山地の渓谷沿いの岩場などに生える。ダイモンジソウによく似るが、全体に小さい感じを受ける。葉は長さが2センチから5センチほどの倒卵形または円形で、3裂から7裂し、縁には鋸歯が見られ、柄を有して根生する。この葉を団扇に見立てたことによりこの名があると言われる。
花期は8月から10月ごろで、ダイモンジソウとそっくりな5弁花を咲かせ、この5弁が大の字に見える。ダイモンジソウとの違いは、花よりも葉によるのがよく、葉の基部がダイモンジソウでは心形、本種ではくさび形から切形になる。また、ダイモンジソウは葉に粗毛が生えるのに対し、本種は無毛の違いがあるのでこの点を見る。実はともに蒴果。
本州の東北地方から中部地方、紀伊半島と四国、九州の屋久島以北に分布する日本固有変種として知られ、大和(奈良県)ではダイモンジソウより南部域に見られるという報告があるが、ダイモンジソウと同じく、生育地、個体数ともに少なく、レッドリストの希少種にあげられている。 写真はウチワダイモンジソウ(大台ヶ原山)。 夏雲の奥の高きに秋の雲
<2468> 大和の花 (626) ジンジソウ (人字草) ユキノシタ科 ユキノシタ属
山地のあまり日の当たらない岩壁に生える多年草で、根生する葉が束生し、花茎は高さが10センチから35センチほどになる。葉は柄を有し、長さが5センチから15センチの腎円形で、7中裂から11中裂し、基部は心形。全体にまばらな毛がある。
花期は9月から10月ごろで、花茎の先に集散花序を出し、多数の花をまばらにつける。花は白い花弁5個からなり、上の3個が小さく、下の2個が大きいので人の字に見えることからこの名があるという。雄しべは10個、葯は橙黄色で、実は蒴果。
本州の関東地方以西、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では登山道脇などで見かける。花はダイモンジソウやユキノシタに似るが、上の小さい3個の花弁に黄色の斑点が1個あるので判別出来る。葉はダイモンジソウより裂け方が深く、もみじの葉に似るのでモミジバダイモンジソウの別名でも知られる。 写真はジンジソウ(天川村山中)。 人字草南朝隠れ宮の跡
<2469> 大和の花 (627) ユキノシタ (雪の下) ユキノシタ科 ユキノシタ属
湿った半日蔭の岩場や崖地などに生える常緑の多年草で、根元から赤みを帯びた送出枝を伸ばし、その先に株をつくって繁殖するので、群生することが多く、一面被い尽くすほどの花群に出会うことがある。葉は根生し、長さが3センチから6センチの腎円形で、厚さがあって軟らかく、縁には鋸歯が見られる。表面は暗緑色で、脈に沿って白い斑が入り、裏面は暗紫色を帯び、赤褐色の毛が生える。
花期は5月から6月ごろで、高さが20センチから50センチの花茎を立て、白い花を円錐状に多数つける。花は左右相称で、花弁は5個。上に3個と下に2個つき、上の3個は小さく濃紅色の斑点とその下につく黄色の斑点が特徴。下の2個は大きく、細長い。花は同属の他種とよく似るが、葉と花弁の違いによって判別出来る。
ユキノシタ(雪の下)の名は、冬も雪の下で常緑を保つことが出来るからとか白い花を雪の舌とする説などがあるが、はっきりしない。本州、四国、九州に分布し、国外では中国に見られるという。中国では虎耳草(こじそう)と呼ばれ、薬草としても知られ、主に葉の汁を用い、小児のひきつけ、中耳炎、腫れもの、痔の痛みなどに効能があるという。また、食用として、葉を天ぷらやお浸しにする地方もある。大和(奈良県)では山間地に多く、古いお寺や民家の庭などにも植えられ、珍しくない。 写真はユキノシタ(東吉野村ほか)。 雪白の花一面の雪の下