大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年10月14日 | 植物

<2476> 大和の花 (632) レモンエゴマ (檸檬荏胡麻)                                       シソ科 シソ属

               

 山地の林縁などに生え、道端などにも見られる1年草で、軟毛が密生する茎は直立して分枝し、高さが20センチから70センチほどになる。葉は長さが7センチから12センチの卵形乃至は広卵形で、先は尖り、縁には鋸歯が見られる。長い柄を有し対生する。

 花期は8月から10月ごろで、枝先に10センチから18センチの花序を立て、唇形の花を多段にして密につける。花冠は長さ数ミリ。白色で、淡紅色を帯びることが多く、苞葉は緑白色で、縁に白毛が生え、萼には白い軟毛が密生し、黄色い腺点も多い。エゴマ(荏胡麻)に似て全体的にレモンの香りがあるのでこの名がある。

  本州、四国、九州に分布し、以前は日本の固有種と見られていたが、最近、中国でも見出されるに至った。大和では南端部から北端部まで広く見られる。奈良公園の周辺には多く、これはシカの食害を受けないことによると言われる。 写真はレモンエゴマ(左は奈良市、ほかは十津川村の個体)。   縛られて縛られながら行ける旅 はたして生はしがらみにある

<2477> 大和の花 (633) ナギナタコウジュ (薙刀香薷)                                       シソ科 ナギナタコウジュ属

              

 日当たりのよい山地の林縁や草地、または道端などに生える1年草で、茎は直立して分枝し、高さは30センチから60センチほどになる。葉は長さが3センチから9センチの卵形乃至は狭卵形で、先は尖り、縁には鋸歯が見られる。

 花期は9月から10月ごろで、枝先から花序(花穂)を伸ばし、淡紫色から淡紅紫色の小さな花を外側の一面に片寄って多数連ねる。花冠は長さ数ミリの唇形で、縁は細かく裂け、毛のように見える。花の付け根には緑色の苞葉がある。この花序の穂をナギナタ(薙刀)に見立てたことと、強い芳香があり、中国のコウジュ(香薷)に似るのでこの名があるという。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、アジアの温帯に広く見られるという。大和(奈良県)では低山帯の道端などで見かける。なお、本種は香薷(こうじゅ)の生薬名をもつ薬用植物として知られ、全草を乾燥し、煎じて飲めば、解熱、利尿等に効くと言われる。 写真はナギナタコウジュ(葛城山の山頂付近の草地)。  稔るほど柿の山里柿の色

<2478> 大和の花 (634) イヌコウジュ (犬香薷)                                                シソ科 イヌコウジュ属

                      

 山野のやや湿り気のある道端や溝の傍などに生える1年草で、全体に細毛が多く、高さが20センチから60センチほどになる。葉は長さが2センチから4センチの卵状披針形乃至は長楕円形で、先は尖り、縁には浅い鋸歯が見られ、対生する。よく似るヒメジソ(姫紫蘇)とは葉の鋸歯に違いが見られ、本種の浅く不明瞭に対し、ヒメジソでははっきりしている。

 花期は9月から10月ごろで、枝先に花序(花穂)を出し、淡紅紫色の小さな唇形の花を多数つける。花冠は長さが3、4ミリで、萼は2、3ミリ。花穂の上へ上へと咲き継ぐ。日本全土に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾、ベトナム等に見られるという。大和(奈良県)でもよく見かける。 写真はイヌコウジュ(奈良公園)。    一種一種一首一首の花と歌はたして生の意味に関はる

<2479> 大和の花 (635) ハッカ (薄荷)                                                   シソ科 ハッカ属

                                                                    

 やや湿ったところに生える多年草で、四角形の茎はが直立し、高さが20センチから60センチほどになる。葉は長さが2センチから8センチの長楕円形で、先はやや尖り、縁には鋸歯が見られ、短い柄を有して対生する。全草に芳香のあるのが特徴で、近縁種にヨーロッパ原産のペパーミントやスペアミントがある。

 花期は8月から10月ごろで、上部の葉腋に長さ数ミリの小さな淡紫色の唇形花を輪生状につける。北海道、本州、四国、九州に分布し、東アジアにも広く見られるという。ハッカ(薄荷)の名は漢名の薄荷(はくか)の促音便によるもので、在来のものについては二ホンハッカ(日本薄荷)と呼ばれ、区別されることもある。

 葉にはメントールを主成分とする精油が含まれ、全草に芳香があるため、香料や薬用に栽培されている。ヨーロッパ原産の仲間も日本のハッカも古くから知られ、日本のハッカについては、平安時代の『倭名類聚鉦』や『本草和名』などに記載があり、江戸時代末には薬草として栽培され、瞼の上に生の葉を乗せ、目を癒したことから、メグサ(目草)の名でも知られる。

 ほかにも利用価値は広く、薬用としては生の葉を虫刺されに用い、乾燥した葉は薄荷葉(はっかよう)と言われ、発汗、解熱、鎮痛、健胃、解毒等に効能があるとされ、石鹸や歯磨き粉などの香料、ほかにも飲料や菓子等にも用いられる。野生のものは雑草然として目立たないが、有用な植物の1つに数えられている。 写真はハッカ(吉野川の河川敷)。   柿一顆その充分を頂きぬ

<2480> 大和の花 (636) マルバハッカ  (丸葉薄荷)                                              シソ科 ハッカ属

                      

 ヨーロッパ原産の多年草で、香料用として導入され、栽培されて来たが、これが逸出して野生化し、道端の草地などに生え出しているのを見かけるようになった。所謂、帰化植物で、高さは30センチから80センチほどになり、走出枝を伸ばして繁殖し、道端の草叢などに雑草然として生え、ときに群生するものも見られる。

  全体にハッカ臭があり、縮れた白毛に被われる。葉は長さが2センチから5センチの広楕円形で、表面は脈が凹み、皺が目立つ。裏面は白毛が密生する。先は尖らず、縁には鋸歯が見られ、基部はやや茎を抱き、対生する。

 花期は8月から10月ごろで、茎の先に花序(花穂)を出し、白色乃至は淡紅色の4裂した小さな唇形花を多数密につける。大和(奈良県)では道端や川岸などに生えだしているのが見られる。 写真はマルバハッカ(奈良市郊外)。   外界と内界を持てこの身あり思ふ個体の存在として