<2482> 大和の花 (637) オオバコ (大葉子) オオバコ科 オオバコ属
日当たりのよい山野の湿地から乾燥地、草地から荒地などに生え、道端などでも普通に見られる多年草で、人や車などが行き交うような踏み固められたところにも平気で生え出す旺盛さがあり、地べたに貼りつくように群生することが多い。葉は長さが4センチから15センチの卵形乃至は広卵形で、ときに楕円形のものも見られ、変化に富む。また、葉には平行脈が目立ち、波打つものが特徴で、長い柄を有し放射状に根生する。
花期は4月から10月ごろと長く、根生葉の間から高さが10センチから20センチの花茎を数本立て、その上部の穂に小さな花を多数密につける。花冠は白い漏斗状で、4裂し、穂の下から上へと順に咲く。雌性先熟の特徴を有し、まず、雌しべの柱頭が現れ、受精した後、白い4個の雄しべが伸び出す。花冠も雄しべとともに萼より開出し、花の盛りには白く見える。実は楕円形で、熟すと中央部分で横に割れる。
オオバコ(大葉子)の名は、草丈に比して葉が大きいことによる。漢名の車前(しゃぜん)は車の轍にも生え出すことによる。古くから親しまれて来た植物で、子供が丈夫な茎を絡ませて引っ張り合い、強さを競うオオバコ相撲という遊びをしたことからスモウトリグサ(相撲取り草)の異名でも知られる。また、死んだカエルをオオバコの葉で被い、穂を打ちつけると生き返るという俗信によりカエルバ(蛙葉)の地方名もある。
北海道から沖縄まで日本全土に分布し、風媒花の強みで、大和(奈良県)でも標高差にかかわらずいたるところで見かける。国外では朝鮮半島、中国、台湾、サハリン、シベリア東部、マレーシアなど東アジアを中心に広く見られるという。
なお、若葉を食用にするほか、昔から薬用としても利用され、全草を乾燥させたものを車前草(しゃぜんそう)と言い、煎じて咳止め、利尿、健胃などに。多量の粘液を含む種子は車前子(しゃぜんし)と呼ばれ、利尿、咳止め、吐き気止めなどに用いられ、生の葉は腫れ物に貼って来た。 写真はオオバコ(左から群生、花をつけた株、白い雄しべが目立つ花序のアップ、実をつけた穂・宇陀市ほか)。 カメムシの冒険畳の上の秋
<2483> 大和の花(638) ツボミオオバコ (蕾大葉子) オオバコ科 オオバコ属
北アメリカ原産の1、2年草で、関東地方以西に帰化している外来種のオオバコで、花がほとんど開かず、いつまでも蕾のように見えるのでこの名がある。全体的に白い毛に被われ、オオバコよりも柔らかな印象を受ける。葉は長さが3センチから10センチの倒披針形で、先が短く尖り、縁には鋸歯が見られ、短い柄を有して根生し、地面に横たわらず、立つようにつく。
花期は5月から8月ごろで、根生する葉の間から高さが10センチから20センチの花茎を立て、その上部に花序を出し、小さな花を穂状に多数密につける。オオバコと同じく雌性先熟であるが、雄性期になっても、雄しべは外に現れ出ず、花冠も十分に開くことのない姿が特徴として見られる。大和(奈良県)では、日当たりのよい草地や棚田の畦などで見かける。 写真はツボミオオバコと花序のアップ。右端の写真は、雄しべが姿を現した花でオオバコとの交雑種かも知れない。 平和主義掲げて稔りゐる稲田
<2484> 大和の花 (639) ヘラオオバコ (箆大葉子) オオバコ科 オオバコ属
ヨーロッパ原産の1年草で、江戸時代末期に渡来した帰化植物として知られ、日当たりのよい道端や荒れ地に生え出し、全国各地に広がりを見せ、殊に北海道に多く見られるという。葉は長さが10センチから20センチの細長いへら形で、この名がある。葉の裏面脈上や葉柄には淡褐色の長毛が散生し、多数の葉が根生する。
花期は6月から8月ごろで、葉の間から多数の花茎が直立し、高さは20センチから70センチほどになり、先端に他種より太い花序を出し、小さな花を穂状に多数密につける。本種も雌性先熟で花序の上部には雌性期の雌花、下部には雄性期の雄花が見られ、花冠から雄しべの花糸が長く伸び出し、先端に葯がつく。 写真はヘラオオバコの花(斑鳩町ほか)。 秋天下外人数多東大寺