大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年10月20日 | 植物

<2482> 大和の花 (637) オオバコ (大葉子)                                   オオバコ科 オオバコ属

           

 日当たりのよい山野の湿地から乾燥地、草地から荒地などに生え、道端などでも普通に見られる多年草で、人や車などが行き交うような踏み固められたところにも平気で生え出す旺盛さがあり、地べたに貼りつくように群生することが多い。葉は長さが4センチから15センチの卵形乃至は広卵形で、ときに楕円形のものも見られ、変化に富む。また、葉には平行脈が目立ち、波打つものが特徴で、長い柄を有し放射状に根生する。

 花期は4月から10月ごろと長く、根生葉の間から高さが10センチから20センチの花茎を数本立て、その上部の穂に小さな花を多数密につける。花冠は白い漏斗状で、4裂し、穂の下から上へと順に咲く。雌性先熟の特徴を有し、まず、雌しべの柱頭が現れ、受精した後、白い4個の雄しべが伸び出す。花冠も雄しべとともに萼より開出し、花の盛りには白く見える。実は楕円形で、熟すと中央部分で横に割れる。

 オオバコ(大葉子)の名は、草丈に比して葉が大きいことによる。漢名の車前(しゃぜん)は車の轍にも生え出すことによる。古くから親しまれて来た植物で、子供が丈夫な茎を絡ませて引っ張り合い、強さを競うオオバコ相撲という遊びをしたことからスモウトリグサ(相撲取り草)の異名でも知られる。また、死んだカエルをオオバコの葉で被い、穂を打ちつけると生き返るという俗信によりカエルバ(蛙葉)の地方名もある。

 北海道から沖縄まで日本全土に分布し、風媒花の強みで、大和(奈良県)でも標高差にかかわらずいたるところで見かける。国外では朝鮮半島、中国、台湾、サハリン、シベリア東部、マレーシアなど東アジアを中心に広く見られるという。

 なお、若葉を食用にするほか、昔から薬用としても利用され、全草を乾燥させたものを車前草(しゃぜんそう)と言い、煎じて咳止め、利尿、健胃などに。多量の粘液を含む種子は車前子(しゃぜんし)と呼ばれ、利尿、咳止め、吐き気止めなどに用いられ、生の葉は腫れ物に貼って来た。 写真はオオバコ(左から群生、花をつけた株、白い雄しべが目立つ花序のアップ、実をつけた穂・宇陀市ほか)。 カメムシの冒険畳の上の秋

<2483> 大和の花(638) ツボミオオバコ (蕾大葉子)                                オオバコ科 オオバコ属

                                               

 北アメリカ原産の1、2年草で、関東地方以西に帰化している外来種のオオバコで、花がほとんど開かず、いつまでも蕾のように見えるのでこの名がある。全体的に白い毛に被われ、オオバコよりも柔らかな印象を受ける。葉は長さが3センチから10センチの倒披針形で、先が短く尖り、縁には鋸歯が見られ、短い柄を有して根生し、地面に横たわらず、立つようにつく。

 花期は5月から8月ごろで、根生する葉の間から高さが10センチから20センチの花茎を立て、その上部に花序を出し、小さな花を穂状に多数密につける。オオバコと同じく雌性先熟であるが、雄性期になっても、雄しべは外に現れ出ず、花冠も十分に開くことのない姿が特徴として見られる。大和(奈良県)では、日当たりのよい草地や棚田の畦などで見かける。 写真はツボミオオバコと花序のアップ。右端の写真は、雄しべが姿を現した花でオオバコとの交雑種かも知れない。  平和主義掲げて稔りゐる稲田

<2484> 大和の花 (639) ヘラオオバコ (箆大葉子)                                    オオバコ科 オオバコ属

                        

 ヨーロッパ原産の1年草で、江戸時代末期に渡来した帰化植物として知られ、日当たりのよい道端や荒れ地に生え出し、全国各地に広がりを見せ、殊に北海道に多く見られるという。葉は長さが10センチから20センチの細長いへら形で、この名がある。葉の裏面脈上や葉柄には淡褐色の長毛が散生し、多数の葉が根生する。

 花期は6月から8月ごろで、葉の間から多数の花茎が直立し、高さは20センチから70センチほどになり、先端に他種より太い花序を出し、小さな花を穂状に多数密につける。本種も雌性先熟で花序の上部には雌性期の雌花、下部には雄性期の雄花が見られ、花冠から雄しべの花糸が長く伸び出し、先端に葯がつく。 写真はヘラオオバコの花(斑鳩町ほか)。  秋天下外人数多東大寺

 


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2018年10月19日 | 写詩・写歌・写俳

<2481> 余聞、余話 「コスモス」

     コスモスの八つの花びら陽に風に輝き増して歌へるごとし

 野菜でも果物でも作物に旬というのが希薄になって久しい。この現象は、時期を問わず、いつでも食べられるように品種改良など工夫がなされて来た結果にほかならない。作物の中には年中見られるものもあり、消費者に迎えられているが、これは、所謂、私たちの欲求に応えて成し遂げられた変化の一端であると言える。もちろん、収穫時期だけの話ではなく、作物には品質の向上も要求され、それが浸透して進化に繋がり、今に至り、旬という言葉にも影響しているということになる。

 こうした傾向は花の世界の園芸品種にも言えることで、園芸の花の世界では私たちの欲求に応えるべく改良が重ねられ、今までにないような花も登場して来ということになる。秋の花で言えば、自然では秋の深まるころ咲き出すリンドウが園芸品種では、時期を問わず見られるということがある。今、コスモスの花盛りの季節で、一面に咲く花がそこここに見られ、その光景は昔からあり、珍しいものではないが、最近、草丈の低い大人の膝ほどの高さのものが見られるようになった。

    

 細く裂けた葉と赤や白やピンクなど色彩豊かな八つの花びらに変わりなく、近づいて見れば、コスモスとわかるが、遠目には定かでなく、何だろうと思われる。これは草丈を抑えた特徴による。コスモスらしくないと言えば、らしくないが、低い子供の目線にはありがたい高さであり、車椅子の人にも迎えられる。また、コスモスは強風に弱いところがあり、台風一過、花が台無しになることがあるので、この点においても公園などの観賞用には丈の低いコスモスは適している。

 まだ、どこにでも見られるというわけではない珍しさがあると思われるが、奈良県立の馬見丘陵公園で見られる。今が花盛りで、公園には乳母車の親子連れや車椅子の利用者もよく訪れるので、丈の低いコスモスの花園は好感が持たれるところである。 写真は一面に花を咲かせた丈の低いコスモスの花園(馬見丘陵公園)。


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2018年10月14日 | 植物

<2476> 大和の花 (632) レモンエゴマ (檸檬荏胡麻)                                       シソ科 シソ属

               

 山地の林縁などに生え、道端などにも見られる1年草で、軟毛が密生する茎は直立して分枝し、高さが20センチから70センチほどになる。葉は長さが7センチから12センチの卵形乃至は広卵形で、先は尖り、縁には鋸歯が見られる。長い柄を有し対生する。

 花期は8月から10月ごろで、枝先に10センチから18センチの花序を立て、唇形の花を多段にして密につける。花冠は長さ数ミリ。白色で、淡紅色を帯びることが多く、苞葉は緑白色で、縁に白毛が生え、萼には白い軟毛が密生し、黄色い腺点も多い。エゴマ(荏胡麻)に似て全体的にレモンの香りがあるのでこの名がある。

  本州、四国、九州に分布し、以前は日本の固有種と見られていたが、最近、中国でも見出されるに至った。大和では南端部から北端部まで広く見られる。奈良公園の周辺には多く、これはシカの食害を受けないことによると言われる。 写真はレモンエゴマ(左は奈良市、ほかは十津川村の個体)。   縛られて縛られながら行ける旅 はたして生はしがらみにある

<2477> 大和の花 (633) ナギナタコウジュ (薙刀香薷)                                       シソ科 ナギナタコウジュ属

              

 日当たりのよい山地の林縁や草地、または道端などに生える1年草で、茎は直立して分枝し、高さは30センチから60センチほどになる。葉は長さが3センチから9センチの卵形乃至は狭卵形で、先は尖り、縁には鋸歯が見られる。

 花期は9月から10月ごろで、枝先から花序(花穂)を伸ばし、淡紫色から淡紅紫色の小さな花を外側の一面に片寄って多数連ねる。花冠は長さ数ミリの唇形で、縁は細かく裂け、毛のように見える。花の付け根には緑色の苞葉がある。この花序の穂をナギナタ(薙刀)に見立てたことと、強い芳香があり、中国のコウジュ(香薷)に似るのでこの名があるという。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、アジアの温帯に広く見られるという。大和(奈良県)では低山帯の道端などで見かける。なお、本種は香薷(こうじゅ)の生薬名をもつ薬用植物として知られ、全草を乾燥し、煎じて飲めば、解熱、利尿等に効くと言われる。 写真はナギナタコウジュ(葛城山の山頂付近の草地)。  稔るほど柿の山里柿の色

<2478> 大和の花 (634) イヌコウジュ (犬香薷)                                                シソ科 イヌコウジュ属

                      

 山野のやや湿り気のある道端や溝の傍などに生える1年草で、全体に細毛が多く、高さが20センチから60センチほどになる。葉は長さが2センチから4センチの卵状披針形乃至は長楕円形で、先は尖り、縁には浅い鋸歯が見られ、対生する。よく似るヒメジソ(姫紫蘇)とは葉の鋸歯に違いが見られ、本種の浅く不明瞭に対し、ヒメジソでははっきりしている。

 花期は9月から10月ごろで、枝先に花序(花穂)を出し、淡紅紫色の小さな唇形の花を多数つける。花冠は長さが3、4ミリで、萼は2、3ミリ。花穂の上へ上へと咲き継ぐ。日本全土に分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾、ベトナム等に見られるという。大和(奈良県)でもよく見かける。 写真はイヌコウジュ(奈良公園)。    一種一種一首一首の花と歌はたして生の意味に関はる

<2479> 大和の花 (635) ハッカ (薄荷)                                                   シソ科 ハッカ属

                                                                    

 やや湿ったところに生える多年草で、四角形の茎はが直立し、高さが20センチから60センチほどになる。葉は長さが2センチから8センチの長楕円形で、先はやや尖り、縁には鋸歯が見られ、短い柄を有して対生する。全草に芳香のあるのが特徴で、近縁種にヨーロッパ原産のペパーミントやスペアミントがある。

 花期は8月から10月ごろで、上部の葉腋に長さ数ミリの小さな淡紫色の唇形花を輪生状につける。北海道、本州、四国、九州に分布し、東アジアにも広く見られるという。ハッカ(薄荷)の名は漢名の薄荷(はくか)の促音便によるもので、在来のものについては二ホンハッカ(日本薄荷)と呼ばれ、区別されることもある。

 葉にはメントールを主成分とする精油が含まれ、全草に芳香があるため、香料や薬用に栽培されている。ヨーロッパ原産の仲間も日本のハッカも古くから知られ、日本のハッカについては、平安時代の『倭名類聚鉦』や『本草和名』などに記載があり、江戸時代末には薬草として栽培され、瞼の上に生の葉を乗せ、目を癒したことから、メグサ(目草)の名でも知られる。

 ほかにも利用価値は広く、薬用としては生の葉を虫刺されに用い、乾燥した葉は薄荷葉(はっかよう)と言われ、発汗、解熱、鎮痛、健胃、解毒等に効能があるとされ、石鹸や歯磨き粉などの香料、ほかにも飲料や菓子等にも用いられる。野生のものは雑草然として目立たないが、有用な植物の1つに数えられている。 写真はハッカ(吉野川の河川敷)。   柿一顆その充分を頂きぬ

<2480> 大和の花 (636) マルバハッカ  (丸葉薄荷)                                              シソ科 ハッカ属

                      

 ヨーロッパ原産の多年草で、香料用として導入され、栽培されて来たが、これが逸出して野生化し、道端の草地などに生え出しているのを見かけるようになった。所謂、帰化植物で、高さは30センチから80センチほどになり、走出枝を伸ばして繁殖し、道端の草叢などに雑草然として生え、ときに群生するものも見られる。

  全体にハッカ臭があり、縮れた白毛に被われる。葉は長さが2センチから5センチの広楕円形で、表面は脈が凹み、皺が目立つ。裏面は白毛が密生する。先は尖らず、縁には鋸歯が見られ、基部はやや茎を抱き、対生する。

 花期は8月から10月ごろで、茎の先に花序(花穂)を出し、白色乃至は淡紅色の4裂した小さな唇形花を多数密につける。大和(奈良県)では道端や川岸などに生えだしているのが見られる。 写真はマルバハッカ(奈良市郊外)。   外界と内界を持てこの身あり思ふ個体の存在として

 

 

 

 


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2018年10月13日 | 写詩・写歌・写俳

<2475> 余聞、余話 「奈良大和の秋」

      野分過ぎ伽藍の空に秋の雲

 奈良の大和は四季の変化に富み、それぞれの季節に趣がある。それは周囲の青垣山を含め、山野に恵まれた土地柄にあるからだろう。ここでいう草木は、自然を代表するものにほかならず、それは私たちの情趣に影響し、私たちの営みに反映している。

 その四季の移ろいゆくすがたは、所謂、太陽と地球の関係性による一年の周期における草木の起承転結とも言える活動状況によるところが大きい。春の芽立ちに始まり、夏の旺盛な葉の展開乃至は繁茂を経て、秋の結実と紅(黄)葉に至り、冬の枯れ木の姿に終わる。

  そして、その四季は、また、春の芽立ちに戻り、始まるという具合に廻る。春は芽立ちであるが、概して、花に現れ、夏は瑞々しい青葉に象徴される。秋はその花と葉を引き継ぐ果実と紅(黄)葉に見え、殊に平野を黄金色に染める水田の稲穂の風景がある。冬は刈り田と枯れ木の姿となり、ときに雪がこの情景に加わるという具合に転変する。

          

 この四季を彩る自然の風景に奈良の大和が加え、見られるのは歴史的建造物や古墳などとの取り合わせである。この意味で言えば、正岡子規の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」は代表的な句であろう。柿イコール秋であるが、この句には法隆寺が世界に誇る五重塔と大和の地が有する黄金色に実る田園風景が句の背景にイメージされて大和の秋を想像させるところがある。松尾芭蕉の「奈良七重七堂伽藍八重桜」も春の古都奈良の面影をイメージさせる。 では、そのイメージを思いながら、以下になお二句。 高々と 塔のうへなる 秋の雲  天地の間 天の高きへ 秋の塔 

 


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2018年10月09日 | 植物

<2471> 大和の花 (628) イヌトウバナ (犬塔花)                                          シソ科 トウバナ属

                           

 山地の少し湿気のある林内や道端に生える多年草で、茎の下部は地を這い、斜上乃至直立して、高さ20センチから50センチほどになる。茎は方形で、下向きの軟毛が密生する。葉は長さが2センチから3センチの卵形または狭卵形で、先はあまり尖らず、基部はくさび形または広いくさび形。縁には粗い鋸歯が見られ、両面にまばらな毛があり、短い柄を有し、対生する。

 花期は8月から10月ごろで、茎頂に花序軸を伸ばし、花を何段か輪生状につける。この花のつき方によってトウバナ(塔花)の名がある。その名にイヌ(犬)が冠せられているのは本物でない意による。花は花冠の長さが6、7ミリの唇形花で、白色をベースに淡紅色を帯びる。萼は筒状2唇形で、長さ数ミリ。開出する長い軟毛が生える。北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では済州島に見られるという。 写真はイヌトウバナ(金剛山)。    人生は神と出会ひの旅ならむ齢(よはひ)このごろ斯くは思はる

<2472> 大和の花 (629) ヤマトウバナ (山塔花)                                     シソ科 トウバナ属

                                                    

 山地の木陰などに生える多年草で、登山道でよく見かける足元の花で、地味ながら親しみがある。草丈は30センチから70センチほど。葉は長さが2センチから5センチの卵形乃至は長卵形で、先はやや尖り、縁には粗い鋸歯が見られ、短い柄を有して対生する。

 花期は6月から7月ごろで、茎頂にまとまってつく花序に長さ1センチ弱の白い花冠の唇形花をつける。上唇は2浅裂し下唇は3裂する。萼は長さが5、6ミリで、脈上に短毛が生え、萼歯の内側にも毛がある。本州の中部地方以西、四国、九州に分布し、国外では朝鮮と中国に見られるという。大和(奈良県)でもよく見かける。 写真はヤマトウバナ(大峯奥駈道)。

   常識がぼくの個性に限りなく纏ひ日常坐臥の顳顬(こめかみ)

<2473> 大和の花 (630) クルマバナ (車花)                                         シソ科 トウバナ属

                                                       

 山地や高原の草地に生える多年草で、方形の茎はまばらな毛を有し、直立して分枝し、高さが20センチから80センチほどになる。葉は長さが2センチから4センチの卵形または長卵形で、先は鈍く尖り、基部は円形に近く、縁には鋸歯が見られ、短い柄を有して互生する。

 花期は8月から9月ごろで、茎や枝の上部葉腋数段に淡紅色の唇形花を輪生状につけ、これが車輪を思わせるところからこの名が生まれたという。花冠は長さが8ミリから1センチほどの2唇形で、上唇は小さく、下唇は大きく、3裂する。萼は紅紫色を帯び、毛が生える。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国北部、沿海州などに見られるという。大和(奈良県)では全域的に見られる。トウバナ属の中では艶やかな花を咲かせるが、実用は聞かない。 写真はクルマバナ(平群町ほか)。

 塔の空高き彼方にあこがれて懐旧の種子播きし青春

<2474> 大和の花 (631) キツネノマゴ (狐の孫)       キツネノマゴ科  キツネノマゴ属

             

 畦道などで普通に見られる1年草で、茎には下向きの短い毛が生え、高さは10センチから40センチほどになる。葉は長さが2センチから5センチの卵形で、両面に毛が生え、先がやや尖り、短い柄を有して対生する。

花期は8月から10月ごろで、茎頂や枝先に穂状の花序を出し、淡紅紫色の唇形花を密につけ、順次開花する。上唇は小さく、2裂し、下唇は大きく、反って3裂する。萼は5深裂し、萼片や苞葉の縁には白毛がある。雄しべは2個、葯は2室で、上下につき、下の葯の方が大きく、基部に突起状の距がある。実は蒴果。

 本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国、インドシナ、マレーシア、インドなどに広く見られるという。大和(奈良県)では道端や草地で見られる雑草であるが、爵床(しゃくじょう)の漢名で知られる薬用植物で、全草を日干しにしたものを煎じて解熱、咳止め、喉の痛み止めなどに用いる。また、全草を薬湯にして腰痛に用いると言われる。   思ふ身の人生思ふ夜長かな