<1547> ケイオウザクラ (啓翁桜)
春は花 花に囲まれ 山の里
花が薄紅色をした早咲きのサクラにケイオウザクラというサクラがある。昭和五年(一九三〇年)に久留米市の良永敬太郎という人がシナミザクラを台木にしてコヒガンザクラを接ぎ木し、その枝変わりとして作った変種で、その一字をもって弥永太郎という人が敬翁桜と名づけた。これがこのサクラで、各地に広まる間に啓翁桜と呼ばれるようになったと言われる。
ほかのサクラと違って、枝の伸びがよく、切っても弱ることなく、また、伸びて来るので切り花用に栽培されることが多い。出荷する枝切りは蕾の固い正月ごろより行なわれ、切った枝の温度管理によって出荷に合せ花が咲くようにするという。このやり方は多くの切り花で行なわれるが、これは室咲きとは異なる。ケイオウザクラはまた枝分かれして花がスプレー状にいっぱいつくので華やかに見える特徴がある。
花卉や果樹農家が集落をなす山里の五條市西吉野町梨子堂地区では、ソメイヨシノよりひと足早く、このケイオウザクラがいま花盛りである。花は春の日が差して来ると、ぱっと辺りを明るくさせ、春の気分にさせてくれる。 写真は畑いっぱいに咲くケイオウザクラ。